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路地裏のお姫様  作者: 黒百合
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序章

「キーンコーンカーンコーン」


「日野さーん!またねー!」

「あ、うん、またねー」


玉璃たまりちゃーん!うちの部活まだ体験入部受付してるからいつでも来ていいんだからねー!」

「あ、はい、考えときます」


 ホームルームが終わってチャイムが鳴ると、クラスのみんなもそれぞれ帰り支度を始めた。

 私も帰り支度を始めると、先に帰るクラスメイト達がなぜかそれぞれ声をかけてくれる。


「みんな何で私に声かけて帰るんだろう?ていうかなぜか上級生の人まで紛れてたし」


 高校に入学してから1週間ほど経って、学校にも少しずつ慣れてきたけど、これにはいまいち慣れない。

 クラスのみんなとは全員普通に話せるし、隣のクラスからもよく人が遊びにやってくる。

 食事はお手伝いさんが作ってくれたものを教室で食べてる。

 お母さんが作ると、なぜかロシアンルーレットみたいなお弁当ができるから、お手伝いの人に相談してお母さんが作る回数を減らす努力をする必要があった。


 そういえば私、色んな人とは話すけど、たわいないおしゃべりとか馬鹿やったりみたいなことしたことないなー。

 小学校の頃は背丈はみんな同じくらいだったけど私に話しかけづらそうにしてたし、中学の頃は身長差が出始めてきてみんなからなぜか頭をナデナデされるし。

 高校に入ったら友達と遊んで青春するんだ!って思ってたけど、現状を冷静に観察してみるとなんか違う?

 クラスみんなとは仲良くできてるけど、私が思ってた友達とも違うような気がするし。・・・もしかして今私って、この人って言えるような友達がいないんじゃあ・・・。

 これ以上考えると目から水のようなものが流れてきそうだ。

 色々考えるのはやめてもう帰ろう・・・。


「玉璃ちゃんと話せちゃった!ほんと小さくてかわいかったな~~」

「先輩そのためにわざわざ1年の教室まで来たんですか?」

「もち!お金持ちのお嬢様って聞いてたから金髪縦ロールな感じかと思ってたけど、実際に見たらちっちゃくて、なでなですりすりしたら気持ちよさそうだった!」

「先輩・・・、変態っぽいからやめてください。それに玉璃ちゃんは小中学校時代からファンクラブみたいなものがあるらしいですから、もし古参の人に見つかったらどうなることやら・・・。」

