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短編集

渾沌

作者: 星 茶仁予

以前載せて、間違えてけしてしまったモノ。

ただ、データが消えて書き直したので細部は違う可能性もあり。

渾沌(こんとん、拼音: húndùn)または混沌は、中国神話に登場する怪物の一つ。四凶の一つとされる。その名の通り、混沌カオスを司る。

犬のような姿で長い毛が生えており、爪の無い脚は熊に似ている。目があるが見えず、耳もあるが聞こえない。脚はあるのだが、いつも自分の尻尾を咥えてグルグル回っているだけで前に進むことは無く、空を見ては笑っていたとされる。善人を忌み嫌い、悪人に媚びるという。(ウィキペディア参照)









 我が名はいまだない。

 

産まれいづる時に、誰かに渾沌と呼ばれたような記憶はあるが、それ以降何も聞こえず何も見えぬ。

 

今はただ、空を眺める事と、我が前をチラチラ動くようなもさもさしたものを追いかける事が生きがいである。

 




時折、もさもさしたものを追いかけていると足元で何かを踏んだような感触はあるが、些細なことだ。


チクチクとしたモノが刺さることもある。


そんな時は、空を見上げて笑うのだ。


そうすると世界に満ちるナニかが渦巻いていく。


我はそれを糧とするだけだ。


糧を飲み込むと、痛いことが楽しいことへ変化する。


そうすると楽しいことを潰したくなり、今度は哀しみにひたる。


沈んでいく我が身にいてもたってもいられず、もさもさしたものを求めて喜びが湧いてくる。


そしてまた、空を見て笑うのだ。




笑っていると、不快なモノが現れることもある。


あまりに鬱陶しいそのモノが楽しく、世に満ちるナニかをそっとそのモノに渡す。


喜びに満ち溢れたそのモノは、怒り狂う我が身に祈りを捧げて帰ってゆく。


ふと気づくと、雨粒のような雫が手を濡らす程の哀しみが襲ってきた。


そんな時は空を見上げて笑うのだ。




もさもさしたものを追いかけていると、好意を感じる存在が来ることもある。


その存在には、我が哀しみをぶつけて怒らせるのが我が身の幸福だ。


少なくなっていた世に満ちるモノを、怒っている存在から抜き取る時には歓喜できる。


動かなくなった存在だったモノが、おかしく自然と笑みが浮かんでくる。


そんな時には、もさもさしたものを追いかけるのだ。





我が身が眠りについている時に、快と不快を感ずるソレがいた。


ソレは我が身を哀しみ、反面楽しみ、何者かに怒り、生あることに喜んでいた。


我はソレに気づいていたが、ソレが持っている世に満ちるナニかを与えることも抜き取ることもできなかった。


ソレが何かをすると、痛みと楽しみが身の上に降りかかり、


笑っている我に怒りをもたらす。


ソレが何かをすると、快感と哀しみに翻弄され、


喜びの挽歌を歌いたくなる。



やがてその時間が終わり、周りには世に満ちるモノが溢れてくる。


暖かいナニかに包まれる快と不快とともに、我が身には初めての光が『見える』


棲家の山々の囁きが『聞こえる』


黒い風が我が身を撫でるのを『感じる』


暖かかった光に炙られた我が身を『匂う』


顔で一等大きい穴から唾液を『味わう』



そして、ゆっくりと倒れていく我が身に歓喜する。


この身が倒れることで、世に満ちるモノと混ざり合うことができる。


この身を食することで、他のモノたちも地へと帰ることができる。


この身に接することで、不快なるナニかになることができる。


この身は用いることで、快へと誘うことができる。




さぁ! 最後に喜びの怨嗟をあげよう!


そして我が身の餞に、哀しみの称賛を!




完全に倒れた我が身に慌てて駆け寄ってくる存在を感じながら、我の意識は途絶えた。



お読み下さりありがとうございました。

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