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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第二章 盤上の裏側
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68マス目 支配者の末路


 ネストが上の階に戻ると、ヴァーデはまだ唸っていた。

 

「おいロネット! さっさと私を治療し……、え?」


 騒ぐのに夢中で、ネストが視界に入るまで勘違いをしていたようだ。

 ヴァーデの表情が見る見るうちに青ざめていく。


「ろ、ロネットは!?」


「死んだわよぉ。

彼、最高のおもちゃだったわぁ。

うふふふふっ」


 ネストは思い出すようにして楽しそうに笑う。

 その狂気が、ヴァーデの全身を恐怖で包み込む。

 

「や、やめて……、助けて……」


 ヴァーデは涙を浮かべて懇願するが、ネストが足を止めることはない。


「さぁて、聞きたいことがたぁ~っぷりあるのよぉ。

大人しくしててね? 私はうるさいのは嫌いなの」


 ネストは屈みこみ、ヴァーデの目を覗き込む。


「竜の魔道結晶はどこぉ~?

まずはそれを言ってもらわなくちゃ」


 ネストの質問にヴァーデは答えない。

 いや答えることができない。

 本当に知らないのだから。


「ま、待て! あなたは騙されています!

私はあんな人間少しも知らないんですよ!」


 それを受けて、ネストは立ち上がった。

傷ついた身体をゆっくりと伸ばし、唇の血を舐めとる。


「そぉねぇ、……その可能性も絶対無いとは言い切れないわぁ」


「で、でしたら……」


 ヴァーデの言葉を遮るように、ネストは口を開く。

  

「でもねぇ、ハッタリだとしたら出来過ぎなのよねぇ」


 ネストはヴァーデの周りをゆっくりと回る。

 崩壊した部屋にコツコツと靴音を響かせ、ヴァーデの考えを否定する。


「あの男はベヨネッタ家と、この地下街を行き来する。

これがどれだけの事かわかるでしょう?

そう簡単にできるものではないわぁ。

それに、ブルーローズの目的も知っていた。

情報屋にも精通してるんじゃないかしらぁ?」


 ネストはヴァーデの正面に立つと、もう一度その瞳を覗き込む。


「あなたの権力なら、全部可能なのよねぇ。

それに、あなたは腕のいい情報屋とお友達。

な~んて話も聞いたことがあるわぁ」


「違う……、誤解だ……、本当に知らない……」


「もう一度聞くわねぇ~、竜の魔道結晶はどこにあるのぉ?」


 ヴァーデは全身を震わせ、必死に次の言葉を考えるが、

恐怖と痛みで頭が回らない。

 頭が真っ白になり何も浮かんでこないのだ。


「そんなぁ、ああ違う、嘘だ……。

全部あの男が仕組んだデタラメなんだよぉ!!!」


「態度に不満があった? 金銭的な問題? うふふふっ。

だめよぉ、部下は大切にするか、ちゃんと後始末をしなきゃねぇ?

うふふふふっ、あはははははははははははははははははははは」


 もうヴァーデが何を言っても、ネストは聞き入れない。

 魔道結晶のありかを言うまで、この恐怖は終わらない。

 だが、ヴァーデ本当に何も知らない。


「おい! ロネット!? 戻れ! 私を守れ!

答えろよ、答えろってば! おいロネットォォ!!」


 死人にすがるヴァーデに、ネストは少し苛立った。


「うるさいのは嫌いって言ったでしょ?」


 ネストはヴァーデの耳たぶを優しくつまむと、

血が出るまで爪を立ててから、力任せに引き千切る。


「ひだぁぁぁぁぁあああああぁぁぁ! ひだいっひだいっひぃぃぃぃ」


 千切れた耳たぶを数度揉んでから、ネストは一滴の血を舐めとった。


「答えて? 竜の魔道結晶はどこぉ?」


「いやだぁぁ……、ごめんなざいぃぃぃ。

ゆるじで、ゆるじで、ゆるじでぇぇぇぇ……」


「許してじゃなくって、教えてちょうだい」


 ネストはヴァーデの血の吹き出す耳に手を当てると、

一気に傷口に指を入れて、荒々しくかき回す。


「んがああああああああああああああああああ!!!!!!!」


 ヴァーデは打ち上げられた魚のように、必死でもがいて泣き叫ぶ。

 そのせいで足の傷口も徐々に広がってきた。


「これで喋ろうとしないなんて、

随分すごい人に口止めされているみたいねぇ。

でも地下にあることは既に分かってるの。

地下に眠る秘宝を、地下の支配者が知らないわけないでしょ?

仲間の切り方が下手だとそうなるのよぉ。 

……ねぇ聞いてる?」


「っ……、っっ! …………っぁ!」


 ヴァーデは全身を痙攣させて、白目を剥いてる。

 痛み、恐怖、絶望。

 自らが人に与えてきたもの全てを、ヴァーデはその肉体に刻まれる。

 支配者の末路がそこにはあった。

 

「この程度で気絶?

こんな拷問、赤ん坊でも我慢できるわよぉ」


 ネストは首に巻きなおしたスカーフを、もう一度ほどいた。

 魔力を調整して、スカーフが淡い黄色の光を帯びる。

 そのまま足に刺さっている曲剣の刃に、そっと当てた。


「んがぎうごぉおぉぉぉぉおぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 人とは思えないような声を出しながら、ヴァーデは飛び起きた。

 傷口から電流を流されれば当然と言えるだろう。


「まだまだこれからよぉ。

私の隠れ家で、喋るまでたっぷり……、たぁ~っぷり可愛がってあげる。

うふふふふっ、うふふふふふふっ、あはははははははははははははは」


「ああ、……嫌だ。

誰か助けて、助けて、誰でもいい助けて!

私を助けて! 謝るから! お願いだから助けて!

いやだいやだいやだいやだ! いやだぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁあ!!!」


 その日、源竜会は壊滅。

 戦闘時の倒壊に巻き込まれ、ショーを見に来ていた貴族が49名死亡。

 184名が重軽傷。

 そのほか、行方不明者12名の大惨事となった。


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