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2学期前半~定例茶会~

今回は前フリ回です。主人公サイドは特に進展ありません。

若干短め。

 その後の夏休みは、予定通り模試と夏季講習に費やした。

 まあ、その合間合間に遊びにも行ったので、結構充実した夏休みになったと言えると思う。


 お盆の間、帰省した家族と共に隠居した祖父に連絡を入れ、皆で墓参りにも行った。


 妹も弟も、久しぶりに会ったら身長がずいぶん伸びていて、私を驚かせた。

 普段一緒にいられない分、いる間はしっかりじっくり一緒に遊んだつもりだ。

 父も母も(ついでに祖父にも)、信頼できる人達と一緒にいると知ってはいても、娘を1人日本に置いて行くのはやはり心配だったのだろう、この4カ月間の事をあれこれ聞かれてしまった。


 家族と過ごした一週間はあっという間で、4月に離れた時にはあまり感じなかった、置いて行かれてしまう寂しさみたいなものを感じてしまう程だった。



 一方友美の方は、空条先輩の指示通りに植物園そばの紅茶専門店にバイトに行き、案の定事件に巻き込まれたと聞いた。


 空条先輩のイベントがあると予想はしていたので、事件自体は驚く事ではなかったのだが、どうも話を聞く限り、空条先輩の指示で観月先輩がヘルプに入り、その日は偶々空条先輩が様子を見に来ていて、最終的に椿先輩までも事件に介入したらしい。待て、なんだその豪華メンツ。

 どうも、以前世話になったというオーナーに相談されて、空条先輩が色々とお店関係に手をまわした結果、先輩の事が気に入らない親族の1人が因縁つけて来たらしい。うむ、ここまでは予定通り。

 空条先輩と親戚の人といかがわしい人達(マルボウ的な)の一触即発の空気に友美がプルプルしていると、観月先輩が大丈夫だよ、ってナデナデしてくれて、結局駆け付けた椿先輩とその兄(けいさつかん)によって危ない人達が確保されたと聞いた。

 まあ、バイト先で何かあったら問題でしょう、と空条先輩に勧告したのは私なんだけど、なんだけどさ!

 私だって椿先輩の大立ち回り見たかったよ。はーあ。


 私が知っているこのイベントは、もうちょっと大人しめの展開だった筈だ。

 少なくとも観月先輩も椿先輩も出て来なかった!

 ちょっと口出しただけでこの展開とか、さすがヒロイン、波乱万丈デスネ。



 それから友美は、たびたび空条先輩に誘われて遊びに出かける様になった。

 友美だけじゃなくて、私と一緒に行く事もあったし、そういう時は先輩方や、東雲君、白樹君が一緒の時もあった。

 行き先を考えるに、これはもはやデートと言いきって良いだろう。

 何となく仲の良さも深まってきた気がする。


 そんな将来の予定が見えてきた夏休みが終わり、今は2学期。

 恒例のお茶会ですよ。


「そう言えば、ライブ行ったんだっけ?」

 観月先輩が話を振ってきた。

「ああそうなんですよ。行ってきました!」

「楽しかった?」

「ハイ、何故か途中からアイドルコンサートのノリになってましたけど、すっごく楽しかったです!いっぱい叫んできちゃいました」

「叫んだのー?」

 えー、想像できなーい、と東雲君。

「や、叫ぶでしょ、ラストの演者紹介の時とか」

 ファンコール送らせて頂きましたよ、しっかり。

「楽しかったなら良かったな」

「はい!」

 良かったと言ってくれた椿先輩に、満面の笑みで返事をする。

 いやあ、今回はチケット取れたら行くくらいの気持ちだったけど、やっぱり行けて良かったな。

 

 つられてか、どことなく優しい顔をした椿先輩にお茶を差し入れ。

「粗茶ですが」

「すまないな、ありがとう」

 先輩がはにかんだ。

 いいんですよそんな、レアな表情(このえがお)が見たくてやっているんで。

「今度また万寿堂の水ようかん食べに行きましょう」

「機会があればな」


 夏休み、模試の帰りに鳥南市(とりなし)で椿先輩と偶然ばったり会った。

 その時色々あった末、一緒に近くの和風カフェでお茶する事になった、のだが。


 そういやその事、友美以外には話して無かったっけ。(てへ)


