突然のサブキャラ回収
糖分過多期間開始!
まずは皆大好きサブキャラ回収から!
※攻略にはなりません。
「攻略させてもらう」なんて、何事かと思ったけど、別に白樹君自身が“前世持ちの”リアルゲームプレイヤーという訳では無い様で。
だったら何なんだ、と思ったら、どうにも付き纏われ始めましたよ?
登下校は、まあ一緒のクラスなんだし、大体の時間が推測出来るのも分かる。
初日には登校時間ばれちゃったしね。
でもさ、予備校なんかに模試の資料取りに行くのとか、あまつさえ今月の新刊(当然だがラノベ・コミックス系)の発売日まで知ってるって、あきらかにおかしいだろ!?
……ことごとく“一緒に下校”回避の言い訳が通用しないとか、どういう事なの。
仕方なく一緒に帰ったら帰ったで強制的に手繋ぎはデフォ、意味深な言葉投げかけられて顔覗き込まれるとかよくある事、……なんて、そんな状況決して望んでなんて無い!無いのにいいい!
くっそ、誰かが情報流しているとしか思えな……、
……って、ねえ、何でそこであさっての方向くの、友美と木森君。
そんなある日の放課後、トイレから帰ると友美がいなくなっていた。
きょろきょろと教室内を探すと、木森君が近寄って来てこう言った。
「篠原さんなら空条先輩と帰ったよ」
「ぬなっ!?」
ぬぁんですとー!?
ぶぶぶぶぶぶぶぶ
カバンから聞こえたのは、自分の携帯のバイブ音。……なんか、ヤな予感しかしない。
恐る恐る確認すると、新着のメッセージはやはり友美からの物だった。
「件名:櫻ちゃんへ
明日葉先輩が一緒に帰ろうって言ってくれたので((o(*≧▽≦*)o)) キャー
このまま一緒に帰ります♪♪♪
櫻ちゃんとは、今日は何も約束無かったから良いよねσ(^_^;)アセアセ
また後で埋め合わせするから許して下さい(>人<)
ごめんね?」
_, ._
( ゜ Д゜)
_, ._
(;゜ Д゜)
思わず、固まった。
予想はついたけどさ!本当に空条先輩優先するとか思わないじゃんか!
固まった姿勢のまま、心の中で友美に散々突っ込みを入れていたら、背後からめちゃくちゃ爽やかな声が聞こえた。
「央川!今帰りだよな、一緒に帰ろうゼ!」
くっわああああああああ!!!タイミング合いすぎだろ!?狙ってんの!?狙ってんの!?
くそう、このまま流される訳には!
「私、今日用事あるんで!」(キリッ)
「何処行くんだ?時間あるし俺もついて行くよ!もし夜暗くなったらそのまま送って行くしさ!」
ぐぬぬ~!めげない奴め!
「でも悪いよ」
悪いと思ってる顔を作って誤魔化そうとするが、やっぱダメか。
作り物の表情じゃ白樹君には敵わない。
「ハイハイ、良いから行こうゼ!で、まずは何処に行くんだ?」
流すなーー!
くっそどうしよう、このままじゃ誤魔化しきれない。そうだ!
「あちこち回るからさ」
頭の中でルートを決める。
そっちがその気なら、こっちも本気で街中回るよ?
「良いって良いって、さ、行くよ」
どうなったって知るもんか。
くっそ、こうなったらサブキャラ達に会って勝手に癒されてやるー!
「はふ」
溜息が出る。
あの問答で教室中の注目を集めてしまった。……コンナハズジャナカッタノニ。
精神の負担ハンパない。
白樹君は何でこんな事するんだろう…。
まだ怒ってて、仕返しの嫌がらせのつもりなのかな…?
「どうした?疲れてるならどっかで休憩してから回るか?」
っ!!
いきなり顔覗き込むの止めて下さいよ!心臓に悪いじゃんか!