「え!?ファンクラブなんてあるの!あの子!」

「らしいですよ?でも活動内容は『玉璃ちゃんを愛でよう』みたいな感じらしいですよ?」

「なんか怖!ストーカーじゃあるまいし、普通に友達になったらいいと思うんだけどなー」

「まぁお金持ちのお嬢様であの容姿だから、『近寄り難いけど可愛いからマスコット』、みたいな感じじゃないんですかね」

「ふ~ん。よし!まだこの学校で友達がいないようなら、私が友達第一号になってやろうじゃないの!」

「初めての友達が上級生の先輩って、それ余計気を使いそうなんですけど」


 ~~~~~~~~~~~~


 周囲に家が立ち並ぶ住宅街。・・・ではあるがその中に一軒、普通の家より何倍も大きく、庭も家が何軒も入りそうな屋敷とか館と呼ばれそうな家が建っていた。

 その表札には『日野ひの』という名前が掲げられていた。

 塀の上には一匹の猫がおり、一人の少女が猫じゃらしを持って猫の気を引こうとしていた。

「にゃー、んにゃー」

 そんな少女を猫はちらりとうかがうが、ふいっとそっぽを向いて走り去ってしまう。

「あ!あーあ、行っちゃった・・・」

 少女がとぼとぼと歩き、当たり前といった様子でその家の門を開け中に入っていった。


「ふう・・・。」少女は少し疲れたように溜息をつく。

 少女がその家の玄関に手をかけて声をあげる。

「ただいまぁうぷ!」

「玉璃ー!!おかえり!」

 学校からの帰り、家に帰って玄関を開けると、なぜかおじいちゃんが私を待ち構えていた。


「父さん、玉璃がかわいいのはわかるけど、それじゃあ玉璃が圧死しちゃうから離してあげて」

「お義父さまったら、玉璃がかわいくて仕方ないのよ、あなただって生まれたばかりの玉璃をだいて、「この子は我が家の宝石だ!」って言って玉璃って名づけてたじゃない」

「・・・んん!あの時は少しばかり興奮してしまってただけだよ」

 おじいちゃんのすぐ後ろに、笑顔で立っているお父さんとお母さんもいた。


「それを聞いてる長男の僕としては嫉妬するべき場面なのかな?」

「あら真中まなか、可愛い妹に嫉妬するなんてお兄ちゃんらしくないわよ?」

 玄関での騒ぎを聞いて、家の中から兄の真中も出てきた。


「冗談だよ母さん、僕だって年の離れた可愛い妹に嫉妬するような年齢じゃないってば」

「男系のわが家系で女の子が生まれるのは珍しいからな~。あと父さんもいい加減離してあげてってば、玉璃がだんだんぐったりしてきてるから」

「おおすまん!玉璃!久しぶりの再会なもんでちょっと興奮しすぎたか!」

「うう・・・。おじいちゃん久しぶり、お仕事は終わったの?」

「まあ何とか一区切りつけたがな!だけどまたすぐに行かにゃあならんがな」

「でもお義父さま、今晩のお食事くらいはご一緒できるんでしょ?」

「うむ!今晩は泊まっていって、明日の朝すぐに発てば問題ない!」

「それじゃあおじいちゃん、今日は一緒にいれるんだね」

「おう!そうだぞー玉璃、今日は色んな話を聞かせてやるからなー!」


「そうじゃ玉璃!何か欲しいものはないか?ここのところずっと忙しくて、正月も帰ってこれなんだからな。ちょっと遅いがお年玉のかわりじゃ」

「え、悪いよ!忙しいのは仕方なかったんだし」

「はっはっは!子供が謙遜するもんじゃない!」

 そう言っておじいちゃんはバンバンと頭を軽く(?)叩いて豪快に笑った。

「・・・。おじいちゃん、身長が縮んじゃうからやめてよー」

「お!すまんすまん!だが逆に反発してビヨーンと伸びるかもしれんぞ!」

 軽く反発してみたがおじいちゃんは何でもないように平然と笑って返してきた。

「私だって絶対大きくなってお母さんみたいにグラマーな女性になるんだから!」

 仕返ししたつもりだったが、軽く返されてちょっと頬をふくらませて感情を表してみた。


「ほお!それは楽しみじゃ!父方の影響がでないといいのお!」

「玉璃のおばあちゃん、私のお母さんも60代もとっくに過ぎてるのに外見は20そこそこにしか見えなかったし、玉璃はそっちの血が強く出ちゃってるのかもねー。あれは息子の僕からしても恐怖を感じるレベルだね」

「ぼくも子供の頃に初めて会った時は、ちょっと年上の従兄弟のお姉さんかと思ったくらいだしね」

「うっ!」


 私のおばあちゃんは外見が年齢と全然違うというか、ぱっと見ると20いくかいかないかの外見なのに実年齢60代越えという人だ。・・・そういえば実際の年齢は聞いたことなかったっけ。

 一説には実は妖怪か仙人か、はたまた精霊のたぐいではないかとも言われてるとかなんとか。

 その血を強く継いでると思われる私は、もう16歳になる高校生なのに、外見的にはよく小学生のように見られる。

 ・・・・・でも希望を持つのは悪いことじゃないと思うんだ。


「とりあえず父さん、話しが終わったら食堂に行こう。もう夕食の準備も整ってるから、ご飯が冷めちゃうよ」

「おお!そうじゃな。玉璃~、楽しみにしておくんじゃぞ~」

「ありがとう、おじいちゃん。あ、お金はちゃんと払うからね」

「え?いや孫のプレゼントに孫からお金もらってたら、おじいちゃん困っちゃうんじゃが・・・」


 おじいちゃんに軽く仕返しできたことで、学校で友達がいないかもとちょっと落ち込んでたけど、ちょっと気がまぎれたかも。

 よし!明日は思い切って誰かに声かけてみよう、友達の一歩はまずさりげない会話からだよね。

 気合が入ったことでお父さんお母さんにおじいちゃん、あとお兄ちゃんとも楽しく食事ができた。


「うん、明日もこの調子でがんばろう」


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