1.97 〇ーラとかシー〇ンとかあるよね
というわけでレストラン業のかたわらコスメ&メイク専門店の開店準備を進めました。物件を探したりアイテムをそろえたり、また他人へのメイクの技術を磨かせました。実験台は女冒険者たちです。
「ウソ……これが私……?」
「今までの私は偽物だったの……これが本当の私……」
「ムフフフ冒険者は鐘八つまで……それ以降はキラキラ女子に変身するの……」
鏡を覗き込んでナルシシズムにひたる女冒険者たちの姿は、気持ち悪いのを通り越して正直滑稽です。哀れですね。
「わーあんなに変わるんだー。すごいなー」
横から観ていた栗毛は無邪気に感動しています。
「あれに慣れちゃったらずっとむしられ続けることになるよね。カワイソ……」
赤毛はテーブルに頬杖をついて呆れ気味に言いました。
「お前はやらないのですか?」
「私ってメイクしてもあまり変わらないのよね」
エルフみたいな顔してますからねこいつ。
さて表通りに面した小さな空き店舗を借りてメイクショップがオープンしました。この世界で用意できるかぎりのファンデやら何やら、その他小物を取り揃えました。この町では化粧品は薬屋でついでのように売るもので専門店はまだなかったようです。お客の女たちは棚という棚を鷹が獲物を見定める目で漁っています。
またコスメを売るだけではなくお客にメイクを施したり、さらにアドバイスしてやり方も指導していたら、シーラのお店はあっという間にすっごい繁盛店になりました。ビックリですよ。町中の女たちが毎日開店前から列をなして並び、閉店まで人の姿が途切れることがありません。従業員を新たに5人雇って新進気鋭の女店主と成りおおせたシーラは今や町の女たちのカリスマ──いえ教祖様状態です。
すっかり左うちわになったシーラは森の妖精亭に自分のお金で飲みに来るようになりました。ミラの一人を捕まえて軽口を叩いています。
「あのエルフってぇ、性格は悪いけど、お金儲けは上手よねぇ。見た目は最高だし、背は高いし金離れはいいし、男だったらモテたでしょうねぇ。性格は悪いけど、男ならそれも魅力かも!」
いやボクは男なのですけど。