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2.30 BBQパーティー

 肉は本当に大量にありました。豚一頭分くらいはありそうです。森の妖精亭のキッチン組が手際よくその肉を捌いて、まあ一人手際の悪い赤毛もいますけどそれはそれとしてどんどん串に刺してソースを塗っていきます。冒険者たちがギルドからバーベキューの台を持ってきました。そこにボクが魔法で炭をおこすと栗毛とウェイトレス組がみっしりと串を並べてゆきました。


 ところでこの町では路上で酒が飲めないと法律で決まっています。せっかくお酒があるのに見ているだけで飲めない呑兵衛たちがビールの樽やワインの瓶がまとめられた一角の周りを落ち着かない様子でうろついています。それを見ていたギルマスは「仕方ない、裏技を教えてやろう」と言って一団を率いてギルドのロビーへと移動しました。


「ここは路上じゃない」

「ギルドでお酒を飲んでも良かったのですね」

「よかねえよ。だがな、大仕事のあとで打ち上げなんかはやることもあるわけだ。要するにギルマスが許可すればギルド内での飲食も可能だ」

「つまり?」

「今日の営業はこれで終了! 好きなだけ飲め──ッ!!」

「「「「「ウオオオオ──ッ!!!」」」」」

 冒険者とギルドの職員たちが大歓声を上げました。


 ギルドのロビーはにわかに宴会場になりました。こっちかと思えばあっちから、ギルド中のどこかで常に乾杯の音頭が沸き上がっています。お酒は全部運び込まれ、めいめい手酌で好き勝手にやってます。焼けた肉の串や野菜やらが次から次へと運ばれてきます。というか勝手に持ってきてます。なくなったら自分で取りに行くセルフ方式です。バーベキュー台を見に行ったらおばちゃんたち夜まで飲まない組は焼きながらその場で食べてました。


「お肉がなくなりました! 皆さんありがとうございました!」

 栗毛がニコニコしています。あんなにあったお肉でしたけどこの人数の前ではあっという間でした。でも参加者たちが持ってきたおみやげはまだ残ってますし、屋台組が自分のところの商品を持ってきて宴会は続いています。


「うわ、何だこりゃ」

 冒険者のパーティーが帰って来きました。中の一人が大きなイノシシを担いでいます。じっと見つめるとそいつらは慌てたように手を振りました。

「密猟じゃねぇぞ? ゴブリンの罠に引っかかってたんだ」

「ではボクが買い取りましょう」

 というわけでギルドで簡単に手続きしてイノシシを引き取りました。


「まあこっち来て飲め」

「お、かっちけねえ」

 イノシシを持ってきた冒険者たちは連れていかれてガンガン飲まされてました。


 ではさくっとやっちゃいましょう。イノシシをアイテムボックスの実験室に放り込んで魔法でバラバラに解体します。骨とすね、香味野菜とブーケガルニを高火力でひたすら煮込みます。同時にイノシシの肩ロースやバラ肉やその他のブロックをビール煮にします。それとそば粉で生パスタを打ちます。パスタを延ばしてきしめん風に幅広に切ります。骨は6時間、ビール煮は2時間煮込んだ本格派ですけど時間の進む速度を100倍にしてますので現実で掛かった時間は全部で5分です。

 魔法で茹でたそばをどんぶりに盛り付けて、塩で味を調えたスープを掛けて、薄切りにしたビール煮を乗せてできあがりです。アイテムボックスから取り出した料理をダンダダンとテーブルに並べてゆきます。


「『そばのタリアテッレのイノこつスープ仕立て・肩ロースのビール煮乗せ』です。お酒の締めにどうぞ」

 白濁したスープがテカテカ光っています。挽きぐるみのそばは香り高く、ビール煮はとろけるほどに柔らかいです。さらに別のお皿に山盛りにした玉ねぎのみじん切りとおろしにんにくも出します。

「ねぎの代わりにこいつらを用意しましたのでお好みでかけてください」

 おっと一味唐辛子も忘れずに。


 テーブルの上から湯気と共にふわりと立ち昇る香りに釣られた酔っ払いたちが竹やぶのヤブ蚊みたいにフラフラ寄ってきました。

「オッ、姐さんのメシは久しぶりだな!」

「また見たことも聞いたこともねえ料理だな」

 酔っ払いたちは最近ようやく普及し始めたフォークを手に取り麵を巻いて食べました。

「……」

「ウッメ……」

 どんぶりを傾けてスープを飲みます。

「……」

「旨すぎて何かもうわけわかんねぇ……」

「うめえよぅ……うめえよぅ……」

 みんな黙々と食べてます。まあお酒の締めのラーメンは堪えられない味と聞きますし。しかしこんなに酔っ払ってて本当に味がわかってるのでしょうか。



 ところで全然関係ない話なのですけど、このとんこつパスタにインスパイアされたアヒル屋台のネコミミと野菜スープの髭の二人が後で『アヒルスープの鴨南蛮(※意訳)』なるコラボメニューを出してました。

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