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1.30 踊り踊るなら

 さてさて、お金はきっちり頂いたので今日も宴会です。昨日よりさらにさらに人が増えています。冒険者どころか関係者じゃないのまでいます。どこかの店の店番とか、飲み屋のお姉ちゃんやいつかの屋台のおばちゃん(子羊の串焼きの店のです)までいます。どういうつてで呼んで来たのでしょうね?


 ラーナが顔をしかめながらこめかみをぐりぐり揉んでいました。

「うう、頭痛い……」

「二日酔いですか?」

「二日酔いというか三日酔いというか……。でも酒飲めば治る!」

「それ麻痺してるだけなのではないかと思いますけど」

 完全にアル中じゃないですか。


 酒場は女ばかりの貸切状態で酒場のウェイトレス(要するに街娼のお姉ちゃん)まで一緒になって飲んでいます。まあ今日は買う人いないでしょうしね。ウェイトレスはコップを両手で持ってコクコクと飲んで、ほぅと小さく息をつきました。さすがに女オークとは色気が違います。

 一緒に飲んでいた屋台のおばちゃんが目頭を押さえながら言いました。

「この子、うちの近所の子なんだよ。お父さんが病気でねぇ。いい人がいたんけど王都に行っちゃって……。介護があるからついていけなかったんだよ」

「昔のことよ。今はこんな仕事だし……」

「ごめんねぇ、あたしの屋台がもうちょっと儲かる仕事ならねぇ。あれじゃ薬代出ないもんねぇ」

「おばさんが気にすることじゃないわ。ま、向こうもこっちのことなんか忘れて楽しくやってるでしょ」


 ウェイトレスの事情はともかく王都ですか。そんなのあるのですね。まあ考えてみたらここってなんとか王国とかいう名前でしたものね。そりゃ王様もいますよね。

「王都なんてあったのですね。知りませんでした」

「王様がいらっしゃる町さ。会ったことも見たこともないけどね」

「ここからじゃ半月以上かかるもの。夢みたいに遠いわ」


 毎日こんなことしてると段々時間の感覚がわからなくなってきました。女冒険者たちはいつも通り酔っ払って大声で歌ってます。ギルドの職員たちも混ざってます。赤毛は酔い潰れて泣きながら寝てます。栗毛は何故か店員に混じって厨房と行ったり来たりしてます。

 ラーナが突然脱ぎだして、胸をブルンブルン振るわせて踊りだしました。ところで今更気づいたのですけどこの世界って下着なかったのですね。いやチンピラはパンツ履いてましたけど少なくともブラジャーはなさそうです。こいつはさらし巻いてました。

「飲んで踊ったら酒が回るのではありませんか?」

「簡単に酔えて、けいざいてきぃー」

「いやお前は酔ってもまだ飲むでしょう」

「うへへ」

 ラーナは踊りながら答えました。この国の民族の踊りなのか、スキップみたいに跳ねながらくるくる回って、手を叩いて開きます。パンパン、パッ。胸が揺れます。パンパン、パッ。おっぱい丸出しです。ノンナとミラも服を脱いで合流しました。アホですね。

 しかしあんなにふらふら酔ってても案外器用に踊るもんです。


 踊りだしたアホを見て踊るアホウがどんどん増えていきます。冒険者は全員踊ってます。受付の若いのも踊ってます。屋台のおばちゃんが大きな体をゆっさゆっさ揺らしながら踊ってます。テーブルとイスをガタガタどけてスペースを空けて、参加者がどんどん増えて円を描きました。まあトップレスで踊ってるアホは三人だけですけど。

 盆踊りなのかインド舞踊なのか、くるくる回りながらさらに輪になって回ります。踊ってないやつは歌いながら手拍子で音頭を取っています。


 ……同じアホなら何とやらです!


「こうですか?」

「そうそう、上手上手!」

 真似して一緒になって踊ります。


 宴会は朝まで続きました。

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