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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第二章 盤上の裏側
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47マス目 思い出の赤い実


「申し訳ありませんでした!」


 勝利後、俺が真っ先にしたのはセルバさんへの謝罪だった。

 試合とは言え、人の家をあれだけボロボロに壊しておいて、そのまま知らんぷりというわけにもいかない。


「大丈夫でございます。 あれほどなら二日で直せますので」


 その言葉を聞いて、俺は気まずそうに白状した。


「えっと、実は一階のいろんな場所に、爆破結晶を埋め込んでるので、

作業に入る前に、それを取り除いてもらった方が……」


 それを聞いたセルバは、急いで通信結晶で指示を送る。


「作業を一時中断! 別館から退去してください!」


 こちらに振り向いたセルバさんの顔が怖い。


「埋め込んだとは、どういうことですか?」


「……作戦Cです」


 セルバの頭に?マークが並ぶ。

 その疑問に俺はすぐに補足した。


「いやその、さっきの作戦が失敗した時のために、

一階全体に等間隔で、爆破結晶を柱とか床下に仕掛けたんですよ。

一気に爆発すれば建物が崩れるでしょうけど、

崩れる前に地下に避難できるように、床下に穴を用意してまして……」


 まだ説明途中だが、セルバさんが頭を抱えてしまった。

 勝つために必死だったとはいえ、言葉にしてみるとひどいものだ。

 もはや自分ですら、少し引いている。


「オーっホッホッホッホッホ! 流石ですわ!」


 いつもの高笑いとともに、エリザベートが姿を現した。

 負けたというのにどこか嬉しそうに見える。


「……えっと、怒ってないのか?

結構エグい事とか、やっちゃったけど」


「怒るなんてとんでもありませんわよ。

わたくしに勝つなら、そのくらいやってもらわないと困りますわ」

 

 機嫌良さそうに話すエリザベートに、セルバさんが割って入る。


「お嬢様。 別館の件はどういたしましょうか?」


「後でいいですわ。 それよりテンダーをわたくしの部屋に」


 エリザベートはこちらに向き直り、扇子を大きく広げる。


「安心していいですわよ。 約束は守りますわ。

明日までに国王と謁見できるように、話を通しておきますわね」








 明日の早朝に屋敷の前に集合。

 エリザベートとそんな感じの約束をして、俺は屋敷を出た。

 ついでに明日返すと無理を言って、馬車を貸してもらう。

 慣れない手つきで馬に鞭打ちながら、俺は腕時計の文字盤を見る。


「11時半か、たしかそろそろリックが屋敷に来る頃だ」


 俺は少し急かせるように、馬を走らせる。

 リックとも会っておきたいが、今はやることが多い。

 謁見の場はエリザベートなら何とかしてくれるだろうから、こっちは王を説得する材料が欲しい。


「とにかく、殺人犯をさっさと見つけないとな」

 

 俺は調べておいたエルトリック家の住所を確認しながら、何度も馬車を壁にぶつけて、危なっかしい操縦で走らせる。


「……やっぱり車とは全然違う。

これは、……やばいかも知れない」


 手汗で手綱をベタつかせながら、危険運転の男は公道を走る。








「どうなってんだ?」


 何度も壁にぶつかり、塗装の剥げた馬車でやっとの思いでたどり着いた場所。

 そこには井戸があるだけの、何もない空き地だった。


「住所が間違ってる?

いや、セルバさんに調べてもらったんだし、それはないはず……」


 俺は近くを通りかかった通行人の男性に声をかけた。

 

「……あの、すいません。

ここのあたりに、エルトリックって方の家がありませんか?」


「あんた、エルトリックさんの関係者?」


「まぁ、そんなもんです」


 調べたいと言ったら、記者と間違われて煙たがられるかもしれない。

 関係者を装ったほうが話が聞きやすいだろう。


「……えっと、言いにくいがエルトリックの人間はもういないよ。

知ってるだろ? 例の殺人事件」


「そりゃ、まあ……」


「家族全員、国から逃げちゃったんだよ。

殺人鬼に怯えてね。

……かわいそうで見てられなかった」


 男性は少し顔を背けると、「もういいか?」と聞いて立ち去り始める。

 俺はその後ろ姿に礼を言い頭を下げた。

 残酷な話だ。

 しかし困ったことに、何も情報が得られなかった。


「……どうしたもんか」


 そう言いながら腕時計に視線を落とすと、もうすぐ12時になるところ。

 この時間ならちょうど居るかもしれない。


「……打つ手もなくなったし、会いにいくか」


 俺は場車に乗り込むと、汗でベタついた手綱を拭いてから、しっかりと握り締める。

 数回深呼吸をしてから、多少力加減を間違えて強すぎる力で手綱を振った。

 







