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2.32 時々ボソッとエルフ語でデレる魔境のリンスさん

 春ですね。春なので春らしく、古代ギリシア人みたいなひらひらした長い服を着てサンダルをつっかけて、頭には花冠をかぶってみました。プリマヴェーラです。

「今日はまたとびきり奇矯な格好だな」

 などと隊長が変な目で見てます。奇矯とは失礼ですが今日のボクはゴキゲンですので寛大にも見逃してあげました。


「さあ今日も始めますよ、栗毛! 恋も仕事も張り切って参りましょう!」

「はい!」

「おーう……」

 栗毛はいつも通りやる気満々、隊長は声に迷いが見えます。どうしたのでしょうか。ダメッピはハテノに行ったきり今日は帰ってきませんでした。珍しいことです。ソフィーはお休みです。ちょっとお疲れでしたので。



 一日の訓練を終えて二人と夕食を食べて森の妖精亭に帰りました。

「ただいまでーす!」

「あ、お帰りなさい。ごはん食べます?」

 マリーのお出迎えに「今日は隊長たちと食べて来たので大丈夫です」と答えながら厨房を覗きます。お昼からはソフィーも厨房に立っているはずです。

「ただいまです」

「う……お、おかえり」

 声を掛けるとソフィーがゆっくり振り向きました。目を合わせづらいのでしょうか、視線が泳いでいます。でも少し頬が赤いですね。Ci ala equtaですね。

 ソフィーは炭火の上に仔羊の串を並べて焼いているところでしたのでボクも隣に並んで手伝ったのでした。


 ボクが手伝った甲斐もありレストランの営業はつつがなく終了、ボクたちは部屋に引き上げました。ソフィーは部屋の真ん中で立ち止まって、何だかモジモジしています。

「どうしました?」

「あう……」

 後ろからそっと肩に手を掛けるとソフィーは逃げて逃げて、ボクは壁際まで追いつめました。壁ドンです。ソフィーは壁を背に「うー」とか唸って目を逸らしました。

「本当にどうしました?」

「あまり、見ないで……」

「どうしてです?」

「だ、だって、そんな綺麗な顔で見つめられると、て、照れる……」

 なんて言うのであごをクイッと指で持ち上げてこっちを向かせます。そしてじーっと見つめてあげます。

「ううう……」

 ソフィーはみるみる真っ赤になりました。そんなところもCi'la mally equtaです。




 そんな感じで十日ほど修業の日が続いたので明日はお休みにしました。栗毛は彼氏のところに行っちゃいましたし隊長は酒場のお姉ちゃんのところにしけこんでます。ダメッピは夕方だというのにハテノに走って行ってしまいました。こいつ全然休もうとしないのです。何だかわかりませんけど先日から異様に元気です。


 ボクはいつものお高いホテルにソフィーと宿を取りました。お泊りデートですね。

 ロビーに乗り込むと一斉に視線が集まります。バッチリ決めてきましたからね! おそろいのロングドレスにショールを羽織って髪もアゲアゲです。ドレスの色は赤と真珠色で、お互いの髪の色と取り換えてみました。近頃はボクの真似をして似たようなドレスを着ている人間もいますけどさすがに少数派です。二人で並んでると超目立ってます。


「うわー……」

 部屋に通されるとソフィーはポカーンと口を開けて調度品をゆっくりと眺め渡しました。

「えーっと、ここって一泊いくらなの?」

「10メリダです」

「たった二人で10メリダ!? いつものところに何日泊まれるんだろ……」

「一人10メリダですよ」

「…………!!」

 絶句してます。

「お前だってたまには贅沢してもいいでしょう」


 ルームサービスでディナーが運ばれてきました。前菜から気合いの入った料理が並びます。なんでもボクが泊まると厨房の雰囲気が変わるそうなのです。ボクは多少まずくてもクレーム入れたりしないのですけどね。


 それではお楽しみタイムです。何でここに来たのかというと、久しぶりにお風呂に入りたかったのです。二人で。ちょっと抵抗されましたけどグイグイ引っ張っていきました。

 湯舟に二人で浸かって後ろから抱きしめます。前に手を回すと「こんな小さな胸揉んだって面白くないでしょ」などとすねたように言うので正直なところを言いました。

「すごくイイですよ。毎朝このドスケベボディを見せつけられてたこちらの身にもなってほしいですね」

「ドス……そんなこと初めて言われたんだけど! あなたちょっとおかしいんじゃないの?」

「おかしいのは人間の方です!」


 ボクたちの感覚だと乳がデカいのって本っ当に受け付けないのです。あれ三段腹と同じじゃないですか。垂れ乳とかゾッとするほど嫌ですね。生理的に無理です。胸は小さいのに限りますよ、本当に。巨乳エルフとかマジでやめてほしいです。そう、本来貧乳であるべきキャラの胸を増す行為、あれは絶対に許せません。貧乳に乳を盛るな! これはエルフの叫び! それならこっちは巨乳を削りますよ! 自分がやられたらそれがどれだけ罪深い行為かわかるでしょう! まったく本当に無駄に膨らませて、バランス感覚ってものがないのでしょうか? 自称巨乳好きとやらには美意識のかけらもありませんね! 奇乳化は脳勃起・アゴとんがり病と並んで漫画家三大催奇性疾病に指定すべきです。だいたい何ですか貧しい乳って。貧しいのではありません慎ましやかなのです、つまりは美徳です。今後は微乳と呼ぶべきです。微は美に通じますからね。「小さきものはみなうつくし」って清少納言も言ってます。


 翻ってソフィーは何もかも小作りなのです。胸だけでなく。手を下に滑らせるとピクリと体をこわばらせました。腰も細いですね。お尻は丸くて、太ももも細いです。肩も細いですし顔も小さいです。そのくせ背は低いのです。全体に人間よりもエルフの方が背が高くて、それに男女で体格に差がないのでエルフ女性の半分はボクより背が高いくらいです。このくらい小柄だとボクたちの目には新鮮に映ります。ソフィーは今まで何度もボクの動画に登場してますのでエルフ男性の間では話題になってることと思います。


 それに、慣れて来ると、

「耳が丸いのもかわいいですね」

「ひゃ……」

 耳の上の縁をつー……と撫でるとソフィーは小さく声を上げました。

「……私は長い方が良かった」

「お前人間じゃなくてエルフを狙った方が需要があったと思いますよ」

「嫌よ、エルフなんて……嫌い」

 ソフィーはボクの腕の中で首を振りました。

「おやおや、ボクのことも嫌いですか?」

「嫌いよ──あ……」

 ボクはソフィーを抱き上げて、魔法で乾かしてそのまま例の天蓋付きのベッドに運びました。気分が出て来ましたよ!


 ソフィーは素直じゃないので朝まで「嫌い、嫌い」と言ってました。

 Dirla equtes, ala dirla equtes, Ci'la mally equta ruh wii et quis vurarls.

アホ「あててみろよです」

微乳「あててんのよ!」

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