姿と心
「鏡よ鏡、姿と心、美しいのはどちら?」
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白姫はこぼれたジュースを拭き取り、転がり落ちて割れたガラスを、すべて家の裏の木の下に埋めました。
自分のコップに入っていたジュースも捨て、洗った後は、美味しいアップルパイを食べていきます。
すると、馬のひづめの音が聞こえてきました。
白姫はすぐさま雪姫のそばにいき、すすり泣き始めました。
「あのー、誰かいませんか?
......入りますよー。」
律儀な2回のノックと、呼びかけ。
扉を開けてきたのは、なんと隣の国の王子様でした。
「これは......一体どうされたのですか?」
「一緒にアップルパイを食べていたら...急に倒れてしまって....あぁ、雪!
どうして、あなたが....」
「雪...もしやあなたは、白姫では?
なぜ姫様がこのようなところに...」
王子は2人を見て驚いていましたが、すぐに雪姫を心配し始めました。
「まだ諦めてはならない、まだ望みはあります!」
そういって王子は、雪姫の真っ赤な唇に、キスをしました。
何も起こらない...やはり無理なのかと、王子が思った時です。
雪姫は、ゆっくりとまぶたを開けました。
生き返ったのです!
雪姫はもちろん、白姫も、王子にお礼を言いました。
白姫は、失敗した、と思いながら...
そして王子は、雪姫に一目惚れしました。
2人は結婚することになりました。
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今日は、結婚式当日。
姉である白姫も、結婚式に呼ばれました。
雪姫が、白姫に綺麗な真っ赤な靴をすすめます。
「お姉さま、今日は来てくれて嬉しいです!
今までお姉さまに、あまり優しくできなかったお詫びとして、お姉さまにお似合いの靴を差し上げたいの!」
白姫は、まぁ、嬉しい! と言って、靴を履こうとしました。
ですが、靴に触れてすぐに、足を元の位置に戻しました。
「どうしましたの? お姉さま?
まさか、わたしからの贈り物なんて、いらないの...?」
「白姫様...いえ、お義姉さま、どうか履いてください。
雪姫は、ずっとあなたのことを気にかけていたんですよ。」
白姫は、恐怖を感じました。
雪姫の笑顔も、王子の笑顔でさえも、偽りだとわかったのです。
白姫は仕方なく、口を噛み締めながら、靴を履きました。
真っ赤で、綺麗で、とても熱く焼けた靴です。
白姫は、小さく叫んでいます。
「さぁ、お姉さま...一緒に踊りましょう?」
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雪姫は、王子にこう言いました。
「お姉さまに殺されかけたの!」
ただその一言で、王子までもが狂いました。
そして結婚式当日、焼けるように熱い靴を履かせ、踊ってもらおうと決めたのでした。
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『それは姿でございます、雪姫様。』