忙しい文化祭 前編
ルート決定イベントです。
例の女先輩、ええと、七星先輩って言ったっけ?
その先輩と空条先輩をはじめとするプチハーレムの話は、ついに友美の耳にも入る事となった。
まあ私が知ってるって事は、いつ友美が知っててもおかしくない状況だったって事なんだけど。
プチハーって事で、今のとこ空条先輩にだけ狙いを定めてるって訳じゃない様に見えるからか、友美の様子もそう深刻では無い。
でもまるっきり気にしない様にしていられる訳でも無いみたいで…。
そんな友美を「空条先輩が何か決定的な事言った訳じゃないんだから」とか、「あんまり気にしないの」などと慰める事もあった。
まあシナリオ知ってる私からすれば、アーハァン?って肩をすくめたくなる感じだ。
むしろいつ友美の事が彼女の耳に入らないか、そっちの方が気がかりだよ。
友美には空気を読んで、あんまり空条先輩の話を学校でしない事、と言っておいた。
で、待ちに待った(2重の意味で)文化祭ですよー!
元々文化祭は、イベントとしては強制の部類に入る。
ヒロインの「文化祭が始まった」という前フリの後に、好感度や優先順位などの条件によってたった1つだけ選ばれるのだ。
で、選ばれたキャラクターの個別ルートに分岐する訳だが…。
ここは現実なのですよ。(にやりっ)
各個別イベントの発生場所はまちまちで、大半が祭りで起きるトラブルに対処するというもの。
つまりは、こちらから出向く必要があるという事だ。
友美の今までの行動を振り返れば、誰のルートに入るかは大体予想が付くが、もしかしたら他にもイベントが起きる可能性だってあるかもしれないし。
だってここは現実。(2回)
というかですね、この際だからせっかくなので“攻略キャラクター分岐イベント探しの旅”とか、ゲーム時代にはどうひっくり返っても出来なかった事をしたいと思う!
自分についてのフラグも、可能な限りここでぶっちぎる方向で!!もしあればの話だけど!
目標、攻略キャラクター全制覇!やーーーってやるぜ!!
本学園の文化祭は10月第3週の土日2日開催であり、今日は一般開放日でもある日曜の2日目となる。
今年の文化祭は生徒会の趣旨で、飲食店と展示メインで開催された。
詳しく説明するとこうだ。
まず、3年はすべて喫茶店。本格派はともかく、和菓子抹茶の和風喫茶、飲茶の中華風とそれはもう様々で、止めと言わんばかりに執事とメイド喫茶まであった。
2年は展示物と屋台メイン。校庭での焼きそばタコ焼きお好み焼き。みんなそんな感じ。
展示物って言うのは、要するにお祭り全体の飾り付けだ。
東雲君の所は縁日で、私達のクラスは予定通りお菓子持ち込みのカラオケ喫茶となった。
何ていうか生徒会の、っていうより空条先輩と空条先輩を当て込んだ観月先輩が、強行突破的にねじ込んできたんじゃないですか?この企画。文化何処行った。
まあ、各体育館とかクラブ棟とか行けば、それなりに文化的な展示や催しもあるんだけどね。
私と友美は午前中クラスの当番をした後、午後に自由時間を貰う予定。
私の担当は、“櫻”だけに“さくら”役だ。
……誰だこのオヤジギャグで決めたヤツ。あっ、ほぼ全員だった。
……嫌がらせの為だけに「JAM」歌うぞコラ。
友美は木森君と共に外回りの宣伝。
“篠原友美を愛でる会”で制作した特注の宣伝服で、がっちり顧客をゲットして来いと送り出した。
この場合の木森君の役は、空気を読んでキリの良い所で引き揚げる、または場所移動する役。
そうじゃないと他校の(特に)男子生徒に絡まれかねんからな。
ちなみに、午前非番だった友人が目撃したところ、木森君は完全に“ぶりっぶりのコスを着たアイドルの、地味で空気なマネージャー”と化していたらしい。
一応これ、木森君イベントも意識した配置だったんだけど……。
帰ってきた友美に聞いても、「ちょっと囲まれちゃった時もあったけど、大丈夫だったよ?喧嘩とか、櫻ちゃんの言ってたみたいな、ガラの悪そうな人にも合わなかったし」と素で返されたので、本当に何もなかったんだと思う。……ちっ。
白樹君は一応接客担当の午前当番だけど、この調子だと午後も離れられないかなー?
