1.35 ゴブリンの巣
下をのぞき込むと広場になっていました。どうやら木を切り倒して作ったようです。ブサイクな子供ゴブリンたちが十匹も奇声を上げながら裸で駆け回っていて、母親らしきブサイクなメスゴブリンが3匹その様子を見守っています。また身長180cmほどのブサイクなゴブリンが切り倒した木に石斧を叩きつけて薪にしています。あれはこの世界でいうところのホブゴブリンですね。ゴブリンソルジャーやゴブリンジェネラルなどと役割で呼ばれることもあります。
「おい、ホブゴブリンがいるじゃねぇか!」
「まずいな……」
二人は何だか慌てた様子です。ホブゴブリンがいるってことはそこそこ大きな規模の群れが成立してるってことだからでしょうか? ボクたちにとってはゴブリンなんて生まれたての赤ちゃんが振り回しておもちゃにする程度の雑魚です。そんなに警戒するような相手ではないのですけど……エルフと人間だと生物として立っているステージが違いますからね。この世界の人間は成人男性が身長160~180cmくらい、ゴブリンは120~130cmと小柄ですが腕力はその成人男性と同程度です。確かに人間の女子供には侮れない相手かもしれませんね。
「一応洞窟の構造だけ把握しておくぞ」
そう言って地面に両手をつけた冒険者A君は地下に向かって何やら魔法を放ちました。
「……入り組んだ洞窟だな。多分ダンジョンアリが掘った跡だ。総延長は180エルク(※540mくらいです)、大きな空間もいくつかある」
「俺たちだけで中を偵察するのは無理そうだな」
「ああ、地形の問題だけじゃなくゴブリンが何匹いるかもわからん」
「ホブゴブリンがいるぐらいだからな。4、50匹はいてもおかしくない」
「よし、撤退しよう」
「えー? せっかくここまで来たのですから鏖殺してやりましょうよー」
「無理だって言ってるだろ!」
と言うのを無視してまずは【走査】の魔法で洞窟の中を調査します。
「ふんふむ……。確かにあちこち枝分かれしてますね。いくつもある行き止まりのところを小部屋にしてぎゅうぎゅう詰めで暮らしてるみたいです。ひいふうみい……えーっと、全部で228匹います。そのうち大きいのが19匹、数から見てジェネラル級も混じってるかもしれません」
「何でそんなことがわかるんだ!?」
「魔法で調べました」
「わかるのかよ……」
「俺いらなくね?」
「お前が役に立ってるかどうかはともかく数が多すぎないか? ヤバイぞこれ」
「ですかねぇ。ゴブリンなんか200匹が200万匹でも大した問題じゃないと思いますけど」
「いや大した問題だろ」
「俺たちに何とかできる数じゃない。早く帰って報告しよう」
さーて、どうしましょうかねぇ……。
ちょっと思案に暮れます。「できるか?」というのは問題ではありません。ゴブリンの位置は全部わかりましたのでこのまま魔法で皆殺しにするのは赤ゴブリンの手をひねるより簡単なことです。
問題は「どうやるか?」です。どうせなら芸術的にやりたいわけですよ。
うーん……。