表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/287

127 ジョシュア師団長逆攻略計画 1

兄は凄いとの共通認識を持ったところで、師団長がおもむろに口を開いた。

「ところで、ルチアーナ嬢、カドレア城での顛末を説明したいのだが、よいだろうか?」


ジョシュア師団長の言葉を聞いた私は、はっとして謝罪のために頭を下げる。

「ジョシュア師団長、謝罪が遅れました! 東星の件については、師団長に全ての後始末をお任せしてしまって申し訳ありません」


兄が腕を失ってからの私は、はっきり言って酷かった。

ただただ兄のことを心配するだけで、その他のことは全てほったらかしにしていたのだから。


ジョシュア師団長は私の何倍も忙しい身なのに、全ての後始末を一手に引き受けてくれたのだ。申し訳なさしかない。

だというのに、師団長は頭上から気遣うような声を掛けてくれた。


「いや、頭を上げてくれ、ルチアーナ嬢。そもそもあなたのおかげで、私もルイスもダリルも、望み続けた未来を手に入れることができたのだ。あなたには深く感謝している」


想定外の言葉に驚いて顔を上げると、何らかの感情をたたえた瞳と視線が合った。


あ、この表情はよろしくない気がする、と直感的に思った私は、軽い調子で感謝の気持ちを受け取る。

「どういたしまして。けれど、ダリルは私にとっても弟ですから、お礼を言われることではありませんわ。弟に満足できる未来を与えることができて、私もほっとしているところですから。ジョシュア師団長こそ、様々にご尽力いただきありがとうございました」


にこりと微笑んでお礼を言うと、先ほどまでの緊張感は消え去り、師団長は困ったように眉を下げた。

「困ったな、サフィアに続いてあなたも謝意を受け取らないタイプなのか」


「え?」

「いや、カドレア城についての報告だったな」


そう言うと、師団長は膝の上で両手を組み、真っすぐ私を見つめてきた。

「ルチアーナ嬢も知っている通り、私は陸軍魔術師団長の職位にある。そのため、一定の果たすべき義務と自由にできる権限がある」


師団長は一旦言葉を切ると、申し訳なさそうに言葉を続けた。

「まず、私の義務として、『四星』のうちの一星である『東星』と接触したことを王宮に報告した。東星の転移に巻き込まれ、この世界最大の秘密である『世界樹』のある空間に足を踏み入れたことまでを」


「はい」

師団長の話を聞いた私は、それはそうだと納得する。

『東星』との接触も、『世界樹』を目にしたことも、非常に大きな事柄だ。

魔術師団の頂点に立つ者として、報告しないわけにはいかないだろう。

勿論、私のことだって。


そう覚悟して、師団長の次の言葉を待つ。

けれど、続けられた言葉は意外なものだった。


「それから、権限として、それ以外の全ては調査中だと報告した」

「え?」

「推測まじりの報告で、王宮を混乱させてはいけないからね。そのため、『東星』が現れ、私たちに接触した理由は不明だと報告している。……そもそも、私は3年前のサフィアと東星との契約についても報告していないし、慎重に調査をするタイプなのだよ。だから、あなたの存在を含めた調査中の事柄について、王宮には一切の報告を上げていない」


「ジョシュア師団長……」

魔術師団に詳しくない私でも、師団長の行為は彼の権限を越えていて、その立場を危うくさせるものではないかと想像できた。

しかも、師団長が無茶をしたのは、十中八九、私の存在を王宮から隠すためだろう。

心配になって師団長を見つめていると、彼は視線を避けるかのように床を見つめた。


「以前、サフィアは2つの選択肢を提示して、あなたに選ばせようとしたね。1つはあなたの存在を王宮に報告することで、自由を失う代わりに守護を得る選択。もう1つは王宮には何も報告せず、自分で自分の身を守る選択。先日までのあなたは混乱していて、何らかの判断ができるようには思われなかったため、私がこれまでのあなたの言動を元に、後者を選択した」


それから、師団長は少しだけ躊躇した後、言葉を続けた。

「恐らくサフィアでも同じようにしただろう。私は……サフィアの代わりに、あなたの望みを叶えたかったのだ」


「……ありがとうございます」

師団長の口調はあくまで優しかったけれど、有無を言わさぬ圧力のようなものが感じられたため、お礼の言葉が口からついて出る。


恐らくジョシュア師団長は、兄が腕を失ったことに責任を感じているのだろう。

そして、責任感の高さから、兄に代わって私の面倒を見るべきだと考えているのだろう。


そんな必要は全くないのに、と考えていると、師団長は座っていたソファから立ち上がり、テーブルを回ってくると、私の前に膝をついた。

「ジョ、ジョシュア師団長!?」


驚く私にそれ以上説明することなく、師団長は片手を胸に当てると、真顔で見つめてきた。

「ルチアーナ嬢、そうではない。私があなたに感じているのは兄が妹に抱く感情とは異なるものだ」

「え?」


「だから、私にチャンスをくれないか?」

「えっ、チャンス?」

言われた意味が分からずに、瞬きを繰り返す。

すると、師団長は至極真面目な顔で頷いた。


「ああ、そうだ。私があなたに恋をする機会を与えてくれ」

「なっ」


何を冗談言っているんですか―――などと、言い出せる雰囲気では全くなかったため、私はただごくりと唾を飲み込んだ。

お知らせです!


ありがたいことに、溺愛ルートのPVを作ってもらいました!

皆様に応援いただいたおかげです!! ありがとうございました!!

すごくときめく出来上がりになっていますので、よかったらぜひご覧ください!


〇出版社1周年記念 溺愛ルートPV

https://magazine.jp.square-enix.com/sqexnovel/1st_anniversary/

(ページの下の方にあります)

(有名大先生方のビッグ対談など、PV以外にも素晴らしい企画がありますので、上から下まで眺めていただければ幸いです!)


〇YouTube 溺愛ルートPV(労力省力化のために貼付)

https://www.youtube.com/watch?v=FuOXL8Ofs08

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
★Xやっています
☆コミカライズページへはこちらからどうぞ

10/7ノベル9巻発売予定です!
ルチアーナのハニートラップ講座(サフィア生徒編&ラカーシュ生徒編)
サフィア&ダリルと行うルチアーナの断罪シミュレーション等5つのお話を加筆しています

ノベル9巻

コミックス6巻(通常版・特装版)同日発売予定です!
魅了編完結です!例のお兄様左腕衝撃事件も収められています。
特装版は、ルチアーナとサフィア、ラカーシュの魅力がたっぷりつまった1冊となっています。

コミックス6巻


コミックス6巻特装版

どうぞよろしくお願いします(*ᴗˬᴗ)⁾⁾

― 新着の感想 ―
[良い点] きゃはは(*≧∀≦*) 言われてしまいましたね(*≧∇≦)ノ 題名がジョシュア師団長逆攻略計画になっててうけました(* ̄∇ ̄*) 告白されたりアプローチされるときはこの題名になるのです…
[良い点] みんな綺麗に攻略されておる…w [一言] PVが…!みずほ先生と圭くん…!なんという俺得…!
[一言] ルチアーナに『迷惑ですやめてください』って言われたらどするのかな?ジョシュアみたいな大人がこの流れでこんな告白するかなぁ? 結婚前提にしてくださいw
2021/12/08 19:52 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