「えー!?何それ聞いてない!」

「三十朗、何で言わなかったのかな?」

 東雲君が盛大にブーイングをする横で、観月先輩がいつになく黒い笑みを浮かべている様な気がするのは気のせいかな?…気のせいだと思いたい。

「また皆で行けばいいじゃないですか」

「そうですよ、また一緒に行きましょう、皆で!」

 白樹君の取りなしに、友美が乗っかった。

「そうだな、また行くか」

 珍しい、二つ返事とは。でもイイ笑顔です先輩。


 …そういえば、さっきから会話に参加してこない人が一人…。

「友美、空条先輩さっきから静かだね」

「うん、普段なら資料見ててもこっちの話に入ってきたりするのにね」

 小声でひそひそ。

「やっぱり疲れてるのかなあ?」

 友美が心配そうに言う。

 偶に忙しそうにしている姿を見せていた空条先輩が、目に見えて忙しくなったのは、最近あった生徒会総選挙で無事生徒会長の座を射止めてから。

 お気に入りの紅茶が冷めるのも構わず資料をめくっている空条先輩に、ちょっと探りを入れてみる。

「空条先輩」

「何か用か?」

 お、一応反応した。聞こえない程集中していると言う訳でもないらしい。


「先輩、友美の作ったクッキー美味しかったですか?」


「!?」

「え!?なに!?友美ちゃんの手作りクッキー!?」

 お菓子大好き星人達が物凄い勢いで反応した。

「この前、調理実習でクッキー作ったんです」

 空条先輩が、生徒会の仕事も増えてぼちぼちぐったりする頃だろうと時機を見計らい、調理実習のクッキーを差し入れてみたら?とそれとなく友美を誘導したのはつい最近。

 帰って来た友美の様子から察するに、好感度イベントは無事発生したらしい。

 しかしだね空条先輩、毎回私は友美と実習の成果を交換しているのですよ。

 今回は「そうだね、私行って来る!」の一言であっさり差し入れに行ってしまったので、私は友美のクッキー、1枚も食べる事が出来なかったんですよ?

 まさか1枚も残らないなんてねえ…。ウランデナイデスヨ。全然?


 2大甘党キャラに責められてざまあwww、とか思ってないですってば(笑)


「ねえそれじゃあさ、櫻ちゃんは誰かにあげたの?」

 あれ、矛先がこっち向いた。

「残念ながら。普段は友美と交換してるんで」

 今回はそれが無かった訳ですが。ねえ先輩?ふふふ。

「慣れてるみたいだったけど、央川とか篠原って普段から料理とかお菓子、作る方なのか?」

 白樹君が聞いてきた。おや、見られてたのか。

「料理はやれば出来るよ。お菓子は時間のある時にね」

「櫻ちゃんのスコーン、すっごく美味しいの。さくさくのふわふわで、お店のみたい!」

「あれはビスケットだよ」

 どうしても食べたくて、ネットでレシピ探したりして作った事があった。

 あれ以来、ビスケットと言えばあのレシピだ。

「メイプルとハニーのシロップで食べるのが好き」

「あれ、おいっしーいよね!」

 2人して盛り上がる。

「クッキー焼くのが上手いのは友美の方で、私は苦手なんですよ」

「えへへー、そうかな?」

 友美が照れた。本当だって。

「じゃあ、今度は2人にお菓子当番してもらおうかな?」

「大賛成!!」

 観月先輩の一言に東雲君が即座に反応した。

「ええっ!?」

 なんですと!?

 あー、……余計な事言ったかなー?


 ん?でも待てよ?

 確か観月先輩の個人イベントで、定例会で自分の作ったお菓子をふるまう、ってのがあった筈。

 時期的にも一致するな……と、頭の中で情報を捻り出す。

 いわゆる“攻略情報”は思い出した端から黒い背表紙のノート(ここ、こだわりだから超重要!!テストに出るレベル!!)に書き出し、整理したものを手帳(ここもだよ!!)に書き写して持ち歩いてはいるのだが、さすがに目の前で確認する訳にはいかない。

 仕方ない、後でちゃんと見ておこう。


 で、とりあえず次の回でのお菓子当番を私達でやる、という事が決定した。

 ……期待するほどの物は出ないって言うのに、皆にこにこしやがって。

 話の途中で資料に目を戻したあの空条先輩でさえ、うっすら口の端が上がってる気がするし。

 友美か!?友美かこの野郎!!

 ……くっ付けようとしている人間が言うのもおかしいかもしれないけど、何か腹立つ。

 いいけどねー、日頃の感謝の気持ちも込めて、精一杯努めさせて頂きますよ。

 ……本来なら友美だけで済んだ筈が、私まで巻き込まれた被害者の気分がするのは気のせい、きっと気のせい。


 「スコーンやビスケット焼いて来るって言うんなら、僕がクロテッドクリーム持ってくるよ」

 観月先輩のせいで本格的になったよ!?ハードル上った\(^o^)/



 それにしても、さっきの話の途中からまた空条先輩が黙ってしまっていた。

「あの、大変ならお手伝いします。出来る事は少ないかもしれないけど、何でも言って下さい!」

 見かねた友美(てんし)が言った。

「いや、部外者には見せられん資料も多いしな」

「でも、最近先輩元気ないです。疲れてるみたいで、見ているこっちが心配です」

 もー、友美ったらマジ天使。

「ね、櫻ちゃんも手伝ってくれるでしょ?」

 うーん、普段だったら速攻頷くんだけどね?


