第一話.高橋悠也
暇やなぁ。
毎日バタバタしとるのも、生徒会に入っとったり部長やっとったりしとるごく一部の数名やし、俺には縁がなくて良かったわ。
俺の親友であるアイゾー……幸村愛蔵もそのひとりなんやけど……これがまぁ本当に忙しそうにしとる。
弓道部部長、生徒会副会長、文化祭実行委員。
他にもあった気がするけど忘れた。
とにかくそういう類のものを片っ端からやってくのがアイゾー。
何もそこまで気張らなくていいと思うんやけどなぁ。
俺ほどは行かなくても、多少なり肩の力抜いた方がいいと思う……けど、言ったら多分アイゾーを余計に追い詰めちゃう気がするから言わない。
まぁ、アイゾーのことはどれが本当なのかよく分からないってのが本音だけど。
実際、アイゾーは頼りにされてるし、成績もトップクラス。
志望校は余裕で受かるって言われてるし、交友関係も広い。当然、教師からの信頼も厚い。
「なぁアイゾー。アイゾーって楽しいって思うことある?」
「え?あ〜……すぐには浮かばんかな……」
アイゾーはその後しばらく考えて、あっ、といった。
「悠也と話してる時は楽しいかも」
「へぇ」
アイゾーはいつも通りの笑顔だ。
多分、本音じゃない。
いや、八割お世辞で二割本音、と言うべきか。
きっとこいつは気を抜ける時がない、即ち楽しいと思えたことが、ただの一度もない。
だから、聞かれても分からないんだ。
まぁ、アイゾーの性分みたいなもんだと思ってるから今更傷付いたりもしないし、愛想尽かしたりもしない。
友達ってそんなもんだろ?
一番の理解者みたいな顔をして、一番仲がいいふりをする。
それが一番、友達の振る舞いとしての最適解。
少なくとも、俺はそう思ってる。
アイゾーだって、俺に本当に友達だと思われたら迷惑する。
こういう生き方を選んでいるのはアイゾー自身なんだから。
心配なんてするだけ無駄なんだよ。
アイゾーは心配されるとそれだけ不機嫌になる。
俺くらいしか気づかない本当に僅かな変化だけど、少しだけ眉間に皺が寄る。
アイゾーにとって迷惑なことはせず、アイゾーにとって外面のためだけの友人。
それが俺。
別にそれでもいいし、生徒会副会長と仲が良い、というステータスはなかなか使える。
嫌われ者だった俺を、普通に学校に行けるくらいにはしてくれた。
少なからず感謝している面もある。
だからアイゾー、お前はそのままでいてくれよ。
俺のためにも。