見た感じ、女子に囲まれて身動きとれなさそうだし。
まあ彼の事だ。飽きたら上手く逃げ出して、一人の時間を確保するに違いない。
彼も今の所、目立った友美との接点は無し。
ふむ……。彼の場合は自由行動の時のイベントだから、午後に期待しておこうか。
と言いたいとこだけど……、白樹君の個別イベントって、結局最初の1回しか消化してないんだよねー。
体育祭ではイベント無かったみたいだし、一緒に夏の旅行にも行かなかったし。
他のデートイベントや個別イベントについても、友美が私に隠し事をする筈無いので無かったのは間違い無いと思う。
というか、1対1どころかダブルデートでさえ行かなかった訳だから…。
あ、木森君とは行ったか。でもあれは、きもりんの方のイベントだったからなー。…しかも何だかミスったし。ちくせう。
そんなこんなで午前中は大きなトラブルも無く、私は帰って来た友美と一緒に各展示を回る事にした。
とりあえず近所という事で顔を出した東雲君の縁日では、駄菓子を数点購入。
前回の個人で(私が勝手に)微妙な空気になっただけに、イベント的にも特筆すべき点は無く、挨拶だけしてクラスを後にした。
「えー!?それだけー!?」という声が聞こえて来たのは幻聴。幻聴だったら。
3年の階に向かって最初に顔を出したのは、椿先輩のクラス。
こちらはギャルソンスタイルが眩しいコーヒーショップ。
しかし、本人は不在だと言われてそのまま出て来た。惜しい。
先輩の行先は、2年の焼きそば屋台。
剣道部の後輩に泣きつかれて引っ張って行かれたらしい。……ふむ、こっちは予定通りだな。
一方、観月先輩のクラスは盛況だった。
30分待ちの行列に並ぶのは、他の人のイベントも回収する予定なのを考えるとどうなの?と思って呼びこみと列の整理の担当者に聞いてみたら、観月先輩自身は下の調理実習室に籠りきりで出て来れないとか。
なので、本来ならクラスできらっきらした執事な先輩に給仕されて、とか思い描いていた観月先輩イベントがクラッシュしている事を察した私は、念の為にその実習室も覗いてみる事にした。
……結果、見なきゃ良かったと後悔したのだが。
鬼神の様な表情で、クラスの調理担当男子に檄を飛ばしている観月先輩の顔を見る羽目になろうとは…。イメージ崩れるんで止めて下さいお願いします。
そろっととなりを見ると、仕事中バーサク状態の友美のお父さんを見慣れている筈の友美でさえも引いていたので、……これは完全にアウトだろ。
「観月先輩、この前お父さんの所に弟子入りしたんだっけ……」
そんな話は聞いて無いぞ友美よ!?
ぽつりと零れた独り言の様なそれに、思わず激しく振り向く。
んあ!?もしかして椿先輩に差し入れに行った日、観月先輩と空条先輩と友美の3人で帰ったアレか!?
おいおいそんな展開、予定には無かったぞ!?観月ルートのシナリオどうなってる!?
