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2.67 栗毛城

「ではご案内します。行きますよー!」

 冒険者ギルドを出るやいなやそう宣言した栗毛は一同を魔法のフィールドで包み込んで一気に飛び上がりました。自分ではいつもやってますけど他人にされると変な感じです。


 体感三十秒程度。ボクたちは栗毛の家とやらの前に立っていました。家というかお城ですね、これ。古い石材を組んで建てられたお城は築二十年くらいの割には古風なたたずまいです。

 オーマネットのマップ機能で確認したところ、場所はハテノの近く……あー、昔栗毛のゴブリン牧場があったところですよ、ここ。だだっ広い草原だった牧場跡地はお城を中心とした庭園に変わっていて、昔の面影がまったくありません。


「リンスさんにもらったお城の石材をリユースしました」

 栗毛は門番の最敬礼に応えつつボクたちをお城の中へと案内しました。

 内装はさすがに三百年前の物ではなくて新しいです。豪奢なシャンデリアが照らし出す空間の真ん中を赤い絨毯が奥へと導いています。その広間の真ん中に侍女が一人待ち受けていて頭を下げました。

「いらっしゃいませ」

 いえミラなのですけどね。

「お前何でもやってるのですね」

「そうなの、一人で十役くらいしてるの。というわけでこちらへどうぞ。公爵閣下がお待ちです」


 ボクたちをゾロゾロ引き連れて先導したミラはいくつかの扉の中の一つを開きました。

 正方形に近い形の部屋です。真ん中に大きな円卓が据えられていて椅子が九脚等間隔で並べられています。内装はそれなりに豪華ですけど謁見や接客のための部屋ではなさそうですね。上座らしい上座がありません。会議室か作戦室でしょうか。

 そしてそのテーブルの前に中年男性が立っていました。キンキラキンの頭のそいつはボクを見て気さくに右手を挙げました。


「やあ、久しぶりだね」

「……金髪じゃないですか」

 またも懐かしの顔です。昔のことを思うと若干老けてますけどこいつは一目でわかりました。


「……んん? さっきミラが『公爵が待ってる』って言ってましたけど、それってお前のことですか?」

「そうだよ」

「え、どういうことですか? それに確か栗毛に公爵夫人って肩書がついてたと思うのですけど、お前たち結婚したのですか?」

「それも含めて説明します」

 栗毛が横から言いました。

「今からご飯作らせますから、待ってる間に情報交換しましょう」


 ボクたちはそれぞれ席に着きました。向かい側に金髪と栗毛が並んで座って、金髪の隣にチューター、その隣にラーナ。栗毛から順にミラ、ヴァン、クリス、そしてボクです。

 うーん、やはりメンバーが一人足りませんね?


「さて、始める前にちょっと聞きたいのですけど」

「何ですか?」

「隊長は何でスズナーンなんかに行ってるのですか? あそこは何もない野原になってたと思いますけど」

「そうなんですよ!」

 栗毛と金髪とチューターは深刻ぶった顔をしました。

「何故か突然スズナーンが壊滅したんです! あのときは大騒ぎだったんですよ、この国の食糧事情を支える一大穀倉地帯が原野に戻っちゃったんですから。この辺りはジャガイモメインですからそこまでの影響はなかったんですけど、西も東も食料不足で……。何であんなことになったんでしょうね?」

「あー、それはですね……。人間の際限のない欲望が引き起こした災いだったのです──」


 昔の記憶をほじくり返してみましょう……。

 えーっと、もう二十年以上も昔になるのでしょうか? イーデーズを出発したボクはフラフラ寄り道しながら王都を目指していたのですけど、その途中でスズナーンに立ち寄ったのです。東西南北を走る街道の合流点ですからね。意識して避けない限りあそこを通ることになります。


 それではここからは二十何年か前の視線でお送りいたします。

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