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第1章 -2- 君の思ひ出


衝動挙げ|。・ω・)ノ

気に入らんとこは改正してくし




あの日言えなかった言葉は


いつか君に言える気がしたよ


子供の頃の記憶が手を引いて


君の大切さに気付かせてくれて


時間と共に消えたあの季節が


君の面影を焼き付けていて


風が町を駆ける度に


僕は君に歌うんだ


あの時言えなかった言葉は


いつか君に言える気がしたよ


鮮明に揺らぐ僕の記憶が


君への想いに気付かせてくれて


風が頬を撫でる度に


僕は君に歌うんだ


僕は君が好きなんだ


あの時言えなかった言葉は


今なら君に言える気がしたよ





玄関の扉を閉めると何故か涙がでてきた。


無意識のうちに。


おそらく泰輔の前で涙を堪えた分、今流れているのだろう。



泣きながら家の真ん前にある階段を使い4階の距離をおりる。


いつもは仕事のことを考えてしまうからだろうか短く感じる4階分の距離を

今は地球から太陽までの距離がこの階段にあるように感じた。





頭を空っぽにしたいと思う階段もその時は

泰輔が生きていてくれた。

帰ってきてくれた。

でも泰輔には記憶が無くて

自分のことさえ何も思い出せない。

私はどうすればいいんだろう。

もし泰輔が何も思い出せなかったら、

とかそんなことしか頭になくて、

嬉しさや悲しみ、不安、疑問とかいろんな感情が渦巻いていた。

そして私の身体が経験したこともない事態に無意識的に涙を流してしまったという感じだった。




自分では仕事の脳に切り替えようと思っているのだが、涙が止まってくれない。

そうして階段を降りてきた私の涙は既に乾いていた。

その頃には嗚咽をはいてはいたものの、感情の整理はだいたいできた。



息を整えながら10メートル程離れた車へ向かう。



車に乗りエンジンをかけるときには頭の中には仕事のことしかなかった。



『人間とは至極単純な生き物だ』



そう言っていた、記憶がある時の泰輔を思い出しながら駐車場を出た。




いつもと変わらぬ風景の

いつもと変わらぬ道を

いつもとさほど変わらぬスピードで走る。

私の通う会社は車で40分程かかる距離があり、私は2街も越えていかなければらない。

以前はもっと近い位置に会社があったのだが



浜島(はまじま)社の業績が悪いんだ、悪いが君に行って利益を上げてきてもらう、その内こっちに戻ってこれるだろう。ま、頑張ってくれたまえ。」



との社長命令により、今は浜島社に勤めている。

まぁ平たく言えば飛ばされたのだが。


「あんのくそオヤジめ。」


なんて言っても元の会社に戻れるわけもないし、浜島社の方が都心にあった深島(ふかじま)

社に比べて活気があってやりがいがあるというか、やっていて楽しいと思える。


そして何より部下が

仕事のスピードが遅いが、素直で熱意がある。





そんなことを考えている間に浜島社に着いた。


それほど広くはない駐車場に車を留め

会社に向かって歩きだす。

今日もいつもと変わらぬ日々が始まる、そう思うと憂鬱にはなるが

今日からは泰輔がいてくれる

そう思うと気分が和らぎ今日1日も頑張ろう、そう思うことができる。




気付けば鼻歌で『未来予想図』を歌っていた。


仕事一途な私が鼻歌を歌っているのが

それほど珍しかったのか

入口近くにある警備室の前にいる警備員のおじさんが唖然とした顔でこちらを見ている。


少し恥ずかしい気もしたが

何しろ今日は気分がいい。


私は警備員のおじさんに軽くおじぎをし、エレベーターの横にある階段をかけあがった。



もちろん鼻歌を歌いながら。






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