表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/45

好感度下げプレイ

Attention!!

引き続き、のっけから主人公がキレております。

ご注意ください。


お話的にはちょっとインターバル。


サービスもあるよ!



お帰り下さい(帰れよこの)上級生様(クソ上級生)


 にっこり笑顔でお引き取りを願う。

 すると、空条先輩の眉間のしわがさらにギュッと寄った。

 あれ、これってあれか、青筋ってやつ?


 教室の入り口での攻防は、もう3日目に入ろうとしていた。

 だって空条(アイツ)、友美迎えに来るんだもん。


 フラグを無事成立させ、イベントを成功させたからって、それだけでLLEDに辿り着けるかと言えばそんなこともなくて。

 好感度が規定値に達していなければ、ED直結の告白イベントが起こらない事だって有り得るのだ。


 今私が狙っているのはまさにそれ。


 …友美の命を危険に晒すような奴は、人類にとっても敵です!

 フラグ成立させない、って言ったろ!?


 それなのに友美ったら…。


「も、もういいよ櫻ちゃん!わたし、先輩と行くから」

「え!?だって友美、これから二人でゲーセン寄って帰ろう、って。楽しみにしてたじゃん」

 友美を釣るためなら何だって利用する。

 コージさん紹介するって言ったのに、友美ったら先輩の方を取るの!?

「私が先に約束したんだよ?」

 悲しそうな顔を作って引き留める。

 ……というか、実際友美が私より先輩取ったとしたら、ちょっと何するか分かんないよ?


「あ、で、でも…」

 くっ、友美もつらそうだ。だが、ここは心を鬼にして…!

「央川、そのくらいにしといてやれよ」

 何茶々入れて来てんすか、白樹君。

 関係者以外立ち入り禁止、って空気が分からない君じゃないでしょう。

「……白樹君には関係ないでしょ。それより上級生の方は、みだりに下級生の教室に近寄らないで下さい。これ以上付き纏う様なら先生に申告しますよ」

「…!」

「好きで付き纏っている訳では無い。大体、携帯で呼び出すと必ずお前が妨害するから、わざわざここまで来てやっているんじゃないか」


 何だか詰まったような白樹君の事は置いといて、とりあえずは目の前のこの男をどうにか撃退しなきゃ。

「当たり前じゃないですか。友美をわざと囮に使う様な人物に、安心して彼女を任せられるわけないでしょう。近寄らないで下さい」

「だからっ、その話はもう良いんだってば!ちゃんと説明してもらったし、ちゃんと守ってもらえたもの!だからもう良いの!櫻ちゃんも許してあげて、ね?」

 あげて…、ってのも何か変だが、私は許す気なんて無いよ?


「そうやって友美がホイホイ許すからつけ上がるんだよ?私は許せないね。何でも許せる友美だから、これくらいの事は許せるだろう、なんて、勝手に線引きされちゃ堪らない。一歩間違えば彼女、死んでいたかもしれないんですよ?」

 教室がざわめく。

 何か事件に巻き込まれたことは知っていても、何があったか詳しくは知らないから、この発言は確かに驚いただろう。

 まあ、別に隠す事じゃないし。空条は知らんが。

「死んでいたかもしれんのはお前の方だろう。もしくは、お前の行動のせいで、だな」

 ぐっ

 今度は私が言葉に詰まる番だった。

 確かにあの時は友美の所に一刻も早く辿り着いて、彼女の無事を確かめることが最優先だったからな…。


 お互い無言でにらみ合う。

「邪魔だ。どけ」

「お断りします」

 まるで荒野に立つ決闘者の気分だ。

「ふん、先輩相手に礼儀をどこかに忘れて来た様だ。あまりに度が過ぎる様ならこちらにも考えがあるぞ。…そう言えばお前は、この前も何やら無礼な発言をしてくれたのだったな」


 ふと空気が変わる。

 何の事だ?ん?友美が誘拐されたって分かった時のアレ?

 まくし立てた事は覚えてるけど、正直何を言ったか覚えてない。

「無礼?何て言ってましたっけ?」

 私の発言に、白樹君がぼそりと言った。

「ハゲてメタボになって××××」

「そうそれ!」

 思わず反射的に返してしまう。……あれ?

 そのまま何も言わずに白樹君を見つめる。

 すると白樹君が溜息を吐いた。

「…その、何でいるのって目で見るの止めてくれない?」

「え、でも、いる理由、無いよね?」

 だって、関係無いんじゃなかったの?


「……もういい」

 そのまま白樹君は去って行った。

 気分悪くしたかな。

 でも、こっちも好感度下げてる最中だから。

 悪いけど、3月の終業式まではこれで行くからね。


「櫻ちゃん!もう、最近おかしいよ?」

「おかしくないでしょ。私は友美の幸福と安全の為に」

 その言葉に、友美がキレた。

「今の櫻ちゃん、お父さんと一緒だよ!過保護すぎる櫻ちゃんの言う事なんて、わたしもう聞かないから!」


 涙目?

