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2.38 ペガサスファンタジー

 栗毛の飛空術も板についてきましたのでそろそろ本格的な速度アップにチャレンジすることにしました。

「さて飛空術を使っているとき、何も教わっていない人間でもほとんど本能的に皮膚表面上に魔法障壁を展開しています。でないと特に眼球が痛くて飛べません。しかし速度が速くなればなるほど空気の粘性が無視できなくなってきます。人体の表面のデコボコが圧力の不均衡を産み抵抗になります。魔法障壁は体から膨らませて、なるべく紡錘形に近づけたいですね。そこで【シェル】という魔法を使って形の良い障壁を展開します」

 ボクは実際にシェルを展開しました。見やすいように表面に色をつけておきましょう。マグロみたいな魔法障壁がボクの前後に細長く伸びています。


「それでも速度を上げ続けていくと障壁に空気の分子が引っかかる問題にぶつかります。空気摩擦がブレーキになるのです。そこでまず大気の圧縮を解消するために【負圧】の魔法を使って進行方向上の圧力を下げます。また【界面破砕】の魔法で障壁上の大気分子を電離させてプラズマ滑面を形成します。これは飛空術だけにいえる話ではありません。走って移動するときにも応用できます。聞いてますか?隊長」

「あ、ああ。大丈夫だ。ちゃんと聞いている」

 本当でしょうか? 何だかぼんやりしている隊長に声を掛けると気の乗らない声が返ってきました。どうにも身が入らない様子です。


「それから方向転換にも技術があります。栗毛、お前は曲がるとき大きく円を描いて飛んでいましたね。ダメッピ、お前の空歩も同じはずです」

「はい」

「その通りです」

「それは運動体には慣性が働いているからです。急角度で曲がろうとしても限界があるのです。これを解消するための技術には一つは慣性放射法があります。シャドウ・マス、つまり魔法で作った仮想の質量に自分が持っていた慣性を乗せて放射する技術です」

「すいません、言いたいことはなんとなくわかりますけどもうちょっと具体的にお願いします!」

「オレはさっぱりわかりません!」

 二人が手を挙げました。

「しょうがないですね……」


 というわけで実際にやってみせることにしました。


「ボクの場合は複製の神ロスリンの【分体】の魔法を使います」

 これは【分身】の簡易版で姿とか気配とか存在を部分的にコピーする魔法です。ボクは四人の前で高速でダッシュ、分体の魔法で今回は質量をコピーしました。するとボクは瞬間的にその場に静止、移った運動量のために分体が代わりにダッシュします。いわゆるニュートンのゆりかごみたいな動きです。ボクの輪郭だけが進行方向に飛んでいき、そのまま霧散して消えました。


「このように非実体的質量への慣性替身によって鋭い方向転換が可能となるのです。慣性は例によって神様に受け持ってもらっているわけですね。この魔法は簡単ですが、しかし戦士にはもっと優れた慣性制御法があります。──いいですか、以前説明したように気とは物体に運動エネルギーを与えるものですが、逆に運動エネルギーを気に変えてしまう魔法があるのです。【波濤】と言います。この魔法を使うとその場にピタッと止まることもできますし、その気を使って違う方向に移動することもできます。実質魔力を消費して慣性を制御しているのと同じですね。こちらの魔法の方が難しいですけど効果的です。両方を場面によって使い分けるといいですね。そしてこの魔法が使えればこういう芸当もできるようになります」


 ボクは魔法でご太い土の柱を作りました。そしてダメッピの木剣を借りて大上段に構え、瞬足その他で超速ダッシュ、即そのダッシュ力を気に変えて木剣に乗せて放出しました。通常の数倍の威力となった流星剣が食い込み、斜めに切断された土柱が地響きを立てながら崩れ落ちてゆきます。


「これが【彗星剣】です。前進の勢いを気に変えて流星剣に乗せる技術です」

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