「……死ぬかと思った」


 計三回の九死に一生を乗り越え、俺は広場へたどり着いた。

 近くに馬車を止めると、トマトの入った紙袋を抱えて広場へ入る。


「お、いたいた」


 シランは相変わらずボーッとしていた。

 どうやら空を見るのに夢中なようで、こちらに気づいていない。

 せっかくなので、いい感じに冷えたトマトをほっぺに押し付ける。


「んひょん!」


 シランが変な声を上げて飛び跳ねる。

 その姿に、俺は笑いをこらえきれなかった。


「ぶふっ! あっははははははははは!

ご…ごめんな、そんなビックリしたか、んぐふふふっははははは!」


「……誰?」


「ん? ああ、悪い悪い。

あんまりボーッとしてるもんだから、心配になってな。

俺はトマトを配る優しいおじさんだ、よろしく!」


「そうなんだ、……おいしそう」


 そういうシランの手には、既にトマトが握られている。

 いつの間にとったんだか。

 

「これ食べていいの?」


「ああ、好きなだけやるよ」


 その言葉に、シランは嬉しそうな顔をしながらトマトにかぶりつく。

 とにかくこれで、シランを地下倉庫に連れて行けばオーケーだ。

 ……この言い方だと、誘拐みたいだな。


「……おじさんはお父さんの知り合いとか?」


「いいや、なんの変哲もない、どこにでもいるおじさんだ」


「そう」


 シランは興味なさそうに、トマトを食べ進める。

 聞かれたから答えたんだが……、まあいいや。

 このまま地下倉庫に連れてくと、シランが警戒するだろうし、フラウトと一緒ならシランも安心だろう。


「ちょっと合わせたい人がいるんだ。 今時間大丈夫?」


 傍から見たら、怪しい男が少女を連れ去ろうとしている、そんな光景に見えるかもしれない。

 小さい女の子を助けるのって、難しいな。


「これ全部食べていいなら……」


 シランは俺の持つ紙袋を指さす。

 念の為に20個ほど買ったのだが、まさか全部欲しがるとは。


「こんな量、食べられるのか?」


 シランは少しドヤ顔で頷いた。

 俺としても、食べられると言うならば渋る理由もない。

 交渉は成立だ。


「向こうに馬車がある。

移動中に食べてていいぞ。

それじゃ、行こうか」


 二人は馬車が止めてある場所に向かう。

 しかし、その近くで足を止めた。

 馬車の前に怪しい二人組がうろついているのだ。


「ちょっとまってて」


 俺はシランに袋を預けると、怪しい男達に声をかけた。


「うちの馬車に用か?」


「い…いえ、何でもないです!」


 思った以上にあっさりと引き下がる。

 不審な男たちはそのまま何処かへ逃げ出してしまった。


「この先戦う敵も、あんなだったら楽なのになぁ」


 ため息をこぼしながら、馬車の扉を開ける。

 座席に置いてあるのは、スマートフォンだ。

 そこからミュージシャンの音楽が、小さめの音量で流れている。


「思ったより効果があったな、泥棒対策」


 中から歌が聞こえたら馬車は盗まれにくいと思ったが、上手いこといったようだ。

 高そうな馬車だし、こういう対策でもしないとすぐに狙われる。

 俺はスマホの電源を落とすと、シランに手招きをした。


「もう大丈夫なの? トマトのおじさん」


「…………呼び方戻ったな」


「なにが?」


 首をかしげるシランの頭を優しくなでると、場車に乗り手綱を握る。


「さぁ、行くぞ! しっかり掴まってろよ!」


「え? う…うん!」


 馬の声が響き、車輪が回る。

 向かう先は学校!


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