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3.25 スズナーンの幸福な一年間

 この世界は気候が温暖かつコビットたちがせっせと品種改良した成果もあって毎年豊作です。単位面積当たりの収穫量はさすがに前世よりは少ないみたいですけど、それでも中世ヨーロッパの「麦一粒から麦五粒」ほど悲惨ではなくて二十粒くらいはできるみたいです。大変に気候に恵まれた今年はさらなる収穫が期待できます。


 八月。収穫の月です。

 案の定大豊作でした。小麦の卸価格は一グライン(一・八キログラム)が銀貨二枚と銅貨二十六枚と、平年より値下がりしています。そこをボクは銀貨二枚と銅貨四十枚、平年以上の価格で買い付けましたので問屋はエビス顔です。

 ボクたちが問屋の担当者と小麦の受け取りについて話しているのを見て、トレーダーたちは積み上げられた小麦の袋の陰で笑いながら話しています。

「はは、あいつバカだな。この豊作時にあんな高値で買いやがった」

「やっぱりエルフに商売は無理だな!」

「まあそういうなよ、いいお客さんじゃないか。せいぜい屋台で儲けた金を吐き出してもらおうぜ」

 聞こえてますよ、エルフは耳がいいのです。


 その場で来年の麦を買う契約もしました。

「来年は取り返しますよー!」

 ニコニコしながらそういうとトレーダーたちはやはりニコニコ笑いました。『この素人が』なんて考えてるのがニコニコ笑顔の裏に透けて見えます。

「来年の小麦は一グラインを二プライドル五十アントで買います」

 ニコニコニコニコッ! 男たちの笑顔が加速しています。


「それとですね、ちょっと変わった契約なのですけど、この小麦を買う権利は売買できることにしたいのです」

「と、おっしゃいますと?」

「なにしろ契約した量が多いですからね。まあないとは思いますけど、もしかしたら、万が一にもボクの小麦を分けて欲しいと思う人がいるかもしれません。そういう人に譲ってあげるときのための取り決めです」

「なるほど。よろしいでしょう」

 契約書に次の一文が追加されました。『この小麦を買う権利は小麦一グライン分を一メリダで売買できるものとする』と。平年相場の約十倍です。


「それから違約金についても定めておきましょう。つまりボクが買えない場合、あるいはお前たちが売れない場合の取り決めです」

 これも『この小麦を買う権利は小麦一グライン分を十メリダで契約破棄できるものとする』という一文が追加されました。平年相場の百倍です。


「あとは、そうですね……。一応ですけど、保険をかけておきましょう」

 今度は『もし不法行為があれば、小麦の売買価格は小麦一グライン分を百メリダとする』という一文が追加されました。平年相場の千倍です。

「これは『ボクは絶対にルールを破らない』という誓約です」

「いえいえ、そのようなことはなさらないと、もちろん信頼しておりますとも!」

 トレーダーたちは大喜びで契約書にサインしました。ボクも思わず顔が笑いだしそうになりました。


 だ……駄目です、まだ笑うなです……。こらえるのです……。し……しかし……。


 契約を済ませて外に出ると、エリーは待ち構えていたように言いました。

「来年の小麦を買う約束をすることはあるけど、小麦を買う権利を売買するなんて聞いたことがないわ」

「オプションと言うのです」

「ふーん。エルフの商売って進んでるのね」

 エルフの商売ではありませんけどね。異世界人はまだ先物取引も、その恐ろしさも知りません。


「『麦わら帽子は冬に買え』という言葉があります」

「何それ」

「麦わら帽子が必要なのは夏です。冬には不要ですから値段が下がりますよね? つまり『商材は需要のないときに買って需要のあるときに売れ』という意味です。そして冬も夏も来ないなら自分で作ってやるのです」


