プロローグ
親愛なるフィローメナ・セウダへ
今年も6月がやってきました。兄さんとネサランのために今年はキャロットケーキを作って待っていようと思います。新しく買ったばかりのオーヴンをうまく使いこなせるか不安ですが、美味しくできるまで作り直すので味の心配はしないでくださいね。今年も家を綺麗にして花瓶にきれいなお花をさして待っていますのでネサランと気をつけてゆっくりお越しください。
あなたを愛した最高の弟・ミラべー・セウダより
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いつもは手紙を送ってくる兄が珍しく荷物を送ってきた。
1000ピースパズルの額縁くらいの大きさの長方形をした木箱で、ネジを外して蓋を開けると同じような表紙の本が20冊ほど。ぎっしりと詰まっていた。
どうやら日記のようだ。
一番古いもので日付は19年前。
故郷を分裂させた大規模な王位継承戦争が終わり、国民が悲しみと混乱に陥っていた絶望の時期。
もう19年も過ぎたとは時の流れは早いものである。
いつも便箋4枚ほどを使いぎっしりと書かれた手紙が入っている花柄の封筒は木箱の中には見当たらなかった。
時刻は午後3時。朝から机にかじりついて行っていた業務はきりのよいところで終わっていて急ぎのものではない。今日明日この膨大な日記を読み耽るのに時間を割いても問題はないだろう。
約20年分。本当は大好きな兄の人生の記録を1文字たりとも漏らさず記しておきたいところだが、なにせこの量のすべてを記録するには私の手首が持たないので1部抜粋をする形で残しておこうと思う。




