表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

本音と建前

「鏡よ鏡、本音と(たて)(まえ)、美しいのはどちら?」




************




女王は、白姫だけを殺そうとしました。


人に愛される姿も、また美しい。

人に愛されない姿は、美しくない。



猟師に逃してもらった白姫は、森の中をさまよっていました。


すると、小さな家を見つけました。


お腹の空いた白姫の鼻に、美味しそうな匂いが家からします。



家に入ると、小さなお皿が7つ、中には美味しそうなスープが入っていました。

白姫は我慢しきれず、全部食べてしまいました。


満腹になった白姫を、今度は睡魔(すいま)が襲います。


眠れる場所はないかと、家の中を見て回ると、小さなベッドが7つ並んでいました。


シーツが綺麗に(そろ)っていないことなど気にせず、ベッドの上に横たわって、ぐっすり眠ってしまいました......




************




仕事から帰ってきた7人の小人たちは、大騒ぎ!


晩御飯が食べられた!

誰かがベッドで寝ている!


見てみると、それはそれはとても美しいお姫様...白姫でした。



「ごめんなさい、とてもお腹が空いていたの。

それでつい食べてしまい、そのまま眠っちゃって...小人さんたちのお食事、今からわたしが作りますから、どうか許してください。」


小人たちは白姫が謝り、料理を作るだけでなく、寝床まで整えてくれたその優しさから、この家に寝泊まりしてよいと言いました。



それからは、小人たちが仕事に行っている間に、白姫が家事をすると決めたのです。




************




そして3日が経ちました。


白姫は、アップルパイを作ろうと意気込んでいました。

家の前の木から採ったりんごを切ろうとした時です。



「アップルパイでも作るのかい、お嬢さん。」


たくさんのりんごが入ったかごを持った老婆が、白姫に話しかけました。


「あたしのりんごは、真っ赤で綺麗で、とても美味しいけど...味見して、こっちの方がよかったら、買ってくれないかい?」


老婆が白姫に、りんごをひとつ差し出します。



白姫がそのりんごを受け取り、食べようとした時です。


「お姉さま! 食べてはなりません!」



誰かが家の中に入り、白姫が手にしていたりんごを、叩き落としたのです。

りんごは、床をころころと転がっています。


「あ、あなた......(ゆき)!」



そう、雪姫が助けに来たのです。


いなくなった白姫が心配になり、そしてこっそり女王様をつけていたのです。


猟師にも話を聞き、不審に思った雪姫は、毒りんごを作り、老婆になりすます女王の後を気づかれないように...



つまり、りんご売りの老婆は、女王様だったのです。


雪姫は、老婆を押し倒し、かごからりんごをひとつ取り出し、無理やり老婆の口に押し当てます。


老婆はシャクリ、と...りんごを食べてしまいました。


そしてすぐに、動かなくなってしまいました。



「雪......助けてくれたの?」


「ごめんなさい、お姉さま。

今まで、無愛想で....ほんとうは、お姉さまが大好きだったのですよ。」


「今までのことなんていいわ!

雪、あなたは...わたしの、命の恩人よ!」


感謝しきれないとばかりに抱きつく白姫を、雪姫も抱き返します。


しばらくして、白姫はお礼にと、アップルパイ作りを再開しました。




************




綺麗に出来上がったアップルパイを囲み、気合を入れて作ったアップルジュースを片手に、ふたりは乾杯しました。


白姫が先に一口....とても美味しく出来ていると、嬉しそうに微笑みました。


それを見た雪姫も、楽しそうに、一口食べ、そしてジュースを飲みました......




ジュースを飲んだ雪姫は、どさりと、床に倒れ込みました。



それを見た白姫は.........高らかに笑いました。




************




『それは(たて)(まえ)でございます、白姫様。』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