1.70 夜の帝王
「シラードさんの、ちょっといいとこ見てみたい!」
「ほらイッキ! イッキ!」
コールに煽られて、ゴッゴッゴッと景気のいい音を立ててヒヒジジイがビールを一気飲みしました。プハーッと息をついたのはヒヒジジイこといつもの議員です。
「キャー、市長さん素敵ー」
「ワハハ、まだ市長ではないがな」
「もう、ご謙遜ー」
「みんな噂してますよー、次の市長はシラードさんしかいないってー」
「市長さんになってもご贔屓くださいねー」
「よっしゃよっしゃ!」
議員はガハハと声高く笑いました。
今日は酒場を一つ借り切って例の議員をはじめとした派閥の一党の接待です。ガンガン儲かってますからね。ジャブジャブ献金してます。お金をあるだけバラまいて近所の酒場から見知った綺麗どころを集めて、議員とその手下たち一人につき二、三人が水割りを作って飲ませて体をぴっとり密着させてます。杯盤狼藉バンザイワッショイです。
「ありがとうございましたー」「また来てくださいねー!」
女の子たちが並んでお見送りです。
議員一党にはお酒を飲ませてご飯を食べさせて女の子におだてさせておみやげに山吹色のおまんじゅうを持たせて帰しました。議員はすっかり上機嫌で、これ以降はどんな陳情も通らないということはなくなりました。
暴力団も半グレも暴力と恐怖でがんじがらめにされて身動きが取れません。冒険者ギルドは味方、自警団は怯えてますし市議会は骨抜きです。
もうボクに逆らおうとするものはいません。ボクはイーデーズの夜の闇を支配するようになっていました。
何もかもがうまい具合に回り始めましたね。これもすべてヤクザの組を潰したおかげです。
やはり暴力……! 暴力は全てを解決します……!