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第02章 悪霊さんいらっしゃ~い第1回

 マイナマイナのセリフと共に、壱人とイッQは見知らぬ場所に移動した。花で飾られているテーブルと、その周りに一人掛けソファが3つ置かれている不思議な空間だ。


 ソファに座るように(うなが)され、壱人とイッQがその通りにすると、マイナマイナは黒い人魂を持って少し離れた。2人が見守る中、床に人ひとり分の大きさの光のサークルを描く。その中に黒い人魂を入れてしばらく待つと人魂は人の形へと変わっていき、形の整ったところで光のサークルは消えた。


 人の形に変わった人魂=悪霊は、年齢不詳の男だった。痩せて眼鏡を掛けており、いかにもプログラマーという雰囲気である。マイナマイナは、その悪霊を空いているソファに座らせ、自身は少し離れた観覧席に座り、そしてそこからスケッチブックでカンペを出した。


『トーク、スタート!』


 その乱暴なやり方に面食ったが、今は気にしている場合ではないので、壱人は悪霊の方を見た。

 やや下を向き、どこを見ているのか分からないところが気になったが、「あの」と声を掛けると聞こえたのか壱人の方を向いたので、話が出来そうだと思い、開発環境の設定で困っている事を相談した。しかし…


「"何もしてないのに止まった"、じゃねーんだよ!」


 突然、悪霊は誰も居ない空間に向かって怒鳴り出した。


「パソコンに詳しいからって何でもかんでも聞いてくるなー!ワー**やエ**セルならまだしも、パ**ーポイントなんか使ったことねえよ!」


 (はな)から人の話など聞いていなかったようで、自分の言いたい事だけ叫んでいる。困ってマイナマイナの方を見ると『先ずは悪霊さんの話を聞こう!』と書かれたカンペを出されたので、仕方無くしばらく黙って聞くしかなかった。しかし悪霊の話は長く、中々終わらないため、壱人はイッQに話し掛けた。


「良く考えたらイッQさんは開発環境の設定をした事があるんだよな?」


「あ、まあ」


「なら設定の仕方は分かるだろ?」


 近くに解決の糸口があった事に壱人は心が浮き立ったが、イッQは間髪入れずに言い切った。


「それは無理」


「なんで?」


「10年前に1回しかやってない事なんか覚えてない」


 正確にいうと「苦労した事」だけ覚えていて、それ以外は忘れてしまったので、この件に関して自分は役に立たないとイッQは申し訳なさそうに答えた。

 良い所に気付いたと思ったのに役には立たず、壱人は仕方なくまた悪霊の話を聞いていたのだが、時間が経つにつれ、だんだんと意味不明な言葉が増えていった。


****な****だ***れはーッ!

パス***グチ****チャじゃ****えか!

***システム変更する****前にバックアップは取ってある****だろ***な!

無い****!***ざけるな!

****なんで****変更****前にバックアップしな****いんだ!

****この状態から*****せるとか***かしいだろが!

途中****が一番*****倒くせー*****だよ!

設****するこっちの身*****なれよ!


 しばらく耐えていたが、ずっとこんな調子だったためマイナマイナに中止を申し出る。


「この魂を浄化する。そして天の門よ、この魂を受け入れ給え」


 浄化の儀式が行われ、魂は天へと昇っていく。見送った壱人たちは、良く分からない内に元の部屋に戻っていた。


「役に立ちましたデスデスか?」


 マイナマイナの問いに「あまり…」と、結局、疲れただけの壱人が答える。「そう上手くはいかないよな」とイッQも溜息を()く。

 最後の望みも絶たれ、壱人はまた落ち込んでしまった。


「どうすればいいんだ…」


 そんな壱人にイッQが声を掛ける。


「できる事なら、まだあるぞ」


「え、何?」


「初めからやり直すんだ」


 イッQは、数時間やって成果が出なかった事も、先程の良く分からないコーナーの事も、何も無かったようにそう言った。


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