 それは一瞬の事だった。

 たたたっ、と空条先輩の元へ駆け寄って、そのまま手を取り教室から飛び出して行ってしまった。

 呆然とする私は、それを止める事も出来なくて。

 一瞬後に、我に返る。


「友美が反抗期だと!?おのれ空条め、××ね!!」

「はいはい、それ位にしとこうね?」


 なおも止めに行こうとする私を引き止めたのは、いつの間にか現れた椿先輩と観月先輩だった。


「行くぞ」

 え?

 私は、そのまま二人に、屋上のいつもの場所に連行されて行ったのだった。



 屋上には、既にお茶会の準備がされていた。

「あの、これは一体…」

 今日は定例茶会じゃ無かったよね?

「うん。何があって、どうしてこうなったのか、ちゃんと聞いておこうと思ってね」

 にっこりと笑う観月先輩には妙な迫力があって、どうにもこの状況から逃げられそうに無かった。


「はい、これとこれとこれとこれ!キリキリイライラしている時には、やっぱり甘いものだよ!」

 東雲君がケーキを盛って寄越す。

 いや、そんな食えないし。

 ……気を使って、くれているんだろうな。


「央川さん、最近怒ってばかりだったからさ、お茶でも飲んで少しマッタリした時間を持った方が良いんだよ、きっと」

 お茶を淹れてくれたのは木森君。

 てっきり帰ったかと思っていたのに、いつの間に。

 でも、こうやって他のメンバーと一緒に何かやろうって自主的に動くようになったって事は、木森君もティーパーティの一員だって自覚が芽生えたってことだよね。

 内容はともかく、それは素直に嬉しい。

 …私の事を案じてくれてるってとこも。


「明日葉の件は悪かったと思っているが、必要な事だったとも理解して欲しい。お前にとってはムシの良い話かもしれないが。もう、あんな風に危ない目には合わせないと約束する。どうかこのまま二人の事を見守ってやってくれないか」

 珍しく椿先輩が饒舌だ。

 でもその内容が、空条先輩のフォローだというのが、何事もまじめな先輩らしい。


「お前最近様子がおかしいだろう?言うだけでも心が整理されるって事もある。まずは口に出してみろ」

 案じてくれているんだなあ、という優しい口調で大寺林先生に促され、私は例の事件発生前後からここ数日に至るまでの事をメンバーに語った。



「まあ、明日葉も悪いとは思うけどね」

 観月先輩が苦笑した。

「あの二人は、もうほっといてもくっ付いちゃうんじゃないかな?」

「そーそー、今さら妨害してもただのお邪魔虫になっちゃうだけだって」

 ……それじゃ困るんだけど。困るから妨害しているわけで。


「ともかく、篠原とは仲直りして来い。今回のは央川の過干渉が原因なんだからな」

 やっぱやりすぎたか…。

 でも、あれだけしても空条先輩引かないんだもん。

 そりゃ、ヒートアップする訳で。


「白樹の事だって、そう邪険にする必要は無いんじゃないか?」

 椿先輩はそう言うが。

「邪険にしてるつもりは無いですよ。向こうが絡んでくるんです」

「白樹君後悔してるんじゃない?きっと、つい口に出しちゃっただけなんだよ」

「無かった事にしたい、という話は今のところ聞いてない」

 クラスの様子を知る木森君の、フォローとアドバイスをスルーする。

 後悔してる?冗談じゃない。

 言葉質は取ったのだ。こうなったらとことん利用させてもらうまで。

 私にとっても、白樹君の“あの言葉”は都合が良い言葉だから。


「櫻ちゃんて結構男の子に対しては線引くタイプだけど、穿った見方をすれば今回のって、“実は好きだった男の子に、絶交を言い渡されて逆切れしてシカトしてる”状態なんじゃないのかな~?」

 は?


 ナニソレ。


「白樹はともかく、好きって様子は見えなかったがなあ」

「でも、最近仲良かったのは確かですよ?アイコンタクトっぽい事してたこともあったし」

 東雲愉快犯の突然の暴言に、大寺林先生と木森君がほのぼのと続ける。

 いやいやいや、内容がほのぼのじゃねえ!死活問題だから!

 特に木森、プライベート晒すなああああ!!


「なるほどねー。それなら納得、かな」

「そう言った意味で“こだわる”理由になるな」

 先輩方も何納得してるんですかっ!

