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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第二章 盤上の裏側
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41マス目 変えられぬ戦略


「で? わたくしに話とは、一体何の相談ですの?」


 屋敷に戻った俺は、すぐにエリザベートの部屋を訪ねた。

 現在、王様との橋渡しになってくれそうな人物は彼女しかいない。

 問題はどうやって事情を呑み込んでもらうかだ。

 国が滅ぶと言っても、信じてくれるわけがない。


「……国王様の会合があるそうだな」


「ええ、そうですわ。 

わたくしも護衛として参加いたしますもの」


 ……そして、その護衛中に、エリザベートは殺される。

 俺が何も出来なかったら、彼女は数日の命だ。


「確かこの国の最高戦力で、王様の馬車を固めるんだよな?」


「よくご存じですわね。 テンダーから聞きましたの?」


「まあ、ちょっとな」


 するとエリザベートは、少し不機嫌そうな顔で、頬を膨らませる。


「まったく! あのお喋り執事には困ったものですわ!

機密事項をペラペラ喋ってくれまして……。

まあいいですわ。 でも、それがどうかいたしましたの?」


 ……ここから作戦の問題点を追及してみるか?

 もし、間接的にでも俺の意見が王様に届けば、作戦の見直しくらいはあるかもしれない。

 会合が中止にならなくても、王様と護衛が無事に戻ってくればそれが一番の成功なのだから。


「その作戦、見直してもらうってできないか?

もっと別の作戦にするとか…」


「出来ませんわ」


 即答だった。


「今回の作戦は、お父様が直々に発案いたしましたの。

作戦の段取り、兵の役割決め、全て終わっていますわ。

今更新しい案は、わたくしでさえ通せませんわよ」


「……そう、だよな。

悪かったな、変なこと言って」


 これだけの一大イベント。

 前々からの準備があるのは当然だろう。

 考えが甘かった。

 素人の意見を通してもらうのは無理だ。


「でもいきなりどういたしましたの?

作戦に穴でも見つかりまして?」


「えっと、穴があるかもしれないって思ってな」


 作戦の穴というよりは、戦力が足りないのだと思う。

 だが本当にエリザベート、エリザベートの父親、リックの三人を倒せる奴なんて存在するのだろうか?


「穴を見つけたということは、具体的な作戦内容も知ってますのね?」


「まあ、大体はな。

ここで喋って大丈夫か?」


「構いませんわ」


 俺は前の世界でテンダーから聞いた話の内容を、思い出しながら語る。


「確か馬車に王様を乗せて、

お前と、お前の父さん、そしてお前の幼馴染が護衛にあたる。

それに加えて街に増援を待機させ、危なかったら連絡して増援を待つ。

これで合ってるか?」


「ええ、だいたい合ってますわね。

でも、作戦のほころびは感じませんわよ?

少数精鋭で動くので、敵の索敵に引っかかりにくいですし。

そして、わたくしの幼馴染でもあるリックという男が索敵の魔法を使えますわ。

つまり待ち伏せの対処は完璧。

敵の戦力が高くても、この人選なら問題ないでしょう?」


 聞いた限りでは、どこにも問題はない。

 だが、未来では確かにエリザベートは死んでいる。


「例えば罠が張られてたりしたらどうする?」


「もちろん対策はしますわ。

先に数人を乗せた馬車を走らせますの。

言い方は悪いですけれど、囮というやつですわ。

罠があるなら、囮がかかってくれますわよ。

囮馬車にも、それなりの実力者を乗せますから、

撤退に専念させれば死者は出ないはずですわ」


 ……これでは改善の余地がない。

 素人意見だが、十分理にかなった合理的な作戦に思える。

 そうなると、やはりエリザベートを軽く殺せる化け物がいるのか?

 そんなのが居たら、会合を止めるしか方法が無くなってしまう。


「……考えたくはないが、その三人より強い敵が襲ってくるとか?」


「そんな相手が居ましたら、お手上げではありませんの?

たとえ話を言い出したらキリが無いですわよ」


 ごもっともな意見だ。

 事情を知らない彼女からしたら、俺は屁理屈を言っている、ただの面倒くさい奴に見えるだろう。

 ……こりゃ今の段階じゃ説得するのは無理だな。


「時間を取らせて悪かった」


「もしかして、わたくしを心配したんですの?」


 ある意味そういうことになるのだろうか?

 まあ、ここで否定しても機嫌を悪くさせるだけだろう。


「そりゃ心配もするさ。 

嫁入り前の女の子にあんまり体を張らせたくない。

……って、ネストと戦わせた俺が言う資格はないな」


 カッコつけようとして失敗した。

 だが、エリザベートにはそこそこウケたらしい。


「あははは! 何、変なこと言ってますの」


「そうだな、ちょっと疲れてるのかもしれない。

早めに寝かせてもらうよ」


 俺は部屋のドアノブに手をかける。

 その時後ろから、小さく声が聞こえた。


「でも少しだけ、……嬉しかったですわ」


 ……頑張ろう。

 そう思いながら、部屋を出る。

 今度こそ死なせないように。

 今度こそ終わらせないように。

 理解されない思いを抱いて、俺は寝床についた。


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