 ボクたちは全ての問屋を回って同じ契約をしました。今年カモを演じたおかげでみんなホクホク笑顔でサインしました。


 種は撒きました。あとは収穫を待つだけです。




 九月に入ってすぐのことです。屋台に変な男がやってきました。尾羽打ち枯らしたという風体で、髪もボサボサなら髭も剃らず、服もシワシワなら襟も袖も汚れています。

「お、おい、あんた……何とかしてくれ!」

「誰です?」

 首をかしげてたらエリーが横から「覚えてない?」と言いました。

「ほら、レストランのシェフ」

「……ああ!」

 思い出しました。お客の前でウンコ漏らしたやつです。


「あ、あんたあの時俺に何かしただろ!? そのせいで俺は破滅したんだ!」

 頭を抱えてわめき散らす男の話はとりとめがありませんでしたが、要するにお客の前でウンコを漏らしたことで評判が悪くなった、それからホールに出ると恐怖で体が震えてお客の前に出られなくなった、おかげでお客が来なくなって潰れた──ということのようです。


「なんだ、自業自得じゃないですか」

「あんたのせいだろ!」

「お前のせいですよ」

「あんたが何かやったからだろ! な、なあ、治してくれよ。また料理人をやりたいんだよ……」

「お前みたいなサービス精神の欠片もない不適格者が? ハハッ、笑っちゃいますね。治せますけど、嫌でーす」

「……。ど、どうすれば許してくれるんだよぉ……」

「そうですね、ボクたちが最初にお前のお店を訪れたときに、いじわるしないで料理を食べさせてくれてたら許しました」

「……そ、そんな! そんなの、今さらどうしようもないだろ!?」

「お前、ばくちで負けて『今のはノーカンだから金返せ』って言って通用すると思いますか? 最初からやるなって話です。こぼれたミルクは盆に返らず、壊れた鏡は二度と光を照らしません。過去の失敗を取り戻す方法なんてないのです。謝っても怒っても嘆いても呪っても無駄です。お前はもう二度と料理人なんてできないのです。今からもう一度修業し直して別の道に進むことですね。……その年で」


 男の表情はもう取り返しのつかない過去への後悔に塗りつぶされていました。

 おー、見事な絶望顔です! これはもう芸術といっていいでしょう。この前のアサシンバーガーといい、ボクって現代アートの才能もあったようですね。マルチタレントすぎて自分が怖いです。


 こいつは見せしめのために放逐しましょう。

「さあ、帰るといいです」

 ボクは男と彼方に見える北門との間に【縮地】の魔法を設定しました。パン! と手を叩いた拍子に男は一歩下がり、その瞬間に北門まで移動していました。さらに今度はボクとの間に【延地】の魔法を設定します。これで二度と近寄れません。

 男は力尽きるまで門の辺りでジタバタしてました。


 ボクの人間相手の基本方針は、友好的な相手には友好的に。そうでない相手にはそれなりに。いわゆるしっぺ返し戦略というやつです。一度でもボクに敵対したなら絶対に許しません。




 十月頃からボクは小麦の購入を加速しました。

「あるだけ買います」

 まあ実際に必要なことは必要なのですけどね、必要以上に買い取りました。利益の大部分をつぎ込む勢いです。

「いつもありがとうございます!」

「こちらからも、是非!」

 問屋街の担当者たちの笑顔は輝くようでした。なにしろ大豊作でだぶつき気味の小麦を通常よりも高値で買い取ってるのですから。小麦問屋たちは押し売りの勢いで小麦の取引を持ちかけてきました。




 冬が来ました。冬ですけど、雪が降りません。ここは温暖化世界、この低地では夜間でも氷点下になることはまずないのです。

 それで唐突に全然関係ないことに気がつきました。この世界では小麦って南大陸、地球の反対側でコビットが発見したのです。その小麦の伝播は南大陸から中央大陸を経てこの東大陸です。

 ところで秋撒き小麦には春化という現象が必要です。冬に低温にさらされないと結実しないのです。多分秋撒き小麦は栽培の過程で赤道を超えることができなかったのでしょう。なのでこの東大陸で栽培されるのは春撒き小麦ばかりになり、できる小麦粉も強力粉ばかりになり、食事もパンばかりになったということなのです。順番が逆でした。


 農閑期の農民たちが小遣い稼ぎに鳥の捕獲を本格化させました。麦を刈った畑のあちこちに霞網が設置されました。これで小鳥たちがアホみたいに取れてます。


 ジャーン! ジャーン!