ちょ、今から修正とか多分無理www
精神的外傷になりたくなかったので、速やかに心の封印フォルダに仕舞う事にしました。……ワタシハナニモミナカッタ。
気を取り直して、そのまま昇降口から外へ。
先生方とPTA主催のフリマへ向う。
「お疲れ様でーす」
「先生、お疲れ様」
「何だお前等冷やかしか」
「ちょっと待って下さい、断定って何でですか」
「お前等が買う様なもんなんざ何も無いだろうが?」
「ひどいですっ、大寺林先生!」
「……間違ってないですけどねー…」
「櫻ちゃん!!」
先生目当てに来た子が他にもいたのだろう、大寺林先生には、すぐに冷やかしだとバレてしまった様だ。
フォローする気も無く目を逸らした私に、友美が「言っちゃダメだよ」と怒る。
それを適当に流しつつ、ついでに周囲を確認。
うん、とりあえず面倒事を起こしそうな人は付近にはいないらしい。
……“ガラの悪い他校の生徒がフリマに乱入、友美が巻き込まれて先生が救出(?)イベント”はどうやら無さそうだな…。
「どうした?央川」
「いえ、……そういえば先生は、見回りとかしないんですか?」
「俺は今こっちの当番だからな、3時過ぎには交代だ。何かあったか?」
むしろ無い方が問題です。
……と言いたいとこだが、それ以前に先生の場合個人イベントを“ぶっち”させて頂いたのだから、イベント的にも好感度的にも文化祭の個人ルートへ至る強制イベントのフラグなど立つ訳も無く。……うん、やっぱないよな。
自分の選択とはいえ、少しだけ残念な気持ちになりながらも、
「……いえ、ただ、時間のある時には是非うちのクラスにも顔を見せてくれると、皆奮起すると思いますよ、と」
誤魔化す様にそう言えば、
「ああそうだな。他の連中にも言われてたし、後で顔を見せると伝えておいてくれ」
予想してたより肯定的な返事が返ってきた。
先生なりに、ウチのクラスの事気にしてくれていたらしい。
「了解です」
これ以上特に何も起きないだろうとこの場を離れるべく「友美」と声をかけようとすれば、彼女はもうすでに携帯を操作していた。
クラスにいる友達に、メールでも送るつもりらしい。
Oh!友美サン、ナイスアシスト!
「“ツー”を言う前に“カー”か。相変わらずお前たちの息は恐ろしいほどに合ってるな」
言ってる事とその表情が全てを裏切っている気がするんですが。
褒めてる様に聞こえて、その実ドン引きですね?失礼な。
校庭を横切って、椿先輩のいるという2年の屋台村へ。
「うわー、並んでるねえ」
「並ばずに話しかけるのは至難の業、かな?」
「もう、櫻ちゃんたら。当然買うんだよ?」
「当然、なんだ?」
ちなみに、行列の大半が女性である事をここで明記しておこう。
顔だけ出して椿先輩に声かけようという猛者がいないのは、果たして並んでる客の熱気のせいか、それとも熱いのか凶悪な顔になってる椿先輩自身のせいか。
「三十郎さん、汗が凄い事になってますわよ。くすくす、今拭いて差し上げますわ」
……あるいは、たおやかな女子生徒がその白いほっそりした腕を伸ばし、どこの女房だよと突っ込みたくなる様な雰囲気を醸し出しているからだろうか。
……あー、こっちにいたか。
友美と椿先輩の仲は、他の攻略キャラクター達と比べてもさほど進展していないと思うんだけど、“彼女”がいまだに“こっち”にいるって事は、う~ん……。
考えたくないけど、これは“私のせい”かなあ……?
念の為もう一回フラグ折るか。いや、そもそも分岐イベント自体発生させなきゃO.K.だし。よし。
考えながら列の最後尾に並ぶ。
「椿先輩似合うねえ、あの格好」
「まあねえ、日本男児だからねえ」
青地に白抜きの『祭り』の文字が入った法被に、捻じり鉢巻き。
どっかのショタ担当より断然似合うな、うん。
「でも、すっごく大変そう」
「目の前が鉄板だと暑そうだね」
「うん……」
うん?これはもしや?