「ち、違います!あくまで向こうが接触拒否してきたからであって!」

「ん~、でもさ、それ僕たちだったらそゆことしないでしょ?」

 東雲君が指摘する。

 そりゃまあ、しないけど。

 だって、そもそも好感度上がって無いし、イベント起きて無いし。

 嫌われる意味が無い。


「じゃあさ、考えてみてよ。僕ならどう?」

「へ?」

「僕と付き合って、って言われたら君、どうする?」

 へ!?い、いきなり何ですか!観月先輩!…そ、そりゃ勿論…、


「じ、実利を取るか体重を取るかで悩むと思います」

 ぶはっ

 周囲が一斉に吹き出した。

 ゲラゲラ笑われる。

 え?今の別にウケを狙ったわけじゃ無かったんだけど。


「ひー、ひー、じゃ、じゃあ僕はー?」

「お断りします」

「舜 殺!」

 再び巻き起こる爆笑。

 え、何、何のコントなのこれ。


「じゃあ僕」

「え!?えー、いや、友達、だよね?」

「あくまで“良いお友達でいましょう”ってか!」

 愉快犯笑いすぎ。


「俺はどうだ?」

 なんなの、この告白大会。

 えー、でも、椿先輩かあ…………。

「あ、悩んだ」

「まんざらでもないのか」

「櫻ちゃん、三十朗みたいなのが本来の好みなのかな?」

「先輩ずっこーい」

「アハハ…」

 いい加減むくれていいですか。

 人をダシにして遊ばないで下さいよ、もう。


「なら俺はどうだ?大人の魅力で悦ばせてやるぜ?」

 先生まで攻略中に見せる、口説きモード(後出し「な~んちゃって」の誤魔化し付き)で迫ってくる。

 …そう言う事言う悪い大人には反撃です。

「元カノときちんと切れてからお越しください」

「!?おまっ、何で知ってるんだ!」

 知ってるよ。元プレイヤーであるこの私と、この学園の女子の情報網なめんな。

「ちょっと…」

「ねー」

「うむ」

 ひそひそと囁き合う他のメンバー。

「ちょっ、待て、いや違うんだ!」

 先生の株、大 暴 落。

 いたいけなジョシコウセーからかうからですよ。フン。


「まあ、ともかくね?」

 観月先輩が仕切り直した。

「自覚が無かったかもしれないけど、櫻ちゃんは彼の事かなり気にしてると思うよ、って事が言いたかったんだ」

 そりゃ気にしてますよ?何たって現在運命の分かれ道真っ只中なんだから。

「だからね、絶交は止めて、もう少し素直な気持ちで接してごらん」

 う~ん……。

 この意図的な“絶交”は、好きだから、とかそういう理由じゃないんだけどな…。


 まあ、皆にも迷惑かけてるみたいだし…、何より白樹君が…。

 やっぱ悲しそうなつらそうな顔を見るのは、こっちだって来るものがある。

 きつく当たってる自覚はあるから、こっちも精神的負担が、とか、色々考えてしまう。

 こちらとしては理由があってやっている事だけど(その理由も大概アレだって事も分かってるけど)、周りから見たら、私が悪い様にしか見えないだろう事も分かってる。

 白樹君のはフラグを折った後の、念を入れての好感度下げプレイのつもりだけど、今そのプレイする必要あるのかな…。


「だって白樹君が、もう関わるな、って言ったんですよ」

 最後の抵抗を試みたものの、漏れ出たのは自分が思ったより力の無い声で。

「央川さんのはそれを言い訳にしてるだけでしょ?」

 木森君に突っ込まれた。…やっぱ、ばれるよなあ。

 友美にも散々言われたし。


 ここまで言われて、これ以上続ける意味あるのかな。

 そう思うけど、心の奥で前世(わたし)が囁く。

 ……このまま手をこまねいていて、万が一にでも告白される訳にはいかない、と。

「それでも私は、誰かと個人的なお付き合いする気は無いですから」

「…………」

 皆黙ってしまった。


「央川、「好きに“なる”」んじゃない。恋は“落ちる”ものだ」

 先生に頭を撫でられそう言われる。

 何とも含蓄(がんちく)深いお言葉を頂いてしまった。


 多分、皆の考えている事と、私が考えている事の間には、決して小さくは無い隔たりがある。

 どこか噛み合わないそのずれを認識しているのは、きっと私だけ。

 でも、先生の言ったその言葉に、人生2週目のサバ読み女子高生(わたし)より、本物の恋愛を知っている先生は、精神的にはずっと大人なのかもしれない、と。

 そんな風に思った。





と、言う訳で擬似ハーレムでござい。


主人公の方も、心情的に相当ぐらついております。

常識的に考えてこんなプレイ、ゲームじゃなければ長続きする訳無いですよねえ。


対白樹ツンターンは後1話。


ところで主人公、何か大事な事忘れてやしないかい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