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ふりだし廻りの転生者  作者: チリ—ンウッド
第二章 盤上の裏側
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27マス目 少女の危機


「ふふふっ、よくぞ来てくれました!

この僕、フラウト・ベヨネッタの隠れ家へ!」


 ベヨネッタ、その名には聞き覚えしかない。


「もしかしてお前って……?」


 年齢から考えるに、この子エリザベートの弟か!?

 あ~、確かによく見ると、口元と眉毛がそっくりだ。


「そうだよ! 僕はベヨネッタ家の長男、フラウト・ベヨネッタ!

あのルガニス・ベヨネッタの実の息子だよ!」


「……ルガニスって、誰だそれ?」


 俺の素朴な疑問に、少年は驚愕を表情に浮かばせる。


「ちょ、待って待ってよっ、嘘でしょ!?

お父さんのことを知らないって……なんで!!?」


 なんでと叫ばれても。

 エリザベートの父親の話なんて、由緒正しき騎士ってことしか聞き及んでないんだ。

 この国に来てまだ数日の身に、無知を問い詰めないで欲しい。


「えっと、エリザベートは知ってるんだけどな」


 エリザベートの弟さんは大きくため息をついて、呆れたと言いたげな表情で話しだした。


「いい? おじさん。 

ルガニス・ベヨネッタっていうのは、

このパロット王国で、今一番強い最強の騎士なんだ。

地位だって、王様の右腕と称された王国騎士隊隊長なんだぞ!」


 とどのつまりは懐刀ってやつか。

 立ち位置的には警視総監やら大臣みたいなものだろうか?

 そんな人がいる割には、国の治安は悪いけどな。


「も、もしかして信じてない?

僕がベヨネッタの血を引いてることを、全然信じてないの!?」


 むしろ納得した。

 態度のデカさがエリザベートにそっくりだ。


「いや信じるよ。

あいつにそっくりだからな」


「あいつ?」


「君のお姉さんだよ、エリザベート・ベヨネッタ。 

俺は、そのお姉さんと知り合いなんだ」


 その瞬間、フラウトの顔が青ざめた。

 身体がガクガクと震えだす。


「どうした!?」


「お、おじさん、エリザ姉ちゃんの友達なの!?」


「まぁ、それなりに。

一緒に戦ったり、家に呼ばれたりしたから、顔は通るレベルだと思うぞ。

出会って日は浅いけどな」


 フラウトの顔がますます青ざめる。

 ……もしかしてエリザベートが怖いのか?

 そう思っていると、フラウトが突然謝りだした。


「うわぁぁあああ!!! ごめんなさいぃぃぃいいいいい!!!」


「ええ!? 何だ急に!?」


「もうだめだぁぁぁ!!! 姉ちゃんにばれちゃうううぅうぅうーーー!!

秘密基地作って学校サボってることが、全部ばれちゃうんだ!!!

もうおしまいだぁぁぁぁあああああああぁぁぁぁあああ!!!!!」


 泣き声がうるさくて耳が痛い。

 確かにエリザベートは怒ったら怖そうだが、絶叫するほど泣かなくても……。


「姉ちゃんに言いつけるのは許してください!

お父さんに言いつけるのも許してください!!

テンダーさんに言いつけるのも許してください!!

リックさんに言いつけるのも許してください!!

セルバさんに言いつけるのも許してください!!

えーっと、あと……、あと~~……」


 要求が多い。

 どんだけ怒られたくないんだ。

 そして一つだけ聞きたい。


「別にテンダーだけは怖くないだろ」


「弱み握られて、イタズラの手伝いさせられるもん」


 俺は思わずため息が出てしまった。

 あいつは子供に何をやらせてるんだよ?

 やっぱり風呂場で殴っとくべきだったかもしれない。








 その後フラウトは5分ほど騒ぎ、やっと落ち着いてきた。


「大丈夫だ、絶対言わないから!」


「本当に? 嘘じゃない?」


「ああ、男と男の約束だ!」


「でも大人は嘘ばっかりつくじゃん」


 ぐうの音も出ない。

 この世界に来てから、何十回嘘をついたものか……。


「……じゃあ、もし約束を破ったら、これをやる」


 彼は鞄の中から筆記用具を取り出し、一本のボールペンを手渡した。


「え、なにこれ? ペン?」


「ああ、世界に一本しかない、超珍しいペンだ」


 地球のボールペンだし、嘘はついていない。

 それにこのボールペンは、3000円もした結構いい奴だから、多少の信憑性はあるはずだ。


「預かっててくれ。 

俺が約束を破ったら、持って行って構わない。

俺を信じられるようになったら、返してくれりゃあいい」


「……わかった。 そこまで言うなら信じる」


 色々と話していたが、まだ肝心の本題に触れていない。

 何で俺をこんな場所に呼び出したかを。

 そして何より、シランのことを教えてもらいたい。


「さて、そろそろ説明してもらっていいか?」


「シランのことでしょ?」


「ああ」


「……おじさんに頼みがある」


 そう言うとフラウトは、埃っぽい天井裏の床板に頭をこすりつける。


「シランを助けてるのを、手伝ってほしい!」


 頭を下げているのにも関わらず、ある種の威圧感のようなものが感じられた。

 その姿からは、さっきの子供らしさが微塵も感じられない。


「いじめからか?」


「それ以上のことだよ!」


 ……それ以上のこと?

 というと虐待? 

 でもシランの両親は死んでるって……。

 あれ? でもそういえば……。




(……親は?)


(いないよ、ママも死んじゃった)




 あの時シランは、ママもって口にした……。

 普通パパとママって言わないか?

 それなのに母親のことだけ言ったということは、父親は生きているのか?

 だったらなぜ、シランはあんなボロ宿で暮らしている?


「もしかして、シランの父親が原因か?」


「うん!」


 フラウトは勢いよく顔を上げた。

 その目からは大粒の涙が零れ落ち充血している。

 だが表情は泣いていない。

 俺の顔をしっかり捉え、視線が逸れる気配がまるでない。

 フラウトは一息吸うと、衝撃の言葉を口にする。


「このままじゃ、シランが奴隷になっちゃうんだ!!」


 この瞬間、俺の運命は再び、戦場の渦中へと引きずり込まれてゆくのだった。


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