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2.60 悪魔キーウィ

 前回と同じようにローラたちが突撃しました。そしてこれも同じように隊長が迎え撃ち──

「ガハッ!」

 いきなり謎のダメージを受けました。目から血涙を流しています。強力な出血毒ですね。隊長は何かを叫ぼうとして吐血、代わりに手振りで「来るな!」と示しました。


 それなのに栗毛は隊長のところに飛んで行って倒れ掛かった隊長を抱えました。

「うにっ!」

 当然毒に巻き込まれて出血してます。アホですね。しかし栗毛は踏みとどまって──回復! 顔を上げました。そして隊長にも回復魔法を使います。

「すまん、助かった!」

 隊長は喉をグリグリ押さえて確かめながら叫びました。なるほど、どうやらわざと毒を受けることで種類を同定し回復したようです。


 キーウィはありとあらゆる種類の毒をまき散らしながら味方をサポートするタイプの悪魔です。キーウィが毒を使うことを悟ると位置を変えて栗毛がキーウィに立ち向かい、隊長はヴァンの盾となって慣れたローラと戦います。


「はれっ?」

 栗毛はキーウィに波動剣を撃とうとして突然その場にひっくり返りました。地面の上でジタバタしてます。多分神経毒ですね。さらに体中の粘膜から派手に出血しています。さっきの出血毒に加えて血液毒も食らっているのでしょう。キーウィは栗毛の上を通り過ぎて隊長たちの方へ向かいました。

「よっし完治っ!」

 そして逆再生するみたいに起き上がった栗毛の頭突きを食らって真上にぽよんと打ち上げられました。もう毒のダメージは見られません、治してます。さらに栗毛は隣のキーウィに波動剣をお見舞いし、もう一体に後ろからしがみついて投げっぱなしジャーマン!

「しゃあっ」

 キーウィは地面をぽいんぽいん跳ねて元の位置に戻りました。キーウィの天敵みたいなやつですねこいつ。


 隊長はローラ二体を引き受けもう一体がヴァンと戦っています。ヴァンは至近距離からの状態異常魔法の連射を巧みにかわし、紛れて撃たれた重力爪へと斜めに剣を叩き込みました。重力爪は体軸の外側に弾かれ、白刃が吸い込まれるように触手を切断します。


 キラキラキラ……


 きらめく光の粒子がさざ波のようにローラを覆うと触手がウネウネ盛り上がって再生しました。キーウィが回復阻害をディスペルした上で回復魔法をかけたのです。ローラは赤ちゃんのベッドメリーみたいにクルクル回って元気さをアピールしました。

「あーっ、ずるい! 悪魔が光に包まれて……不謹慎でしょ!」

 いつも自分がやっていることをやられた栗毛が抗議するとキーウィは小バカにするように震えました。




 戦況は一進一退で膠着しています。なにしろ栗毛一人でキーウィを引き受けているせいで隊長たちの方まで回復魔法の手が回りません。いきおい消極策を取らざるを得ず、しかしチマチマしたダメージではキーウィにすぐに癒されてしまいます。一方で悪魔たちの方もこの三人相手には決め手を欠きます。隊長とヴァンは先日の戦闘でローラには慣れてますし、栗毛は次から次へと毒を克服してしまっています。


「うおっ」

 20分くらい戦ってたでしょうか。業を煮やしたのか二体のローラが隊長に体当たりを仕掛けました。押された隊長が右に振れます。はずみでヴァンの前ががら空きになりました。向こうに栗毛と戦うキーウィが見えています。


 ゴォッ!


 一瞬の判断でした、悪魔たちはもちろん隊長も栗毛もまるで予想外のタイミングでヴァンが突撃していました。各種加速魔法と縮地を最大限に発動、音速を遥かに超える踏み込みです。キーウィの反応を超えた速度ですり抜けざまに一撃、返す刀でさらに三回斬りつけています。それに対してキーウィは──反撃がありません。消し炭のような色に変わりつつ全体が崩れ落ちてゆきます。

 ヴァンの剣が圧倒的な輝きを放って周囲を圧しています──あれは太陽神の【キラキラ】です! 踏み込みと同時にオルドの剣からボクの剣に抜き替えて剣にかかった光魔法を発動させたのです。ボクのようにそれ自体で剣の形を維持することはできず剣にまとわせる形ですが威力は充分だったようです。キーウィは断末魔も残さず消滅しました。


「クッ……」

 ヴァンはさらに違うキーウィを攻撃しようとしてしかしよろけ、やっとのこと剣を納めました。複数の魔法に加えて剣に魔力を吸われてますからね。魔力を瞬間的に使い過ぎて欠乏症を起こしたのでしょう。一時的に戦闘能力を失ったヴァンを引っこ抜いて栗毛が後ろに投げ、攻撃しようとしたキーウィを栗毛が阻みローラから隊長がかばいます。


 これで攻略パターンができました。隊長がローラを栗毛がキーウィを抑え、ヴァンの魔力が回復したところで一撃を加えるのです。もちろんローラの方もヴァンからキーウィへの射線が開かないように、キーウィもヴァンとの間にローラを挟むように頑張って立ち回ってます。とはいえ悪魔たちが攻めあぐねているのに対してこちらにはヴァンという決定打があるのです。勝負は時間の問題でしょう。


 ……時間はかかりそうですけど。




『やーらーれーたー』

 ローラの最後の一体がサラサラと砂像のように崩れ落ちてゆきました。


 いやー今回は長引きました。一時間近く戦ってましたよ。やはり敵味方双方に回復役がいると違いますね! おかげで三人とも(さすがの栗毛でも!)へばってしまっています。

 仕方ありませんね、今日のところはここまでにしといてやります。

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