「前、勉強会の時には趣旨に反するって言ってましたよね、先輩」

 これも趣旨に反するんじゃないですか?と、いじわる言ってみる。

「ここはお茶を楽しむ会であって、仕事を持ち込む所じゃないんだけどなあ」

 観月先輩も苦笑しながら、ねちこら追い打ちをかける。

 2人して黒い笑みを浮かべていたら、珍しく友美が怒った。

「もうっ、2人とも先輩が困っているなら助けてあげなきゃダメだよ!仲間なんだから!先輩こんなに大変そうなんだよ!」

 いやまあ知っているけどね、元イベント経験者としてはさ。


 ……仕方ないなあ。

「空条先輩、役員外でも出来る仕事下さい。お手伝いしますから」

「櫻ちゃんも、何だかんだ言って結局甘いんだからー」

 東雲君の呆れた声と、

「俺も手伝いますよ。何からやればいいですか?」

 の白樹君の声と、

「明日葉」

「ホント、仕方ないねえ」

 椿先輩、観月先輩のいかにも何時もの事だと言う様な声で、

「お前ら…、悪いな」

 珍しく殊勝な空条先輩の一言と共に、全員でお手伝いする事になった。



 この後も何度かお手伝いの機会があり、空条先輩から生徒会に入らないかと打診を受けたのは翌年、2年の初め。

 最初は勉強時間がとられるのが嫌で、お断りしようと思っていたんだけど、

「……内申にイロ、付けて貰えるんですよね?当然」

「フン、相変わらずしっかりしている。…その件については考慮しておこう」

「コンゴトモヨロシク」

 そしてがっちり握手、の微妙に後ろ暗い取引があったとかは秘密だ。



 さて、お仕事も一段落ついて、皆おしゃべりの余裕が出てきた。

「そういえば、先輩方はもうすぐ修学旅行ですよね?」

 確認したい事があったので、話を振ってみた。

「ああ、そうだな」

「お土産買ってくるから楽しみにしててね?」

 ちょっと元気を取り戻したらしい空条先輩と、観月先輩が返した。

「はい、1週間でしたっけ」

「そうだ」

 日程を確認したら今度は椿先輩が答えてくれた。

 ついでに聞いてみる。

「先輩達が旅行中は、お茶会どうなるんですか?」

 3先輩が顔を見合わせた。

「まあ、やっぱ中止かな」

「先輩達が居ないのに、やっても意味ないしな」

 観月先輩の後に白樹君が続いた。東雲君はちょっと不満そう。

「お菓子ー、お茶ー」

「はいはい、愉快には特別大きなお菓子買ってきてあげるから」

 お母さんと子供か。

 そんなでも東雲君は機嫌を直したらしい。

「約束だよー」

 何処までお菓子好きなんだこの人は。


 こうして、試験前と夏休み以来の同好会休止が決定した。

 ハイハイ予定予定(ですよねー)

 元々この時期はお茶会無くなるの知ってたし、久しぶりに自分の事に専念できる(体重気にしなくていい)

 元のゲームでも、この時期には貴重なパラUPの期間だった。

 よし、とりあえず勉強時間増やして、と、そうだ!

 ゲーセンのコージさんに会いに行こうかな。好きなリズムゲーも更新されてるかもしれないし、一部で流行りのクイズゲーに挑戦するのも良いかもしれない。


 コージさんとはちょっと仲良くなれた気がする。意識して話しかけたかいがあったよ!

 ライブしてるんだって言う話を聞く事が出来た。

 今度行ったらチケット下さいって頼んでみようかな?


 修学旅行が終わったら、次文化祭か。

 ぼちぼち分岐イベントが発生するかもしれない。

 気を付けて見守らなくちゃ。


 と、その前に友美に、修学旅行中に空条先輩に電話させるよう言っておこう。

 私も話したいからって言い訳するのも良いかもしれない。

 これなら修学旅行の空条先輩イベントも覗けるよね。

 上手くいけば、何かあってもその場で軌道修正できるし。


 よし、我ながら良いアイディアだ。




ライブに関してはあれです、界隈ではよくある事。(ライブの筈がアイドルコンサート)


2013.6.6一部修正。

櫻ちゃんのノートは、通称『黒歴史(ブラッククロニクr)』

そしてロリコンでは無い、決して。

手帳も黒いカバー。そしてその下に隠れた表紙には、大きく『D』の文字が書かれている。



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