第03.5章 悪霊さんいらっしゃ~い第2回
「あのコーナーを始めますデスデスよ」
突然、マイナマイナが新しく捕まえた黒い人魂を持って、壱人とイッQに話し掛けてきた。オリジナルゲームのアイディア出しをしていた二人は何の事か分からず呆然としていたが、そんな事はお構いなしにマイナマイナは宣言する。
「悪霊さんいらっしゃ~い!」
問答無用で壱人とイッQは花で飾られたテーブルのセットに連れていかれた。しかしあのコーナーは、ゲーム作りに関係のある悪霊から困っている箇所について話を聞くためのものであり、特に問題が起こっていない今はやる意味が無い。だから壱人は準備中のマイナマイナに恐る恐る質問した。
「このコーナー、必要ですか?」
するとマイナマイナは即答した。
「私の出番を増やす為に必要なのデスデス」
その言葉に二人は納得する。今回は出番が少なかったもんな、と心の中で呟き、仕方無く付き合う事にした。
マイナマイナは光のサークルを描き、黒い人魂を人の形に戻す。悪霊は年齢不詳で眼鏡を掛けて黒いTシャツにジーンズを穿いていた。これだけだと前に出てきた悪霊と変わらないが、一応違う霊だ。
その悪霊を一人掛けソファに座らせ、壱人とイッQもスタンバイさせると「では始めますデスデス」と、また観覧席の方に移動して、あのカンペを出す。
『トーク、スタート!』
そうはいっても、壱人は聞きたい事が特に無いので、どうしようかと思っていたら、悪霊の方が何かブツブツと言い出した。良く聞いてみると、鯖という単語が何度も出てくる。だから「鯖がどうかしたんですか?」と聞いてみたのだが…
****中**に*****趣**味****動画*****見て*******じゃねえよ!
***回線*******遅**く****なる****が*********
お前ら****動**画******為に****高速**回**線*****無い***ぞ!
****サーバ****に負**担****かけ****な****
初めからすでに支離滅裂である。マイナマイナの方を見るが『もっと盛り上げて!』という無茶なカンペが返ってくるだけだった。
****体****何万**人******規**模のサーバ****アク****セ****スト****なんか****でき**る****訳な**い******
******識で**********考****ろ**!
****ア****ス****が集****するの****初****一週**間****だけ****その**激****減****だから****だけの**為********増やせ****ねえ******よ!
前と同じで、自分の言いたい事だけを、誰もいない空間に向かって怒鳴っている。なんとなく苦労した事は分かったが、それ以外は知らない単語ばかりで理解できなかった。
しばらく聞いていると言いたい事を吐き出したのか、空中を見つめて黙ったままになったので、マイナマイナに合図を送り、浄化の儀式をしてもらう。悪霊は浄化され、魂は天へと昇って行った。そして儀式が終わると元の部屋へ戻された。
「参考になりましたデスデスか?」
「これから作るゲームにサーバは関係無いので…」
イッQは咄嗟にそう答えてしまったが、せっかくのマイナマイナのコーナーである。あの支離滅裂な悪霊の話の中から、何か役立つ事はないかと捻り出そうとしたが、ダメだったので平凡な感想を述べた。
「とにかくサーバの管理は大変だという事は分かりました」
だが当のマイナマイナは、あまり気にしていないようでこう言った。
「このコーナーは毎回こんな感じデスデス」
「毎回有るんだ、このコーナー」