「…だいじょぶ。…とりあえずデパートから行くから」
誰のせいだ、誰の。
うう、不意打ちで顔が赤くなった。ちくしょー。
でも今の、何だか本気で心配してるっぽかった。
まあ白樹君の事だから、どこまで本気か掴むのが難しいんだけど。
とりあえずその事は一旦脇に置いといて、マフラーに口元まで埋まりながら、もごもごと行き先を告げる。…うん、まだちょっと恥ずかしい。
駅前にある巨大な百貨店。
その2階の銘店フロア、そこが『その人』の勤務先。
フロアに入ってさっそく辺りを見回す。いた!
「いらっしゃいませ」
目が合うとその人は、目を細め慇懃な態度で挨拶をしてきた。
「こんにちは瀬場さん」
つられてこちらも背筋が伸びる。
この人の前に立つといつも、まるで自分がお嬢様になったような気分になるんだよね。
…だらしない態度は絶対見せられない。
「ええ、こんにちは。本日はどの様な御用件でいらっしゃいますか?」
「はい、これから知人を訪ねるので、お土産に何か甘い物をと思って」
フロアでも飛び抜けた高長身に、よく手入れされた艶やかな黒い髪。
常に礼儀正しく、客のどんな注文にも必ず応えてみせる接客態度から、付いたあだ名は「執事店員」
ま、正確には唯の店員じゃなくて、このフロアの主任さんなんだけど。
一度でいいから「あくまで主任です」とか言ってくれないかなあ。
苗字が“瀬場”とかスタッフ遊び過ぎ、って前世の頃言われてた事あったっけ…。
「何人かで召し上がって頂く予定なので、ボンボンの詰め合わせが良いかな、と」
「チョコレートですか。ご希望のテナントは御座いますか?宜しければご案内致しますが」
ブランドか。うーん、どうすっかな?
「じゃあ…」
瀬場さんに案内を頼もうとした時、後ろから手を掴まれた。
「今回はいいです。俺と一緒に見るんで」
!?
ちょ!?
うわ、何その胡散臭い爽やかな笑顔は!?
「誰に贈るのか知らないけどせっかく一緒に来てるんだし、俺も選ぶの手伝うよ。…改めて見ると意外と良い店入ってるんだな、ここ」
そのまま引っ張られる。ま、待ってよ!
「畏まりました。では、どうぞごゆっくりご覧下さいませ」
奇麗なお辞儀で見送る瀬場さんを背後に、私は白樹君と手を繋いだままフロアを一周するハメになった。
あああ~~~、せっかくの癒しの時間が~~~!!
「央川って、ああいう人が好みなの?」
フロアを出てきてからずっと、白樹君が不機嫌だ。
でも、無理言ってついて来たのは君の方でしょうが。
…っていうか、文句言いたいのはこっちの方なんだけど。…瀬場さんとの憩いの時間が…。
「好み、は好みかな。素敵だよね、瀬場さんって」
意趣返しも兼ねて、わざと明るいはしゃいだ声で素敵、とか言ってみる。
本来私の最萌えはもっとダルっとしてる人だが、ああいう敬語系パーフェクト超人も嫌いじゃ無い。むしろ好きだ。
「ふうん」
あハハ、完全にへそ曲げちゃった。でも聞いて来たのは自分でしょ?自己責任自己責任。
…しめしめ、このまま好感度ガタ落ちろ。
……とか思っていられたのもそこまでだった。
「あら、貴方達…」
いつのまにか駅前の電波っ娘の前を通り過ぎようとしていたらしい。
私が足を止めたので、白樹君も止まる。
…いつ見てもゴスでロリだなあ。
余裕だった私の気分は、そこで吹き飛ぶ事になる。
「素敵ね。輝く星々に導かれ、強い絆で結ばれた、運命の恋人達…」
「!?」
うっとりとした表情で告げる彼女の言葉にぎょっとした。そ、そのセリフは!
慌てて彼女に詰め寄る。
「な、何かの間違いでしょう?」
「何も間違ってはいないわ。二人の輝く未来が確かに見える。貴方達は確かに強い絆で結ばれた永遠の恋人達…」
嘘だ!!
「いやいやいやいや!無いから!」
NOOOOOOOO!!!!!
それ、好感度MAXの時の定型文じゃないスか!!