「サー!」「サーッ!」


 また落ち穂をつつくスズメの群れを物音や箒で追い立ててます。鍋釜を叩いて、から竿で地面を叩いて一か所に追い詰めて──

「せーのっ!」

 一斉に投網を打って捕まえるのです。まさに一網打尽です。


 鳥は在庫過剰なくらいで値崩れ気味です。安価で肉が手に入るということでスズナーンは鳥料理の町になりました。町中の料理屋がいろんな鳥の料理を作るようになってます。おかげでボッタクル商店も大変に繁盛してます。

 うちの屋台はエルフが店番をやっていますので燃料がいりませんけど人間のお店はそうはいきません。麦畑の彼方の木立が大量に伐採されています。これは同時に鳥の棲み家を奪うことにもつながっています。

 それとリノスのマトンが売れなくなって本格的に値崩れしてあっちの商人が困ってました。まあご愛嬌というものですよね?


 そして冬ですから──。

「クリスマスフェアをやりましょう」

「くりすます……とは?」

 エリーたちが不思議そうな顔で尋ねてきました。

「宇宙を隔てた南蛮国のイベントです。その国で崇められる聖人の誕生日で、みんなでお祝いするのです。フライドチキンは彼の肉、シャンメリーは彼の血です」

「えーっと、よくわからないけど、チキンを祭ってお祈りするの?」

「え? 食べますけど」

 答えると何故かドン引きされました。

「え……人の血肉に見立てたものを食べるんですか……?」

「人肉食の風習があるの……?」

「野蛮……」

 何だかとんでもない誤解をされているような気がします。

「まあそれはいいのです、とにかく何でもいいからイベントをでっちあげれば財布のひもが緩くなるのです。つまり商売のチャンスなのです!」

「でっちあげって言っちゃったよこのエルフ」


 南蛮で思い出しました。チキン南蛮も作りましょう。

 とにかくこのクリスマスフェア、何だかわからないけど鳥を食べるお祭りだということで商品を普段より割引して売り出したらお客が殺到しました。向かいのお店もフェアに便乗して鳥天の甘酢あんかけを始めてます。最終的には駐車場になってそうな迷走っぷりです。


「いやあ、この町は景気が良さそうですねぇ」

 旅の商人がフェア中の焼き鳥を食べながらそんなことを言いました。

「いえね、私は旅から旅のしがない行商人でして、ブラントとメルオートを行ったり来たりの生活なんですわ」

 ブラントは王都の名前、メルオートはここから見て反対側の国境の町だったはずです。

「まあいずれは自分の店を持ちたいと、そう考えておりまして。どこがいいかとこう、言い方は悪いですが品定めしているのです」

「ほほー。この町は候補になりますか?」

「メルオートとどちらがいいか迷うところですねぇ。私のような交易商にはメルオートの方がいいんでしょうけどね。あそこは政治も安定してますし、治安もいいですし。新参者にもチャンスがありますし。でもこちらも捨てがたい! 景気はいいですし、それにここって暴力団がいないそうじゃないですか! 加えて料理が安くて美味い点でこちらの方が上かもしれませんねぇ」

「王都はダメですか?」

 すると旅の行商人は一転顔を難しくして、その顔の前で手を小刻みに振りました。

「いやあ、あそこはいけません。人だけは集まってますけどね? 王侯貴族と銀行が結託してましてね。金利が凄まじくて、とてもじゃありませんが商売になりません。あそこで店を開いても借金の利子を返すために働くようなものです。物価が高いのも景気を反映してるわけじゃなくて金利分が上乗せされてるだけなんですわ。既得権益側はいいんでしょうけどね。それ以外の者は搾取されるだけですよ」




