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1.94 レストラン・プレオープン

 案の定飲み過ぎました……。当分お酒は結構です……。



 ──あれから三日が経過しました。お店の改装は明日で終わり、接客の練習もお出迎えからお見送りまで進んでます。ミラは料理をサーブできるようになりました。ミラは。おばちゃんとカミラは料理の練習に余念がありません。ボクはプレオープンに向けて招待状を書きました。



『拝啓

 暑さもやわらいですっかり秋めいてまいりましたこの頃

 皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます

 さてエルフの暦では秋分の日は祭日です

 かねてよりレストラン「森の妖精亭」の新規開店準備をすすめておりましたが

 この度そのお祭りの日に合わせてお店をオープンすることとなりました

 つきましてはオープン前に日ごろからお世話になっております皆様に

 感謝の意を表しましてレセプションを開催したいと思います

 急なことで恐れ入りますがぜひご出席くださいますようお願い申し上げます

 敬具


 追伸・来ないと町が更地になるかも……?』



 プレオープンの日がやってきました。初日はいつもの議員とか各ギルドのマスターとか(一応クランのリーダーも)それから布問屋の社長とか出入りの業者の社長とか自警団長とか老法律家とか、町の名士で日頃お付き合いのあるところを招待しました。

 お客がぞろぞろやってくるのをマリーたちが次々と案内します。シーラが「あらシャチョウさん、お久しぶりですぅ」とか言ってるのは見なかったことにしました。


 お客の中にギルマスを見つけたので声をかけました。

「やあやあ、急なおさそいでしたのによく来てくれましたね!」

「だってお前、本当にやりそうで怖かったから……」

 と言いながら小さな花束をくれました。

 どうもこの町には開店祝いに花輪を贈る文化はないみたいですけどみんな普通に花束を持ってきましたので片っ端から壺に生けて飾っておきました。


 コース料理でもないですけど料理を順繰りに出すとおおむね好評でした。一番ウケたのは最後に出したオルドのお酒でしたけど。

「君っ、この酒は誰が作ったのか教えてくれたまえっ! 教えてくれたら三ツ星です、三ツ星をあげる!」

「ノン、教えられません……このお酒の秘密だけは……」

 でももちろん出所は内緒です。ドワーフで「修業したい」という者だけに教える約束になっています。


 二日目は屋台の店主たちを招待しました。こっちは人数が多すぎるので朝から順番に来てもらってバイキング形式で勝手にやってもらいました。厨房がヒーヒー言ってて全然間に合わないので仕方なくボクも調理に回りました。


 最終日にはビールやタバコの農家と、いつもの女冒険者たちを呼びました。本当はボクもそっちに混ざりたかったのですけどね、今日も板前の真似事です。ちなみにオルドも呼んだのですけどちょうどお酒の仕込み中で来られませんでした。残念。


 人混じりの悪いコビットたちは自分たちだけで集まって飲んでます。時々冒険者たちが絡みにいくのですけど、別に邪険に扱われるというわけではなくてもよくわからない方言が飛び交う中に一人で取り残されると面白くないようで、すぐに戻って来てしまいます。


 コビットの農家からカマンベールみたいな白カビチーズをもらいましたのでチーズフライを作りました。トマトソースをディップで添えて彩りにバジルを乗せます。

「チーズはこうやって揚げるのですよ、ノンナ」

「うまうま」

「たまには他の感想も言ってみてはどうですか?」

「だっておいしいんだもん」

「そう言われると弱いですね!」


 また赤毛のスープを下敷きにしてニジマスとトマトのクリーム煮を作りました。ニジマスの切り身に塩をして、清潔な布でくるんで二時間寝かせます。玉ねぎのみじん切りとあればキノコをバターで炒めて小麦粉をふりかけて、羊の乳とブイヨンと塩を加えます。ちなみにブイヨンもフォンも仔羊から取ることにしています。仔羊の屋台から始まったお店ですので仔羊のメニューも多いのです。湯剥きして刻んだトマトと炭火で炙ったニジマスを入れて乳がトロリとするまで煮詰めます。

 お皿に盛りつけて刻んだパセリを散らしてできあがり。

「あのスープをこうするのは骨が折れましたよ」

 と言いつつ赤毛の前にお皿を置きました。するとクリームを口にした赤毛は瞳をうるませてか細く「お母さんの味だ……」なんて言うものですから、ボクは思わずその顔をガン見しました。


「えっ?」


 いやお前が作った母親直伝のスープって全然違う料理でしたよね?

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