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2.11 エルフ、煩悶する

 ノッポは馬小屋に、本業が医者(見習い)の栗毛は自分の部屋を持っているとのことでそちらに帰りました。

 赤毛はたいていはここに泊まっているそうなのですけど、今日は嫌だというので森の妖精亭に行くことにしました。


「男って嫌ね!」

 夜の町を歩きながら赤毛が吠えました。ボク男なのですけど。

「他に考えることないのかしら」

 まあ生と性とは不可分の関係ですからね。男がスケベじゃなかったら一世代で人類滅亡の危機ですよ? それに女性だって性欲がないわけじゃないでしょうに。エルフの女なんか全員肉体的には青少年ですのに男は半分の数しかいないものですからそりゃもう大変なことです。


「あ、お帰りなさい」

「あれ、今日はソフィーも一緒なの?」

 森の妖精亭に着くとマリーとミラが出迎えてくれました。レストランは相変わらず盛況で中央屋台の売り子たちが忙しそうに働いています。

「うん、ちょっと部屋取り損ねて。空いてる?」

「ごめーん、今日はうちも一杯なんだ!」

「えっ……うわー、どうしよ」

 満室の可能性を考えてなかったみたいでショックを受けてます。するとミラが「リンスの部屋ならあるから、泊めてもらったら?」などと余計なことを言いました。とたんに赤毛は目の色を変えて詰め寄ってきました。

「あんたここに住んでるの?」

「まあ、一部屋使ってますけど」

 角部屋を貸切にしていて、昨日みたいに出張でいないときも誰も入れないようにしてあります。

「泊めてよ」

 赤毛はボクの両肩をつかんで揺らそうとして自分が揺れてます。酔ってますねこいつ。ミラが横からまた余計な口を出しました。

「女同士だしいいでしょ?」

 ボク男なのですけど。


「すごい、ここってお風呂ついてるの!?」

「洗い場だけですけどね」

 仕方なく部屋に通すと赤毛が驚きの声を上げました。ボクは本当は入浴したいのですけどね。

「それになんだかあったかい……」

「魔法で温めてますからね」

 エルフは魔法の耐性があるので暑さも寒さもへっちゃらなのですけど、今日はお客様があるので暖房(自前)をつけてます。

 それからきょろきょろ部屋の中を眺め渡して「住んでるわりには荷物は何もないのね」と言いました。そりゃアイテムボックスありますし。


 本当にたいしたもののない部屋です。ベッドだって一つしかありません。でもお客とはいえ譲るつもりはありませんでしたので床に布団を敷いてやると、赤毛は文句を言いながらボクのベッドに潜り込んできました。

「うわ、ふかふか」

「狭いですよ!」

「いいじゃない。疲れてるんだからベッドで寝させてよ……」

 いいのでしょうか? 良くないですよね??


 ボクの隣で目を閉じた赤毛はすぐにすぅすぅと寝息を立て始めました。本当に疲れていたみたいです。考えてみれば結構移動しましたからね。ボクは部屋の明かりを消しました。


 夜中に寝言で「お父さん……」と呟いているのが聞こえました。こいつ本当はボクが男だってこと知っているのではないでしょうね?


 朝、起き出した赤毛がお湯を使いたいというので洗い場の大きなタライに魔法でお湯を張ってあげました。すると赤毛は大喜びですっぽんぽんになって体を洗い出しました。細っそいです。ほとんどエルフです。ソフィーよりもトトリ寄りです。ちなみに光魔法【謎の光】によって隠されているので安心です。

 いやダメでしょう。



 これはもう少し後のことですけど、赤毛は定宿を森の妖精亭に替えて、満室のときにはボクのベッドに勝手に入り込んでくるようになりました。

 うーん、本当に良くないと思いますよ、こういうの。

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