1話
カンティークムホムネースである少年はつい先日パートナーである青年に死なれてしまった。
青年はムーシクスとしての才能があったため、周りからの圧力に耐えきれずにストレスが溜まった結果自殺を選んだのだった。
青年は自分の頭にウィンチェスターライフルにパイプを取り付け強化した銃を突きつけ、少年の方を見て───。
「お前も可哀想だな…こんなパートナーで」
と言うと自嘲気味にゆるりと笑って引き金を静かに引いた。
────パンッ!!
青年の撃たれた頭からおびただしい量の血が噴き出る。
「あっ…あぁ……」
パートナーに死なれてしまった少年の口からは言葉とはいえないうわ言しか出ない。
あれから実に五日が経った。
少年の体にはあと、ほんの僅かしかクレアーレが残っていない。
もうたって歩くこともままならない。しかも、運の悪いことに少年たちが暮らしていたのは街から離れた森の中だった。
森の中にも道はあるが、狼が繁殖しているこの道を使う人はあまりいない。
少年はなんとかしようと地を這いずりながら少しずつ少しずつ道を進んでいく。
だが、見た目は人間と同じカンティークムホムネースを見分けれる狼などいないわけで気づけば周りを狼に囲まれていた。
1匹の狼が様子を見ながらこちらに近づいてくる。
(もう…駄目だ)
少年は自分の足が、腕が、身体が、狼に折られるのを覚悟して目を閉じた。
だが、どこからか柔らかな声が聴こえてきた。
「ラッリー・リム二フェリー・モーディー」
「森の動物達よ静まりなさい。」
誰かがそう言うと決して大きくはないのに美しく繊細な歌声が森じゅうに響く。
狼は唸るのを止め、尻尾を丸めて森の奥へと帰って行った。
「……っ」
礼を言おうにも声が掠れて出てこない。
「あなた大丈夫!?ねぇ!ちょっと!」
肩を強く揺すられるのが分かる。だが、少年はクレアーレが殆ど残っていない───所謂餓死寸前だったのでそのまま気を失ってしまった。