2.52 魔眼祭り
隊長の訓練は魔眼開眼を目標としたものです。実はヴァンの覚醒からほどなく栗毛も魔眼を開きました。隊長としては多少強くなったことに浮かれている場合ではなくなってしまったのです。
この十日ほど魔眼と魔眼の二人がかりでプレッシャーを掛けてました。最初はダラダラ冷や汗を流すだけだったのですけど、昨日あたりからちょっと様子が変わりました。
「お、お……。何か見られてる感じがわかってきたぞ……。視線が肌の上を這いまわるようだ」
なので今朝からずっと二人して隊長を見つめてます。左右からじーっと。じーっと。嫉妬したソフィーがぎゅーっと抱きついてます。後で好きなだけ見つめてあげますからちょっと我慢してほしいです。
隊長は重要書類の提出期限が昨日までだったことに気づいた朝のように脂汗を流しています。
「この感覚……自分でやるには……こうか!」
そう叫んだ隊長が目を閉じてまた開くと、そこに輝く金色の瞳は──【虎眼】です!
隊長は見たことがないと言っていましたのについに自分で実現しました。ヴァンの龍眼に近い性質を持ちますがこちらはバステ控えめな代わりに自分に乗るバフが多いのです。
ちなみに栗毛が発現させた魔眼は【魔王眼】とかいうよくわからないやつです。多分【魔人眼】の上位版だとは思うのですけど……。この魔王眼とやらは各種感覚の向上に加えて見た相手のバフを解除すると同時にデバフとバステをてんこ盛りで付与、おまけに確率で即死も付与するという素敵仕様です。本当に何なのでしょうかこいつ。
それはともかく、こいつらに超感覚の修行をさせて正解でした。もし魔王が全員この魔王眼を持っているとしたら大変なことです。今はそれぞれの魔眼で相殺できますけど対策なしで突撃してたら即全滅するところでした。
今夜は隊長の魔眼開放を森の妖精亭でお祝いしようと思ったのですが、その隊長のリクエストで昔よく飲んでいたお店に来ました。
ところがせっかく来ましたのに隊長はガックリしています。ここ数か月特訓に精を出していたら、その間になじみの売春婦が町の男と結婚して足を洗ってしまったそうなのです。流行ってるのでしょうか、結婚。ラーナによれば今は化粧を落として普通の食堂で働いているみたいです。
「大丈夫?」
「おっぱい揉む?」
ラーナとノンナは両側から隊長の手を取って自分の胸に押し付けました。
「……」
とりあえず揉んでます。揉んでいるうちにちょっと元気が出てきたみたいです。そしたらラーナが「隊長さんなら二人で14プライドルでいいよ」と言いました。こいつらは「私たちは顔で勝負できないから」と言って二輪車プレイを売りにしています。複数人でもOKというのがお得感があるようで顔の割には売れっ子で、鬼出勤の名を実のあるものにしたのでした。
「……じゃあ頼むわ」
「まいどありー」
「今夜は寝かさないぞっ☆」
隊長は二人に手を引かれて二階へと消えてしまいました。