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1.53 市場で買い出し

 街道をそのまま進めばやがて中央広場に行き当たります。広場の真ん中には日時計と鐘楼があって町に時刻を告げています。ここは北半球ですので日時計の数字の並びはいわゆる時計回りです。広場には他に目立つ建物は何もなく、周囲のぐるりの建物ばかりが目立っています。


 もっとも今日はそこまでは行きませんけどね。町の入り口と中央広場の真ん中くらいを南側に入った通りが市場通りです。この辺りは主に食品を取り扱う店が多く、屋根と柱と商品だけのシンプルな露店がどこまでこっちのお店でどこからあっちのお店かわからないほど引っつき合って肉やら豆やら野菜やらを売っています。ただ何故か外の屋台みたいに調理したものを売っているお店はありません。


 肉屋ではやはり豚肉とラム肉を売っています。切り取っての量り売りです。少し前の時期まではまだお肉はそのまま並べられていましたけど、だんだん暑くなってきたこの頃は冷凍の魔法をかけて保冷箱に入れられています。魔法をかけるのにお金を取られるのでその分お肉も高くなっています。

 豚は町から出る残飯を集めてエサにしているせいか肉に臭みがあります。生産量は多く、価格は安いです。仔羊の方が上等な肉の扱いですね。広い湖を利用してアヒルの生産もさかんです。

 そして生肉よりも加工肉の方が品数も量も多いです。ソーセージやハム、燻製肉ですね。ソーセージとジャガイモが庶民の日常の家庭料理だそうです。ドイツでしょうか? 豚肉は燻製肉の方が臭いが隠れていいみたいです。ソーセージにする場合はハーブを混ぜ込んでごまかしています。


 何でも売っているお店というのはなくて多くて3種類くらいの商品しか置いていません。ただし量がすごいですけど。たとえば目の前の唐辛子の屋台は本当に唐辛子しか売っていませんが、青いのや赤いの、長いのや短いのと種類だけは何種類もあります。それら数々の唐辛子がそれぞれ大ざるいっぱいの山積みになっています。

 ジャガイモの屋台はジャガイモだけですが品種がぱっと見でも八種類はあります。今はちょうど春ジャガイモの収穫時期ということもあって多いのでしょう。この辺りの主要作物はジャガイモだそうですがそれは元々この東大陸原産の作物だからなのでしょうね。周辺地域からはアイダホか栃木のような目で見られているに違いありません。


 ちなみにこの世界では小麦を始めとした穀物は南大陸原産です。この国では例のスズナーンとかいう町を中心とした地域が穀倉地帯になっているそうです。小麦は質でも量でも価格でもスズナーン産に太刀打ちできず衰退し、今では大麦が細々と作られているだけだそうです。その大麦もほとんどはビール用なのだとか。前にも言いましたけど小麦はすべて輸入品で、小麦粉とそば粉の値段が変わりません。


 土地が痩せがちで穀物はあまり生産していないというのも前に聞きました。オーマの森はあんなに豊かなのに、ほんの数十キロ離れただけで随分と違うものですね……と思いましたけど、考えてみたらボクたちは五万年もかけて土地の改良をしてますからね。隣接してても別世界です。

 あとはトマトとかセロリとかニンジンとかも売ってます。品種改良が進んでないみたいで前世のより小ぶりですけど。


 こういう前世と同じ様な野菜もありますが見たこともない野菜もあります。このムルアカとかいう緑の棒みたいなのは何なのでしょうね……。

 それと豆が多いですね。そら豆やレンズ豆、ガラス豆、ひよこ豆に混じって大豆と似ていますけど大きさは半分くらいの豆が売っています。ウマ豆という名前です。うー、クミンがあればチリコンカーンができますのにー。


「よそ者は『飼い葉食い』なんて笑うけどねぇ、ちゃんと料理すればうまいんだよ!」

 なんてそのウマ豆を指さしながら店主が力説してました。聞いてみると馬の飼料は普段は牧草ですが移動中はこの豆を煮たものが主流みたいです。どうやら他所の地域では馬用の豆と人間用の豆は分けられているのにリノスではどちらも食べるので『飼い葉食い』と言うのがこの地方の人間を表す蔑称になっているようです。それはどうでもいいのですけど味噌っぽいもの作れませんかね……でもこの辺りに麹菌がいるのかどうか……。


 挽いていない蕎麦を売っています。燕麦も多少は売っています。量は少ないですけど地元で生産された菜種油も売っています。岩塩が取れるそうで塩は安いです。屋台中に岩塩を積み上げて量り売りしてました。パンはこういう日常で食べるものよりはちょっと高級みたいで表通りのお店に行かないと売っていません。

 食品は量も種類も文明の発展の水準と比べて豊富なように思います。この世界って前世より温暖なせいかどうも食料に困ってる節がないのですよね。

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