「友美?もしかして君、「ちょっとお手伝いした~い」などと考えてないかい?」
「えっ!?何で分かったの!?櫻ちゃん!!」
吃驚した顔で振り向く友美。
いやまあ、そういう流れだしね?椿先輩の文化祭イベント。
ただまあ問題があってだな……。
「見えるかね?友美君」
「えっと、何?」
「あの隣にいる女子の先輩の姿が」
「あ、えっと」
こくんと頷く。
話には聞いていても、実際目にするのは初めてだろう。
私は何度か会ってるし、もう顔も覚えたけど。
誰とは言わない。でも、あれを無視するのは至難の業だと思うんだ。
「べったりだよね?」
「……そう、だね」
「むしろ邪険にされる気がするんだけど?」
「そう…、かなあ?」
少し見ていてどんな状況か察したのだろう。その答えには力が無かった。
それに、今ここで無理して手伝うと言い張って友美とあの人がお互い顔を覚えるのは本意では無い。
……まだ、早い。
「だから、声をかけるのは構わないけど、断られたらすっぱりあきらめる事。あの女子先輩の事が無くても、カウンターでの長話なんてもっての外だからね」
「う、うん、分かってるよ。大丈夫」
ほわっと笑みを浮かべた友美に、後は任せる事にする。
ここでのポイントは3つ。
1つ、『長居して、例の七星先輩と友美の接点を作らない事』
2つ、『友美から話かけさせる事によって、私なら問題無く発生させられるであろう椿先輩のイベントを故意に失敗させ、私とのフラグも同時にへし折る事』
一度イベントが起きれば、2度は無いと思う。文化祭という、このタイミングしかないイベントなら特に。
それから3つ目、『友美と椿先輩双方の好感度が上がっていない現状、恐らくこのイベは失敗するだろうから速やかに離脱し、残った一人“空条”のイベントを確実に起こす事』
欲を言えば、3先輩の内比較的仲の良さそうな椿先輩に七星先輩がターゲットを絞ってくれたら、空×友狙いの私としては安パイ……。
でもそうすると、このまま“何の変化も無く”2人の仲が進展すれば、椿先輩はあの七星先輩と付き合うという事になるのだろうか?
………………それは、大問題だなあ……。
悪いとは言わないし、もしかしたら筋書きも変わって来るのかもしれないし、もしかしたら、もしかしたら、万が一にも丸く収まって皆幸せになれるのかもしれないけど……、それは何か、……不安だ。
後で会った時にでも、あの七星先輩には注意しておいた方が良い、と一言言った方が良いかな?
それとも椿先輩、ひいては空条先輩の事だ、もうすでに手は打っていて余計なおせっかいって可能性もある。
それに、“まだ何も起きていない今”何の根拠も無くそんな事言って、悪口言う人間だと思われたくも無いしなあ……。
「櫻ちゃん、ほらぼーっとしてないで。次、私達の番だよ。お財布!」
熟考してたら隣から突かれたよ。おうふ。
結論から言うと、友美の案はちらりと隣を横目で見た椿先輩によって却下された。
一瞬だけだけど先輩の隣にいた彼女に、何かものっすっごい目で見られた気がするんだけども。
私自身は口を挟む事無く、友美の袖を引いてその場を後にする。
去り際、振り返り、椿先輩に向かってぺこりとお辞儀をすると、こくん、と力強く頷かれた。
あれ?フラグ今、どうなってる?
校庭の脇のベンチで買った焼きそばをつつき、昇降口でゴミを捨てる。
ついでに寄った他の屋台で買ったフランクフルトを、おやつ代わりに齧りながら廊下を歩いていたら、生徒会メンバーを従えた空条先輩に出会った。
「空条先輩」
「お疲れ様です」
向こうもこっちに気付いた。
「央川と篠原か」
いやそこは、篠原と央川だろ?
「見回りですか?」
「そんな所だ」
2人が自然に見つめあった。え、何この空気。
友美の顔がうっすら染まったのが分かった。
ふむ…、友人としてここは一つ肩を押してみますか。
「先輩は忙しそうですね」
「まあ、否定できんな」
珍しい。本気で忙しいのか空条先輩の眉間に皺が。
「1人貸しましょうか?」
ぽん、と友美の肩を叩く。
「えええっ!?」
友美リアクション大き過ぎ。
「1人増えた所で大したことは出来ないと思いますが」
一応謙遜。でも、空条先輩はしばらく手を顎のあたりに持って行った後、
「いや、借りて行こう。おい篠原、ついてこい」
本気で人が足りなかったのか、あっさり友美を拉致って行った。
先輩に腕を掴まれ、未練がましく私の方を振り返ろうとする友美にひらひらと手を振って、私は踵を返した。
空条先輩と関わるのなら、生徒会メンバーとも仲良くなっておいた方が良いだろう。
仲良くはともかく、顔は知っていてもらいたい。彼と彼女の今後の為にも。
それに、2人で行動するよりここで別れた方がイベント発生率上がるかなって。
どうか上手い事行って、イベントが起こるタイミングで戻って来れます様に。
さて、久しぶりのぼっち。何処へ行こう。
「あの、央川さん」
呼ばれて振り返る。ああ、クラスの。
「何かあった?」
クラスのカラオケで何かあったのかと聞いてみる。
「そうじゃないの。……そうじゃなくて、ちょっと聞きたい事があったの」
何の相談だろう?んー、でも、彼女は別に仲の良いグループの子がいた筈だ。
私とは特別親しい訳じゃない。
「ちょっと、いいかな」
あまり良い雰囲気には思えなかったけど、特に用も無かったし、私は彼女について行った。
ついて行った先は、校舎間にある東西の渡り廊下に挟まれた中庭。
お昼休みにはそれなりに賑わう(主にかっぽーさんとかリア充達によって)場所だが、今日は誰もおらず、しんとしている。
「話って?」
長引かせるだけ無駄だろう。とっとと終わらせる事にした。
「あの、央川さんって、白樹君の事、どう思ってるの?」
えっ?
