Limb
耳の中にまで蝋のように流れ込むその人の声
道行く一塊の群衆
ただ整然と形作られたそれを破るように一人が飛び出し、花と散る
花弁のような四肢
花弁のような血液
花弁のような臓物
花弁のような
花弁のような ただの肉塊
花弁のような ひとつの死
時の流れが滞る 灰色の都会で
舵をとる者もない混沌は なにもかも人が生んでいる
手を伸ばしては 刈り取られ
声を上げては 塞がれる
揃った足並みの中で 誰もが下駄を履きたがる
誰もが上を向いて 胸まで覆う水から逃れたがる
さんざめくエゴ
助けを待つ腕と爪先立つ足
耳の中まで埋め尽くすその人の声