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1.43 エルフの料理は魔法です!カカカ──ッ

 人数もいることですし残りのお肉を全部使っちゃいましょう。


 というわけで残りの鹿肉を全部と豚の脂身を【実験室】に投入し、魔法でまとめてミンチにして、さらに玉ねぎのみじん切り、パン粉、卵、バターとこね合わせて今度は円盤型に成形して、また63℃で30分(現実で一分)加熱、表面を170℃で焦がします。

 ここでアイテムボックスからハンバーグを取り出します。魔法で宙に浮かせたハンバーグをボクの周りでクルクル回して目視で焼け具合を確認します。クルクルクルクル回します。ん、こいつはちょいと焼きが甘かったですね。もうちょい焼いときましょう。

 魔法で熱と形と衛生状態をキープしたまま空中に保持して、加えて今回はさらにチーズを使います。町で売ってた濃厚な羊のチーズをとろける寸前まで魔法で加熱、魔法で贅沢に厚切りにしてハンバーグの上に乗せてやります。その上に薄切りにした玉ねぎを水にさらしたものを乗せます。

 これまで食べてきた感じこの町の住民が一番よく使っているのはマスタードソースみたいですので、おっちゃんの屋台のマスタードソースをもらってさらにその上から掛けます。なじみの味をちょっと加えておくのが田舎者の味覚をくすぐるコツです。

 そしてパンです。売ってた中で一番柔らかかった丸パンをバンズにしましょう。と言っても数が全然足りませんので【複製】の魔法で増幅します。この町ってパンがちょっと高いのですよね。リノスでは小麦を作ってなくて全部輸入なので。庶民にとってはぜいたく品です。柔らかいパンなんて数も少ないですし一個が四分の一銀貨二枚もしました。安いパンの二倍です。

 【実験室】に手持ちのパンを全部突っ込んで、他のパンを素体にして分解、分子レベルでコピーします。ボックスの中には丸パンがひとつ、ボックスを叩くと丸パンはふたつ。叩いてみるたびパンは増えます。手パン錬成パパンがパン、パンパカパンのパンのパーティー開幕です!

 という感じで人数分まで増やしたパンを魔法で真っ二つにして取り出して、ボクの周りを回転し続けているハンバーグとチーズをそのパンで挟んでやります。目の前に来たハンバーグを上下からバンズでサンド、目の前に来たハンバーグを上下からバンズでサンド、目の前に来たハンバーグを上下からバンズでサンド……。

 この工程をひたすら繰り返してきっかり三分。完成した百個のハンバーガーをアホウドリみたいにポカンと口を開けて見守る連中の手元に魔法でデリバリーしてやりました。


「さあ食らうですボクの新作『鹿肉ハンバーグのとびきりチーズサンド』を!」


「「「「「それでは……いただきます」」」」」

 冒険者も屋台の店主たちも一同一斉にあんぐり口を開けてかぶりつきました。


「「「「「ギャー!」」」」」

 直後にあちこちから悲鳴が上がりました。Why?


「う、うまいー!」

「うますぎる……」

「こ、こんなうまいものがこの世にあっていいのか……!?」

「そんな大げさな……」

「いやマジでうまいッス」

「チーズと肉が……チーズと肉が……口の中でとろけて……アーッ!」

「今まで生きて来た中で一番うまい……」

「この程度のものでよかったらいくらでも作れますよ」

 これってエルフの基準では料理の範疇に入りませんからね。カルスがやってるような本当の『魔法』がエルフの料理であって。あれ何をどうやってるのかボクにもさっぱりわからないのですよね……。


「その顔に加えて料理もできるのか……お前冒険者なんかやる必要あるのか? どこでも嫁に行けるぞ」

 なんてクランリーダーが指を舐めながらいうものですから思わず顔をしかめましたね。

「嫌ですよ、何で嫁になんか行かないといけないのですか」

 ボクは男ですのに。そしたら突然横からラーナが抱きついてきました。

「じゃあ私がリンスに婿入りする! 結婚して!」

「もっと嫌です。何でお前なんかと」

 だいたいエルフに結婚と言う風習はないのです。

「もう冒険者なんかヤダヤダー! 毎日おいしいもの食べて酒飲んで寝て暮らしたいのぉぉぉ!」

 ラーナは地面の上に大の字になって駄々っ子みたいにジタバタしてます。耐えがたいほど見苦しいのでハンバーガーをもう一個口に突っ込んでやりました。

「ちょっと黙るがいいです」

「……おいしい」

 ラーナは涙を流しながら黙々と食べました。


 うーん、しかしこいつらのこの反応……。日本のことを後進国呼ばわりしましたけど、考えてみればここってれっきとした後進国ですものね。楽しみと言えば酒と博打と買春くらいしかないという。これはもしかしたら売れるかもしれませんね。



 ところで後でインスタにレシピをアップしたところ料理狂いのアレから長々と指導が入りました。うるさいですね……。

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