すべての過程であり、始まりである物語
ちょくちょく投稿していこうと思います。
お暇であれば、読んでいただけると幸いです。
大地に雨が降り続ける
悲しみに打ちひしがれた男が一人戦車の上で座っている
ーー後藤 秀
彼は『夜叉』である
第三次世界協力大戦において、世界連合に対抗していた一部の非世界協力組織『聖夜叉』
彼は、聖夜叉 陸軍隊長であった
「我が…仲間よ…俺の力不足なために…」
秀が率いる陸軍は、すでに壊滅してしまい残った兵士は秀を除いて誰一人としていなかった
あたりは、多くの人間や夜叉の死体が転がっている
辺りでは戦車独特の鈍い音が鳴り響く
一人の男が戦車から降りてきた
「残念だネエ!聖夜叉の英雄くん?ええっ!?無様!無様!ハハハッ!!」
秀の周りには多数の戦車が並んでいた
「俺のことを助けに来たのか…?」
「ハズレ。実はネエ、秀。君は夜叉王より危険因子として認識されたんだヨ!おめでとう!」
男は一人で拍手をしている
他の戦車からも続々と夜叉が降りてきた
「そっか…俺、尊敬してた人も…仲間も、お前という大切な親友もっ!!全部、全部、失ったんだ…」
他の夜叉たちはニヤニヤと不気味な笑みを浮かべて秀を嘲笑う
「報われないネエー、俺も最近さあ、お前のその妙に正義感強いとこ?だいっ嫌いだったんだよ!」
ニヤケながら男は唾を撒き散らす
「俺の…言うこと聞いてくれないか?」
しばらくして秀が口を開いた
「ふっ、裏切られた相手に何か頼もうって!?こんな馬鹿げたはなしなんて聞いたことがあるか!?ええっ!?」
笑いが巻き起こる
秀は一枚の写真を取り出した
写真には、秀と一人の子供と二人の男がいた
「俺の…一人息子…この子をどうかっ!!どうか守ってやってくれ!!」
笑い、笑い、笑い。
ただ一人あの男だけは、何故か頭を抱えうずくまる
秀の目からは、赤い涙が滴り落ちる
周囲からは殺れ!殺れ!というコール
「頼むよ…」
秀は笑った。
そこには、すでに死を悟り最後まで強く生きようとする一人の戦士がいた
「クサイ。」
閃光が辺りを覆い尽くす
こうして、英雄の命がまた消えた
*****
生臭い血の匂いが充満している、暗い小さな部屋の中。
一つの小さな命が生まれた。
「あなた、産まれたわ、」
その命は、複雑に糸で結ばれた運命に囚われて産まれた
運命に縛り付けられた子の名は…
後藤平太
この子供は後に英雄と呼ばれ、光と共に消えて無くなる
運命からは逃れられない。