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1.86 仔羊の辣子鶏もどき

 バーンと扉を開けてミラが帰ってきました。

「私が一人死んだみたいだけど! 何があったの!?」

「ラーナにやられました……クッ、むごい死にざまでした」

「ええっ!?」

 目頭を押さえながら指さした先には──


「うまうま」「うまうま」


 なんということでしょう、そこにはトウガラシをむさぼり食う冒険者たちの姿が……!



 それはともかくこのアホタレさんのおかげで思い出しました。前世のボクが大好きだった『辣子鶏』を。と言ってもここには鶏肉もネギも花椒もありませんのでこの地方風にアレンジすることにします。え、辣子鶏を知らない? 検索してください。


 厨房に移動して料理開始です。ところでこの世界にはガスコンロなんてまだありませんので、ここでは台に溝を切って炭の量で火力の弱いところ、中くらいのところ、強いところを傾斜的に作って調節しています。

 このお店は元々仔羊の屋台から始まったことですし仔羊の肉で代用しましょう。仔羊の肩ロースを2cm角くらいのぶつ切りにします。表面に軽く塩胡椒をまぶします。ここには胡椒はありませんので今日は我慢ですけど。フライパンにヒマワリ油を厚さ5mmに入れて中火で熱します。肉に片栗粉をまとわせて、時々ひっくり返しながら弱火でじっくり揚げ焼きにします。火が通ったら取り出して、弱火のまま同じ油で今度は薄切りにしたニンニクとトウガラシを炒めます。トウガラシをドサーッ! っと入れると見ていたミラが悲鳴を上げました。


「うわーっ! 待って! 待って! そんなにトウガラシ入れちゃうの!?」

「このくらい入れないとおいしくないのです、この料理は」

 今のボクが食べたら多分死にますけど。

 ニンニクに火が通ったら一気に仕上げます。フライパンを強火のところに移して肩ロースをフライパンに戻して一気に炒め合わせて塩で味を調えて彩りにバジルを散らしてできあがり!


「さあ召し上がるがいいです」

 大きなお皿に盛り付けてテーブルに置くと、おばちゃんたちは油にまみれトウガラシに埋もれたお肉を恐ろしいものでも見るような目で眺めました。


「え……これ、食べられるの……?」

「トウガラシは食べなくてもいいのです。お肉だけ探して食べてください」

 ボクはお肉も食べませんけど。

「うーん、じゃあここはリンスちゃんを信じて……辛っ! でもうまっ!」

「いい感じに辛い!」

「これめっちゃうまっ! マジパネェ!」

 概ね好評でした。ラーナは「ビールが進むわこれ」とトウガラシをおつまみにしてましたけど。そのビール厨房から勝手に持ってきましたね? まあいいですけど、そんなの食べたら後でトイレが大変じゃないですかね……。


「これ、何て料理なの?」

 と聞かれましたけれども、料理名は……どうしましょうね? この世界の言葉に中国語が馴染まない上にもはや辣子鶏の原型がありません。どちらかというと仔羊の肩ロース炒めペペロンチーノ風ですよねこれ。

「そうですね……人間の言葉でtil-til-zeel、辛々羊でどうでしょうか」


 その後調子に乗って辛い物シリーズをいくつか作りました。川エビのニンニクトマトトウガラシ炒め(イーデーズ風エビチリ)とか。味見してないのでお味のほどはわかりません。

「うーん、辛い! 辛いけど、どれもこれもおいしいねえ。知ってる味なのに初めて食べる味だわ」

「それはなじみのある食材を知らない調理法で作ったからですね」

 これなら人間でも拒絶感なく食べられるでしょう。

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