 冬の夜長にエリーとはずいぶん話をしました。お金の話ばかりだったような気もしますけど。

「……なるほど。つまり『金貨を主体とした経済は国家の金の保有量が経済活動の限界を決める』ということね」

「そうなのです。でも健全な国家であればいずれ経済の膨張が金の産出量を追い越します。そうなったときに金貨不足を補うために行われるのが改鋳です」

「ああ、この国でも一度やってるわ。金の含有量を減らして金貨の数を水増しするわけね」

「しかし国民からの国家への信用度が低い場合、金貨の価値を保証しているものは金そのものなのです。金の含有量を減らせば金貨の価値は当然落ちます。すると」

「インフレが起きる」

「その通りです。逆にですね……貨幣の発行主体の信用度が高ければ、金なんか含まれていないものを金貨と言い張っても通用するのですよ」

「……えー? そんなことってある?」

「人間はもうやってるじゃないですか。借金の証文ですよ。他人の借金の証文をお金の代わりとして置いていくことがあるでしょう」

「……ああ! 言われてみれば確かに! お金でないものをお金の代わりとして使ってることになるわね」

「人間はまだ気づいてないだけなのです。お金の価値なんてものはしょせん人間がそう思い込んでいるだけのものなのですから、誰もがそれに価値があると信じていればたとえ紙切れでもお金になるのです。そうですね、たとえばお前が裏付けとなる金貨を大量に持っているとしましょう。いえ、実際に持っていなくてもいいのです。誰もがそう信じていれば。そこでお前は借金の証文を発行します。その紙をお前のところに持っていけば貨幣と交換すると裏書きした証文を。その証文はすぐに貨幣の代わりとして使われるようになりますよ。紙切れが金の代わりとして」

「うわ……。信用があれば裏付けなしでできるってことは、それ実際の金の保有量を超えて発行できるよね? 発行者側は大儲けじゃない!」

「そうですね。そしてこれなら改鋳しなくても貨幣の流通量を増やすことができます」

「発行者は経済の支配者ね。インフレもデフレもコントロールできちゃいそう」

「一時はそうでしょうね。いずれ限界は来ますけど」

「なんでよ」

「だってこれって、というか経済ってある種の信頼を基盤としたシステムですのに、人間は欲望のために信頼を裏切る生き物ですし」

「くっ、否定できないわ」

「経済は人間の発明したものですのに、人間という種の持つ性質と合っていないのです。ですから人間の経済活動はいずれ必ず破綻します」

「種の持つ性質とか言われたらどうしようもないわ……。もう破綻を織り込み済みでセーフティをもうけるくらいしか対処する方法がなさそう。……もしもエルフやドワーフやコビットが経済活動の主体なら、経済の成長はゆっくりだけど、でもきっと線形に膨張を続けるでしょうね。私たちの経済は瞬間的に膨れ上がって破裂、停滞するということを繰り返してるけど」

