かけら
あ、町がない。
山を越えた先に広がるはずの町並みと、海辺にあるはずの松林が見えなかった。
海が見えた。
「海が、見える。」
とても、綺麗な海だった。
海が見える…。この町を知る人なら、絶望する光景が広がっていた。
どこへ行ったのだ、建物も植物も何も無い。残骸は片付けられた。いない人もいるが、人はいる。でも町がない。
「どこへ、いってしまったんだろうねぇ。」
老人が、さびしそうにつぶやいた。
ふよふよと、海の上に浮かんで大量の物が流れついた。遠く遠く離れたところから来たのだという。遠くの国で、災害が起きて、こちらまで運ばれてくるのだと、この国では伝えられていた。
「これなんだろう?」
見慣れない、異国から流れついた沢山の物は海からの贈り物として、ありがたく拾われていった。
「旅に出よう。」
ある青年が、決意した。
散らばってしまった、大切なものを集める為に、旅に出ることにしたのだ。
「やめておけ、無くなってしまったものは仕方がない。人生こんなものなのだから、あきらめろ。そもそも、海外をまわって見つけられるものか!」
「分からない。でも、俺は行く。」
青年は、なくしてしまったものを探しに旅に出ていった。