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3.14 新商品開発

 今のところは鳩や雉のような鳥を中心に、唐揚げと焼き鳥しか商品がありません。おかげでスズメのような小鳥の在庫が溢れそうなのです。

 というわけで今日はスズメ料理を考えることにします。


「はい、ではこちらに下処理の済んだスズメを用意しました。……これ、どう料理したらいいと思います?」

「自分でスズメ獲ってこいって言いだしといてノーアイデアだったの?」

「基本唐揚げのことしか考えてなかったもので……。とりあえず揚げてみましょうか」


 内臓を抜くところまで終わったスズメの全身をすりこ木でコツコツ叩いて骨を砕きます。唐揚げ粉をはたいて串に刺して揚げ油にドボンと入れてジュワッと丸揚げです。横に串を刺して翼を広げて火が通りやすいようにしましょう。

「できました。特に脳みそがトロリとして珍味らしいですよ? ボクは遠慮しときますけど」

「ええ……」

「私もちょっと食べたくないんですけど……」

 エリーもミリアも引いてました。姿揚げはこの世界の人間には受けが悪いようです。


「では原型をなくす方向で」

 スズメの頭と翼と足を切り落として、可能な限り骨を抜いて。残りを丸ごと叩いてミンチにします。はいチタタプチタタプ。臭み消しに行者ニンニクが欲しいところですが当然ありませんので代わりに玉ねぎのみじん切りとハーブを混ぜてつくね団子です。スープに入れたり、棒に塗り付けて焼いたり、いろんな調理法が考えられますね。

 とりあえず串に刺して焼いてみました。

「できました。試食をお願いします」

「うーん、味は悪くないけど、残った小骨がちょっと邪魔かな」

 口の中からポリポリ音がしてます。

「ではやっぱり揚げちゃいましょう。ミートボールです」

 タレは甘酢あんかけとトマトソースを用意しました。

「あ、これはいけるかも」

「私はトマトの方が好きです!」

 小鳥はまとめて団子にして揚げちゃうことになりました。


 まあスズメはまだいいのです。問題はこっちです。

「カラスかぁ……」

「これ、食べられるんですか?」

 台の上のカラス(処理済み)を見たエリーは腕を組みミリアはボクの後ろに隠れました。

 本当に困りものなのです。大量に獲れるのですけど、みんな気持ち悪がるものでこれもアイテムボックスにしまいっぱなしです。捌いてみたのですけどお肉の色が黒っぽくてやっぱり気味悪がられました。ミリアの腰が引けてます。

「これの焼き鳥は無理ですよぅ」

「やるだけやってみましょう」

 まずは焼き鳥です。焼くだけ焼いてみたのですけど、やっぱり色は今一つですね……。

「できました。多分焼けたと思います」

「これ、食べないとダメですか?」

「まあそう言わずに。みんなでせーので食べましょう。行きますよ? せーのっ」

 ……。

「うーん……」

「か、硬い……」

 どうやら火を通し過ぎるとすぐ硬くなるみたいです。鴨と雉の悪いところのあいの子ですね、これは。焼き物、揚げ物はちょっと向いてなさそうです。味が悪いわけではないのですけど……。

 レアっぽく仕上げればそこそこいけそうですけど、鳥の生はちょっと……。ローストにするか、鍋物にするか……。いえいえ、そもそも見た目が悪いのが問題だったのでした。では原型をなくす方向で、他に鴨と雉で共通した料理と言えば……例えばつみれとか……。


「!」

 思いつきました!




「できたぞい」

「さっそくですね! ありがとうございます」

 ミルズに道具を注文して次の日。さっそくそいつができあがってきました。ミリアは新しい器具を珍しそうに見ています。

「これ、何の道具ですか?」

「たこ焼き器です」

「タコ?」

「カラスですからカラ焼きとかですかね」

 たこ焼きのカラス肉バージョンを作ることにしたのです。カラスのお肉をミンチにしてタコの代わりに使うだけです。硬いお肉はミンチにすると相場が決まってますからね。それに小麦粉で包んでしまえばお肉の色も見えません。


 では作りましょう。まずは生地です。小麦粉、卵を水で溶きます。天かす(これ専用でわざわざ作りました)と、例によってねぎも生姜もありませんのでニンニクのみじん切りを揚げたものを代わりに入れます。味が出るようにカラスのミンチはたっぷり入れてやりましょう、たっぷりと。ミンチ同士が引っ付かないように泡だて器でよく切ってやります。

 たこ焼き器に油を引いて生地を流し入れます。お、固まってきましたね? では生地を切り放してひっくり返しましょう、手際よくカカカカカカカカッと!

「わ、速ーい!」

 たこ焼きをひっくり返すのは前世のボクの得意技でした。ボクの手つきは屋台のおっさんをして『神妙古今に比類なし』と言わしめたものです。

 焼き色がついたらできあがりです。皿に上げてソースを塗ります。と言ってもたこ焼きソースは存在しませんのでトマトソースで代用します。ソースをペタペタ、っと。青海苔もありませんので刻んだバジルをフリフリ。カツオもないですので削ったチーズをパラリと掛け回して出来上がりです!


「さあ、召し上がるが良いです」

 それでは試食タイムです。パクッとな。

「……」

 えーっとですね、この辺りで売ってる小麦粉って強力粉ばかりなのです。仕方ありませんので強力粉で作ってみたのですけど、なんというかすごく……モチモチしてます。

「モチモチしておいしい!」

「肉の味が出てて、何だかすっごくおいしい! ニンニクはない方がいいと思いますけど」

「これはビールのあてに良さそうじゃわい」

 みんなは舌鼓を打ってました。お褒めにあずかり恐縮ですがボクの思ってるたこ焼きと違います……。こいつは明石焼き風にした方がいいかもしれません。

 そっちのバージョンも作っておきましょう。旬の葉物を茹でて、一緒にお椀に入れて鳥がらスープをヒタヒタに掛けてみました。

「どうぞです」

「わー、こっちもおいしい!」

「これはもう立派な一品料理なんじゃ……」

 でも汁物って今一つ屋台に向かないのですよね……。


 アレンジしてお好み焼きというかパンケーキ風のも作りました。

「お、これは食べ応えがあるの。ワシはこっちの方がいいわい」

 ミルズにはこの方が良かったみたいです。確かに男性には喜ばれるかもしれません。


 その場でミルズに新しい屋台を注文しました。たこ焼きが焼けるやつとスズメのミートボールを揚げられるやつです。

 さらにギルドに行って屋台の株の追加申請をしました。それと調理のできるエルフを追加で雇いました。


 そして数日後。

「はーい皆さん、スズナーンの新名物『カラ焼き』の屋台はこちらですよー!」

 ミリアが声を張り上げました。でも張り上げるまでもなく屋台目掛けてズラッと人が並んでます。

 ボクたちのお店は人が人を呼ぶ段階に入っています。貧民ならぬ庶民の味がお手頃価格で食べられるということで大評判なのです。もう宣伝を打たなくても新規のお客がどんどん増えてます。いい調子です。

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