第07.5章 悪霊さんいらっしゃ~い第6回
「悪霊さんいらっしゃ~い!」
いつものマイナマイナの宣言の後、壱人とイッQは花で飾られているテーブルとその周りに一人掛けソファが3つ置かれている不思議な空間に、またしても移動した。
しかし二人の対面に座るはずの悪霊が見当たらない。マイナマイナも黒い人魂を持ってはおらず、キョロキョロと辺りを見渡したがそれらしいものは見つからなかった。
「マイナマイナさん、悪霊がいませんよ」
しばらく探した後に壱人が尋ねると、マイナマイナはテーブルの上を指差して言った。
「そこにあるのデスデス」
確かに、前回までは何も置いていなかったテーブルの上にボロボロのノートが置いてある。先程から気付いてはいたのだが、後で使用するものか演出上の小道具だと思っていた。
「これが悪霊ですか?」
「そうデスデス。強い思いのこもったものは魂が宿り、そして悪霊にもなるのデスデス」
その説明が正しいのかどうか良く分からなかったので、壱人もイッQも「そうなんだ」という薄い反応しかできず、さらにこの後に何をするのか分らなくて困った壱人はマイナマイナに声をかけた。
「えっと、それでこれはどうすれば良いんですか?」
「その中の文章を読むのデスデス」
そう言われ、壱人は恐る恐るノートを取り上げて中を開く。中身は日記の様であった。壱人はそれを読み上げる。
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◯月△日
ゲームとタイアップした*******が始まる。
同ジャンルの作品や、ユーザー層が重なる作品と比べられて散々だった。
新しい試みやいろんな工夫をしているのにばかにしやがって。
×月〇日
徐々に人気が出きた。キャラクターの成長を丁寧に書いているおかげか、それぞれにファンが付くようになった。
自分も作品の1ファンとして純粋に楽しんでいる。
ゲームも盛り上がってきて、ほっとした。
▽月×日
*******が口出しするようになった。
人気が出てくるとこれだ。路線変更でおかしくならなければいいが…。
△月▽日
露骨に*****を紹介をするような内容になってきた。
*******に出たらゲームでも需要が増えるのは分かるがやり過ぎだ。
今まで積み上げてきたものが台無しではないか。
□月△日
*******の連中ときたら****のことばっかり考えてるのだろうか?
もっと面白い作品を作る事に興味を持ってほしい。
この頃は*******をチェックした後はむずがゆくなる。
☆月□日
******が終わったら、また******が始まる。
ただただ****を注ぎ込ませるような構成になってしまった。
離れていくユーザーも出てきた。
◇月☆にち
****のないキャラクター 使 捨て。
逆に****のあるキャラクターを出して延命し いる。
いつま 持つのか?
◎がつ◇にち
やと さぎょう おわった
今日 ******* みた むずがゆい
■がつ ◎に
むずがゆい む かゆい
*******から さしいれ きた
うまかっ です。
◆ がつ
かゆ うま
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読み終った壱人はげっそりしてノートを閉じた。そしてテーブルの上にノートを置くと、日記の最後の文を読んで懸念した事をイッQに質問する。
「これあれだろ?大丈夫か?」
「日記ネタの定番だから大丈夫だろう」
かなり簡単にイッQはそう答えた。
「元ネタが気になる人は『かゆうま』で検索するのデスデス」
マイナマイナまでこの調子だったので、壱人はもう考えない事にした。
この後、ノートはマイナマイナによって浄化され、ノート(?)の魂は天国に旅立っていったのだった。