1.98 それからしばらく
そんなこと全然考えてなかったのですけどいろんなことがずいぶんと変わりました。
レストランが落ち着いてきたのでようやく宿泊業の方も始めました。マリーとミラは朝から掃除やらベッドメイキングやらで忙しくしています。ボクも拠点をこちらに移しました。
「メイクが落ちるから冒険なんかしたくない」と言ってラーナとノンナは冒険者をやめてしまいました。今は決闘の後で飲んでいたあの酒場で春を売るウェイトレスをやっています。
それからシーラがウエイトレスをやめてしまったので代わりに金髪を呼びました。中央広場の屋台が終わった後にホールに入ってもらうことにしたのです。こいつがいると女性客のウケが違います。ホテルを女性専用にしたせいでお客も女性中心なわけです。金髪目当てのお客が結構な割合でやってくるようになりました。あとついでに屋台の売り子たちもぞろぞろついてきてウェイトレスを始めたおかげで人手不足は解消されました。最初からこいつを入れればよかったです。
ミラはおばちゃんのところに養子に入る形で首尾よく市民権をゲットしました。
「ありがとうおばちゃん……お母さんって呼んでいい?」
「好きにしたらいいよ」
「大きな妹ができちゃった」
「よろしくね、お姉ちゃん!」
「そういえばおばちゃんのところの家族ってマリー以外にもいたのですか?」
「ウチかい? 亭主と子供が4人いるよ。亭主は肉卸の流通部門の責任者、長女は最初は屋台で一緒にやってたんだけど八百屋に嫁に行っちまってそっちで働いてるよ。長男は亭主と同じ肉屋に勤めてて、これが次女。一番下の子はブラブラしててねぇ。もう12歳になるってのに」
ウチの森だと1200歳でもブラブラしてますけどね……。
ミラは「数えられないんだけど、私って今多分毎日五メリダくらい収入があるんだ」と言いました。冒険者だった頃の十倍は稼いでいるでしょうね。
「私目標ができたの! 結婚なんかしなくても自分で家を買うんだ!」
カランカラン。入口のベルが鳴りました。お客さんです。マリーとミラは元気よく扉に向かいました。
「「いらっしゃいませー!」」
さあ今日もじゃんじゃん稼ぎますよー!