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1.93 この世界の形について②

 今日も泊まっていくことにしました。今度は飲み過ぎないように注意しませんとね。


 先日の肴はドワーフの歴史でした。ミスル鉱山が陥落したあたりまでの話は記憶があります。あります……?

「ミスルと言えばな、これはやっぱり返す」

 オルドはふたつのガラス瓶をボクの前に置きました。ボクがあげたワインの瓶です。

「お前な、こういうものを軽々しく持ち出すもんじゃないぞ」

「あげたもの返せとは言いませんよ」

「そうはいかんだろう、こんな貴重な物を……」


 ミスリルとかオリハルコンとかはボクたちの定義で『物質態波動』というエネルギー状態です。金属のようにふるまっているだけで実際には原子の集合からなる通常の物質とはまったく異なる存在なのです。ミスリルなんて元素は周期表のどこを探してもありませんものね。

 ミスリル・オリハルコンは原子物質ではありませんので電子を持ちません。なので電気も熱も通しません。光も全部反射するので純粋なミスリル・オリハルコンの色は白または鏡のように輝きます。熱を通さないということは加熱によって変形させることができないということです。加工には魔法を使うしかありません。ミスリル・オリハルコンを取り扱えるのはエルフとドワーフ、冶金の神の加護を受けたごく一部の人間だけです。


 ミスリルもオリハルコンも非常に軽いのでマントルの中ですみやかに上昇し、そのすべてが地表付近に他の金属との合金の形で存在すると考えられます。しかし気への応答性の違いのためにオリハルコンは比較的固まって浮上したのに対しミスリルは地表全体にほとんど均一に分布しています。「海水全部から金を抽出したら50億トンになるけど海水が多すぎて実際には不可能」みたいな話で、地殻全部をさらえばかなりの量になるのでしょうけど、実用的ではありません。

 この地上でミスリルをまとまった形で産出するのは世界中で南大陸のミスル鉱山のみ、しかしそこは地の底から溢れ出した魔王だかなんだかに占拠されてもはや採掘することができません。ミスリルは現在流通している量より増えることのない超希少金属 (っぽいもの)なのです。


 まあエルフが本気を出せば魔王の一匹や二匹問題なく駆除できるとは思うのですけど、ボクたちは1000年も前に小惑星帯で発見した巨大なミスリル鉱石群を持ち帰ってますからね。随分使ったはずですけどそれでもまだ人間世界の流通量の推定5倍以上が在庫として残っています。仮にこれがなくなっても海底にもう一つの(おそらくこの星最後の)ミスリル鉱脈を発見済みです。あと【ミスリル創造】という魔法を使えるエルフもいます。例えばクリスとかです。そもそもボクたちって大抵のことは自前の魔法でできてしまうので、わざわざミスリルを使う機会ってあんまりないのですよね。つまりボクたちは特に困ってませんので放置しています。


「いいから使ってくださいよ。エルフはミスリルってあまり使わないのです。ドワーフの方が有効活用できるでしょう」

「どうしたもんかなあ……」

 オルドは飲みながら頭を抱えてしまいました。


「実際のところドワーフってミスリルをどう使っているのですか? 武器ですか? ボクたちはプラズマ封入容器や宇宙船の外殻に使ってますけど」

「防具だな。気への応答性の違いはわかるだろう」

「ええ」

 気を通した時ミスリルはそのすべてを吸収して運動量に変えます。オリハルコンはそのすべてを放出します。このふたつの物質態波動はよく似た性質を持っていますが、およそ気への応答性に関してだけは正反対の挙動を示すのです。

「ミスリルを剣に使うと流星剣ができなくなるのだ。全部吸収してしまうからな」

「言われてみればそうですね」

「武器にするのはオリハルコンだな。一方鎧にミスリルを使うとな、ただでさえ軽い上に気を受けると鎧自体が推力を発生してくれるのだ。魔法も通しにくいしな」

「なるほど」

 ミスリルは軽くて、堅牢で、その上金銀よりも美しく光り輝くので装飾性もバッチリです。


「かつては総ミスリル製のきらびやかな鎧に身を包んだドワーフの戦士団が戦場を闊歩したと聞くが、もはや夢また夢の光景だな」

 オルドは遥か彼方を見つめてため息をつきました。


「いやしかし、久しぶりにこんな話をしたわい。お前さんは話がわかるが、人間には何故か理解できんのよ」

「何がです?」

「原子のことも素粒子のことも知らんし、ミスリルがそれらとはまた異なる理屈でできとるということも理解せん。まあワシらは子供の頃から物質については教え込まれとるが、人間はそうではないからのう」

「一から教えたらさすがに理解するのではないですか?」

「それがなあ、ワシらの祖先が中央大陸に進出したとき人間の鍛冶屋も大勢弟子入りしたそうなんだが、どんなに教えてもついにワシらの話を理解できた者はおらんかったそうだ」

「うーん、それじゃもしかしたら神の認識阻害効果によるものかもしれませんね」

「なんじゃそれは」

「ほら、神様って自分が加護を与えた相手以外は見向きもしないじゃないですか。それでどうやら加護を持っていない相手が自分の奇蹟について知ることを嫌がるらしいのですよ。例えばこの宇宙はおおざっぱに光学的あるいは重力的手法で観測できる物質、まあバリオン物質と呼びましょうか。それとミスリルやオリハルコンのような非バリオン系、それから魔法的手法を用いなければ観測できないmerica estla、という3つのエネルギー形態で構成されています。エネルギー量としてはバリオン物質よりmerica estlaの方がずっと多いです。さて、この宇宙は活力のある宇宙ですのでこれらのエネルギー形態は頻繁に交換されます。宇宙空間では気がvastに、あ、vastも非バリオン系の一種です。vastが光子にとコロコロ入れ替わっているのですね。ナノ秒以下の単位で。稀に質量を持つ状態になっていることもありますけど、この一瞬だけ現れる質量はバリオン物質より2倍近く多いのですからmerica estlaがいかに多いかわかるでしょう。自然状態ではこれらの入れ替わりは無秩序に行われますけど、これを意識的に行使する手段がすなわち魔法です。つまり上位存在の観測者効果による交換制御や現象操作が魔法の根源になっています。さてここからが本番です。魔法を行使するには絶対に魔力が必要ですが、では魔力とは何でしょうか? それはmerica estla以前の形を持たないエネルギー、つまり■■の■■る■■■■のエネルギーです。ではそのようなエネルギーはどのようにしてもたらされるのでしょうか。いかにして■■に■を■■■ばよいのでしょうか。ボクたちはその答え、■■を■■■■■■■を知っています。■です。魔力とは■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■です。つまり■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■が魔力と魔法というわけです。──今のお話どこまでわかりました?」

「いや……言葉の意味がわからんところもあったが、それより最後の方はノイズがかかったようになって聞き取れんかったぞ。脳が理解を拒んだ感じだ」

「これが神の認識阻害効果です。ドワーフの鍛冶って絶対魔法が入ってるでしょう? それで加護を持たない人間が学ぶことを邪魔したのではないでしょうか」

「なるほど。あり得そうな話だわい」

設定は基本的に後付けです。

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