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2.43 剣をプレゼント

「デ、デッケェェェ!」

「何じゃこりゃ、こんな生き物が本当にいるのか!?」

「ゴブリンキングとまた全然違うじゃねーか!」

「なんちゅう筋肉だ」

「こんなのと本当に戦ったのかよ。スゲェな」

「一番デケェのは頭が半分吹き飛んでるぜ……」

「こいつなんて真っ二つだ」

「スゲェ切れ味の剣を持ってるんだな。チクショー、羨ましいぜ!」

「しかしこの小さいのはメチャメチャだな。どういう攻撃したらこうなるんだ?」


 翌朝になるとようやく三人の魔力が回復しましたのでイーデーズに帰りました。オーガの死体をギルドの前に並べると冒険者やら町の人たちやら見物人がやってきて大騒ぎになりました。いつかのゴブリンキングのとき以上の人だかりです。


「本当にたった七人でやったのか?」

 お久しぶりのクランリーダーに驚きながら聞かれたのでボクは「四人ですよ」と黒山羊隊の四人を順番に示しました。後ろでA君B君がうんうん同意してます。

「俺たちが証人だ!」

「こいつら本当に四人でやりやがった!」

 この二人にはオーガ討伐成功の報告をするために先に帰ってもらっていました。


「すげえな! やったなグラッド!」

 リーダーに褒めそやされて隊長はまんざらでもなさそうな顔をしています。

「いや、まさか自分でもここまでできるとは思ってなかったんだがな」

「えっへん!」

 栗毛も得意げです。ソフィーは「私何もできなかったんだけど……」と複雑そうでしたけど。


 ギルマスが「今お前たちの報酬を計算してるからな。ちょっと待っててくれ」と言いました。

 災害対策時の報酬は計算がいつもと少し違っていてイーデーズ市からの依頼料に加えてギルドからも特別褒賞が出るそうで、そこから索敵班と他の二チームの出動手当を差し引いたものが黒山羊隊の取り分になるそうです。


「いやマジだって! メチャ凄かったんだって!」「あいつ本当に一人でオーガを殺ったんだ!」「まずグラッドがな──」

 A君B君は興奮気味の野次馬たちに得意顔で目撃談を語っています。


 ダメッピはギルドの壁にもたれかかって目を覆っています。魔眼に目覚めて見えすぎるのでしょう。今は抑えさせているのですけど。

 ダメッピには街中では魔眼を封印するように指導しました。龍眼というのは魔眼の中でもかなり攻撃性が高いやつなのです。あんなのを開放しつつ歩いたら町の一般人なんてバタバタ倒れちゃいます。


 それにしても……ボクは四人の中で最初に魔眼を開くのは栗毛だと思っていたのです。それがまさか一番ダメな子が真っ先に目覚めるとは驚きです。しかも龍眼とは! 年経たドラゴンとかが持ってるレアなやつですよ。もうダメッピとは呼べませんね。

 ……えーっと、こいつなんて名前でしたっけ? ダメ……ダミ……ダミッポス……。そうです、ダミッポスです! こいつはたしかボクの話をよく聞き授業でもよく発言をしました。討論をさせれば他の生徒は誰もかないませんでしたね。ボクはダミッポスを人ごみからギルドの裏手に誘い、引き出してきた剣を差し出しました。


「ダミッポス」

「オレの事か? ヴァンです、先生」

「ヴァン。お前にはこの剣をあげましょう」

 ヴァンは受け取った剣をゆっくり抜き放ちました。刀身が魔力を受けて濡れたような光を放っています。ヴァンは目を輝かせました。

「すごい剣だ! 名前はあるんですか?」

「スーパーすごい師匠の剣ですのでお前のマスターとでも名付けるがいいです」

「お前ちょっと一回怒られてこい!」

 何故か隊長が怒り出しました。血圧上がりますよ。


「師匠にも見てもらいたいんだが、いいですか?」

「オルドに用がありましたしちょうどいいですね、みんなで行きましょうか。──アカンパニーオン、ハテノへ!」

「ひゃー!」

「キャー!」

 ボクは気で全員を包み込んでまとめて飛ばしました。



 縮地を交えて秒で到着しました。周りを見てそこがオルドの工場の前であることを確認して四人は呆然としています。

「……え? もうハテノなの?」

「ウッソだろ、おい」

「飛空術より、はやーい!」

「オレなんて全然まだまだだな……」


 オルドはちょうど工場の入り口で健康体操を踊っているところでした。ボクたちに気づいたオルドが「おお、いきなりだな」と手を掲げました。ボクもこたえて手を挙げます。

「スポポビッチ!」

「腹のパン祭り!」

「「イェ──イ!」」

 ハイタッチすると後ろで四人が困惑してました。

「だから何なの、それ……」


 剣を見せられたオルドは真剣な顔つきで調べ始めたかと思うとやがて震えだしました。

「な、何と言うものを……とんでもないものを……」

「いいものだというのはわかるんだが、そんなにすごいんですか?」

「まず材質がな……。刀身は純粋なミスリル、刃はオリハルコン、柄は月白金だ。この量のミスリルなどどれだけ金を積んだところで手に入るものか。またコンセプトの斬新さ、そしてそれを実現する技術に至っては言葉もない」

 そうなのですか? 旅立つ前にクリスがちょちょいと作ったものなのですけどね。


「価格で言うとどのくらいだ?」

 隊長が尋ねるととオルドは首を横に振りました。

「値のつけようがない。まあ軽く城が建つな」

「そ、そんなもんもらえねえよ!」

 ヴァンは狼狽してます。やれやれ、値段を聞いて気おくれするとはまだまだ修業が足りないようです。

「リノス訛り出てますよ。やったもの返せとは言いません、いいから取っとくといいです。その代わり使いこなすのですよ」

「あ、ああ……きっとこの剣に恥じない剣士になる!」


「しかし使えんだろうこれは」

 せっかく感動の場面でしたのに突然オルドが水を差しました。オルドはつらそうな顔で剣を鞘に納めました。

「抜いただけでひどく魔力を吸い取られたぞ。戦闘するにはどれだけいるんだ? 三日ぶりのウンコよりも山盛りあっても足りんぞ」

「ボクは普通に使えますけど」

「エルフは使えるんだろうがな。こいつに使えるのか?」

「今のこいつならすぐ動けなくなるということはないでしょう、一戦闘分くらいはもつと思います。いざという時の切り札ですね」

「切り札か。まあこいつをまともに使えるならまず負けることはなかろうな」

「そこで依頼が二つあります。ひとつはですね、この剣のグリップはこいつには少し細いのでもう少し太くしてやってほしいのです」

「むむ……月白金に巻くとなると、ドラゴンのガットか……?」

「それからもうひとつ、戦闘一回分しか動けないのでは本当にいざという時しか使えませんので、普段使いの剣を一本作ってやってほしいのです。あとついでに隊長のも」

 壊れちゃいましたからね。


「お代は……お金でもいいのですけど、これあげます」

 ボクはアイテムボックスからオリハルコン製の大工道具一式を取り出しました。森から持ってきていたのです。以前チンピラの指を切り落とすのに使ったニッパーも入ってます。

「自分で使ってもいいですし売ってもいいですし潰して素材にしてもいいですし。ほら、このハンマーとか鍛冶に使えそうじゃないですか?」

「お前……だから、そういうものを軽々しく持ち出すなと言っておるのに……」

 オルドは顔を覆ってしまいました。

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