本音と建前
「鏡よ鏡、本音と建前、美しいのはどちら?」
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女王は、白姫だけを殺そうとしました。
人に愛される姿も、また美しい。
人に愛されない姿は、美しくない。
猟師に逃してもらった白姫は、森の中をさまよっていました。
すると、小さな家を見つけました。
お腹の空いた白姫の鼻に、美味しそうな匂いが家からします。
家に入ると、小さなお皿が7つ、中には美味しそうなスープが入っていました。
白姫は我慢しきれず、全部食べてしまいました。
満腹になった白姫を、今度は睡魔が襲います。
眠れる場所はないかと、家の中を見て回ると、小さなベッドが7つ並んでいました。
シーツが綺麗に揃っていないことなど気にせず、ベッドの上に横たわって、ぐっすり眠ってしまいました......
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仕事から帰ってきた7人の小人たちは、大騒ぎ!
晩御飯が食べられた!
誰かがベッドで寝ている!
見てみると、それはそれはとても美しいお姫様...白姫でした。
「ごめんなさい、とてもお腹が空いていたの。
それでつい食べてしまい、そのまま眠っちゃって...小人さんたちのお食事、今からわたしが作りますから、どうか許してください。」
小人たちは白姫が謝り、料理を作るだけでなく、寝床まで整えてくれたその優しさから、この家に寝泊まりしてよいと言いました。
それからは、小人たちが仕事に行っている間に、白姫が家事をすると決めたのです。
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そして3日が経ちました。
白姫は、アップルパイを作ろうと意気込んでいました。
家の前の木から採ったりんごを切ろうとした時です。
「アップルパイでも作るのかい、お嬢さん。」
たくさんのりんごが入ったかごを持った老婆が、白姫に話しかけました。
「あたしのりんごは、真っ赤で綺麗で、とても美味しいけど...味見して、こっちの方がよかったら、買ってくれないかい?」
老婆が白姫に、りんごをひとつ差し出します。
白姫がそのりんごを受け取り、食べようとした時です。
「お姉さま! 食べてはなりません!」
誰かが家の中に入り、白姫が手にしていたりんごを、叩き落としたのです。
りんごは、床をころころと転がっています。
「あ、あなた......雪!」
そう、雪姫が助けに来たのです。
いなくなった白姫が心配になり、そしてこっそり女王様をつけていたのです。
猟師にも話を聞き、不審に思った雪姫は、毒りんごを作り、老婆になりすます女王の後を気づかれないように...
つまり、りんご売りの老婆は、女王様だったのです。
雪姫は、老婆を押し倒し、かごからりんごをひとつ取り出し、無理やり老婆の口に押し当てます。
老婆はシャクリ、と...りんごを食べてしまいました。
そしてすぐに、動かなくなってしまいました。
「雪......助けてくれたの?」
「ごめんなさい、お姉さま。
今まで、無愛想で....ほんとうは、お姉さまが大好きだったのですよ。」
「今までのことなんていいわ!
雪、あなたは...わたしの、命の恩人よ!」
感謝しきれないとばかりに抱きつく白姫を、雪姫も抱き返します。
しばらくして、白姫はお礼にと、アップルパイ作りを再開しました。
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綺麗に出来上がったアップルパイを囲み、気合を入れて作ったアップルジュースを片手に、ふたりは乾杯しました。
白姫が先に一口....とても美味しく出来ていると、嬉しそうに微笑みました。
それを見た雪姫も、楽しそうに、一口食べ、そしてジュースを飲みました......
ジュースを飲んだ雪姫は、どさりと、床に倒れ込みました。
それを見た白姫は.........高らかに笑いました。
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『それは建前でございます、白姫様。』