「うーん……、ドワーフはどうでしょうね?」

「なんで?」

「それがですね、実はドワーフってギャンブルが大好きなのだそうです。ドワーフに経済をやらせたら人間がやるよりひどいことになるのではないでしょうか」




 春が来ました。春ですけど……なんとなく静かです。

 去年の今頃であれば外市の家の軒の下にはスズメがさえずり、ムクドリは群れをなして麦畑の上を鳴き渡り、空高くからヒバリの声が届いていたでしょう。

 でも、もうどこにも鳥の姿が見えません。町にも野にも街道にも、村にも川にも畑にも、どこにも鳥の声が聞こえないのです。


 沈黙の春です。

 鳥たちは冬を越すことができませんでした。


 鳥類の分布の空洞はスズナーンを中心に広がり続けています。この地域一帯から姿を消すのも時間の問題でしょう。


 コビットたちが慌てています。何が起こるか知っているようです。

「こ、これはヤバイヨ!」

「麦はアカン、麦は……」

「あの、一応造るけど、今年のビールは期待できんヨ?」

「そういう年もありますよ。小麦もやめた方がいいのではありませんか?」

「そうしとくワ」

「そうだ、虫よけ魔法は使えますか?」

「もちろんヨ」

 うーん……。

「……ではこれをあげましょう」

 ボクはアイテムボックスから大量のじゃがいもを出してあげました。

「種いもにするといいです」

「こ、これは助かるネ!」


 五月の終わりになりました。大麦の穂が案の定スカスカです。まだ収穫前ですが大変な不作の予想です。コビットたちはガックリきてました。

「じゃがいもにしといて正解だったワ……」


 ミルズにも忠告しておきました。

「今までどうもありがとうです」

「大したことはしとらんよ」

「お前にだけは教えてあげましょう。実を言うとこの町はもうだめです。突然こんなこと言ってごめんなさいです。でも本当です。これは引っ越し費用です」

「お、おう」

 包んだお金を渡すとミルズは首をかしげながら受け取りました。


「よかったらリノスに行くといいです。あそこは鉄は取れませんけど冒険者たちが良い武器を必要としていますので、仕事はいくらでもあります。それに酒造りの弟子も募集中ですからね!」




 六月の外市は騒然としていました。不審死が連続しているのです。

 外市も新旧の市街地に近いところは町並も立派です。それが町はずれに向かうにつれて家も人も貧しくなっていきます。

 一番畑との際となる貧民街ともなれば家の壁は土塗りです。ハテノ町なんてこの世の果てみたいな寒村でしたけど、あれよりさらに貧しげです。他所からやってきたけれども市民権も取れず、言うなれば「勝手に」住み着いているような人たちがその日暮らしをしているところがここです。


 その貧民街で辻斬りがあったのです。いえ辻斬りというか辻撃ちというか……。雷に打たれた男が道の真ん中で倒れ伏しています。

「どうしてこんなことに……」

「明日からどうやって暮らしていけばいいの!?」

 一見自然災害です。誰を責めることもできません。市民権もない不法就労者だったそうで市から見舞金のひとつもありません。家族は悲嘆にくれています。

「災難でしたね。これはわずかですけど弔慰金です。よかったらこれで故郷に帰るといいです」

「どこの誰だか知らないけど、ありがとう……」


 まあボクには犯人は一目瞭然でしたけどね。新市街地の壁の中にいる連中も知っているでしょう。

 あいつ、順調にエスカレートしてます。




 七月。この頃は一日数羽の入荷となっていた鳥がとうとうまったく取れなくなりました。町にも畑にも、もはや一羽も姿が見えません。

「皆さん、今までの勤務ご苦労様でした。これは退職金です」

「リンスさん……」

「名残惜しいです……」

「楽しかったよ、ありがとう!」

 鳥を全部捌き終わったところで加工所は営業終了です。従業員たちにはちょっと多めに、一年は遊んでくらせる程度のお金を包んで配りました。

「それはそうとひとつ忠告しておきます。一刻も早くこの町を出て引っ越した方がいいですよ」


 さーて、ここからは細密なコントロールが必要です。

 まずラーメン工場を閉鎖しました。屋台も順次閉店です。従業員たちにはやはり退職金を渡して、同じように警告しました。

 町の料理店には鳥肉卸を続けました。ただし供給を絞りながら。鳥肉の在庫を八月までもつように減らしていきます。

 そして在庫もなくなってしまったところで鳥肉卸業も解散です。ギルドに廃業届を出しました。




 ……やれやれ、何とかなりました。

 ボクはボクたちの事業の破綻と小麦の絶望的な不作とをメッシみたいな絶妙のロングパスで同時に着地させたのでした。

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