やめてええええええええ!!!もう修正不可能って事!?
「ははっ大袈裟だなあ、運命とか永遠とかさ。俺達はそんなんじゃなくて、ただずっとそばに居られれば良いって思っているだけだよ」
ひい!?なにその甘いセリフ!?後さらっと「達」って言ったーーー!?
「そう?でも、その気持ちを忘れないで。忘れなければ、“ずっと”は“永遠”になるのだから」
「肝に銘じておくよ」
さっきまでむすーっとしてた白樹君が、今は物凄く上機嫌に電波少女と会話してる。
君、占いとかおまじないとか苦手、てか嫌いじゃ無かったの?何でそんなに嬉しそうなの?
ちなみにこっちは、精神に大ダメージを負わされた気分だよ。
…ちょっと膝抱えていいですか。
日が落ちて薄暗くなって来た。
賑やかな商店街の裏路地を抜けて行く。
いわゆる居酒屋とかバーとかが軒を連ねている、ちょっと未成年お断りな通りだ。
さすがの白樹君も少しきょろきょろしている。
「央川?何所まで行くんだ?」
「ちょっと入り組んだ所にあるお店だからね。でも、味は保証するよ。ちょっと休憩してから帰ろうと思って。今日は付き合わせちゃったから奢るよ」
「……女の子から奢られる訳にいかないだろ?ちゃんと自分で払うよ」
「そう?でも、さんざん歩かせちゃったし」
「勝手についてくって言ったのは俺だろ。央川だって最初ちょっと迷惑そうな顔してたし。あんま気にすんなって」
あれー?白樹君が妙にイイヒトだー。
つか、知ってて強引について来たこと認めるわけね。
そういう風に言われちゃうと弱いなあ。
「……そう言われるとこっちが悪いみたいじゃん。はい、ここ」
ドアに手をかけた。
からん、とベルの音がする。
そう、ここが、
「“天球儀”だよ。知ってた?」
「いや、初めて。央川はよく利用してるのか?」
「たまにね。最近は来て無かったけど」
中学の頃はこっそり来てたなあ。最近は“あの人達”が利用してるだろうと思ったから来て無かったけど。
こじんまりした、いわゆる喫茶店らしいインテリア。
個人のお店にしては清潔感のある、割と入りやすい空気のお店だと思う。
問題はその立地、ってだけで。
「こんばんは、マスターさん。お久しぶりです」
「いらっしゃいませ」
渋くて重みのある声が私達を出迎えた。
小さい丸メガネをかけて口ひげをはやした中年のマスターは、どことなくハトっぽい顔をしていると思う。
席を見渡すと今は他に客は誰も居ないみたいだった。
……運が良ければ会えると思ったけど、どうやら今日はツイて無い日みたいだ。
…そうだよね、ツイてる日だったら友美に先に帰られちゃう事も無く、駅前の電波少女に好感度MAXとかいらん情報貰う事も無かっただろうに。はあ。
「すみません、ブレンドお願いします。白樹君は?」
「お勧めは?」
「甘いのが好きならモカもあるけど、白樹君は香りを楽しむタイプでしょ?苦いのがダメじゃ無ければ、やっぱりブレンドがお勧めかなあ」
こだわり抜いた豆と最適な温度で淹れたコーヒーを、熱いうちに頂くのが良いのだ。
「じゃあそれで」
「……かしこまりました」
さっそく準備に入るマスターにお土産を渡す。
ほんとはあの人に直接渡せれば良かったんだけど…。
「あの、これ差し入れです。マスターと他のお客さんで召し上がって下さい」
「……」
マスター黙っちゃった。
慌てて補足する。
「本当は、ここによく来てる人に渡したかったんですけど、他に心当たりなくて。ここでマスターさんに預かってもらったら、その人にも渡るかなって。…天上さん、て言う人なんですけど…」
「あれ?君?」
「あら、貴方達この間の…」
からん、と音がして、後ろから2人入って来た。
その人達こそ、今回私が天球儀に来た目的。
隠しキャラ「天上岬」とその相棒「宮村香子」さんだった。
続きます。




