プロローグ
電子技術の代わりに蒸気機関が主力のまま発展を遂げ、
人々の大半は音楽に魅了された世界。
────ヴェイパームーシカムンドゥス。
この通称、ヴェイパーカムスには《 ムーシクス 》と呼ばれる音楽家達がこぞって欲しがるある物があった。
それは《 カンティークムホムネース 》と言われる、歌を歌うためだけに造られた感情を有す人形であった。
カンティークムホムネースの動きの原動力は《 クレアーレ 》と呼ばれるムーシクスの創造力であった。
クレアーレの質や量はムーシクスがどれだけ音楽に情熱を注ぐかによって大きく左右する。
カンティークムホムネースは人間が食べ物の栄養を体内に溜め込むようにクレアーレを体内に溜め込んで動く。
そして、そのクレアーレを消費して歌を歌うことによって色々な能力を発揮する。これを《 モディー 》という。
どのようなモディーを発揮するかはカンティークムホムネースによって様々である。
ムーシクス達はカンティークムホムネースを我が子のように育て、自分の歌を最高の状態で歌えるように調整していく。
その一方で自分の理想だけを考えカンティークムホムネースをただの歌う為だけの道具として扱うものも少なくはなかった。
いくら機械とは言えカンティークムホムネースは心を持つ、始めは産まれたての赤子と同じような。育てる人間によってその心を歪めることも容易にできる。
そして、直接的な害は無いもののムーシクスの手によって人格を歪められたカンティークムホムネースがここにまた1人いた。