まさかの質問に、目が点になった。
「どうって、友達?」
何で疑問形なの、と自分で突っ込みが入った。
「……仲、良さそうだよね。夏の旅行でも一緒に居たし」
ああ、思い出した。そう言えば一緒に旅行に行ったわ。
見てたって言うのは、あの参拝の時の事かな?ナデモノの。
「同じ同好会だからね」
苦笑する。それを言ったら東雲君ともずいぶん仲良しだと思うけど。
けど、彼女にとってはそういう問題じゃないんだろう。
こういう事を言うって事は、彼女はきっと―――。
「ホントにただのクラスメイトだと思ってるよ」
なんにもないよ、と態度に出すと分かって貰えたみたいだ。
誰かとつるんで攻撃してくる訳でもないし、きっと性根は良い子なんだろう。
「なんもないから」
「そっか、ごめん、変な事言って」
「ううん、まあ、頑張って」
ほんの少しのおせっかいを滲ませると、彼女はうん、ごめんねと言ってその場を去って行った。
「央川」
うおぅっ
変な声が出そうになった。
「白樹君」
後ろめたい事は無い筈だが、恐る恐る後ろを振り向いてしまう。
「何か用?クラスで何かあった?」
ここには何もないし誰も居ない。
探されたのかな?今度こそクラスで何か?
中庭から出るつもりで白樹君の方へ向かう。
「ちょっとね」
さっきの子とは反対から来た白樹君と一緒に、校舎を回り込むように一旦校庭に出る。
中に入るには上履きに履き替えないと。
「見てたよ」
「え?」
「さっきの。災難だったな」
ああ、さっきの子の。何処から見てたんだ。つか、聞いていたね?
改めてその顔を見る。
女の子に好かれて多少なりとも嬉しくて困ったという表情も、トラブルに見舞われた友人を気遣って心配する表情も、その顔には無い。
ただ、彼の顔には歪な笑顔が皮肉そうに張り付いていた。
きっと、ワザと言ったんだろう。
その表情は、この間みたいないわゆる裏の顔ってヤツで。
理解してしまえば私自身が戸惑う事は無かった。
……いい加減慣れて来てるな、自分。
最近少し行動が挙動不審気味で……髪の毛の件とか……、予定外の事もあったけど。うぐ、思い出したら顔が火を噴く。
冷静にならねば。
ええと、だから、彼はきっとそうやって普段隠している一面を見せ、その表情に戸惑う私を見たかったんだろう。
だが断る。
「何だったんだろうね、一体」
そう、そらっとぼけた私は、彼を見るのを止めて移動に専念する事にした。
ちなみに
友美ファンクラブ 『篠原友美を愛でる会』
サブタイトルの変遷は
友ちゃんなう!
友は混沌の隷也
友美とは桃源郷の月
…そろそろ関係が無くなって来てるが、勢いだけはある。
正式構成員は現在6名(俗に言う6人会議である)
ついでに
央川櫻非公式ファンクラブ
さっきゅん幻想
さっきゅん語り
神の光
本人にばれたら即死間違い無しである。
ちなみにその関係上篠原嬢にも秘匿されている。
構成は主に男子だが、最近女子も増えた。
さっきゅんかわいいよさっきゅんハアハア
ちなみに…2人合わせて『シンデレラガールズ』とも。
誰だ言いだしたヤツ。




