ナギサとここどこどこです?その4
これ以上頭を混乱させておくのはマズイと思い、意識をシャットダウンしていたのが数分前のこと。再起動を行ったのがついさっきことで、情報の整理をし始めているところだ。
僕。伊藤渚(19)。AB型。職業は大学生でアルバイトはよくある飲食系のチェーン店でしている。住所、電話番号は個人情報のため内緒。よし、記憶に不備はなさそう。体もさっきベッドから落とされて痛いくらいで大丈夫そうだ。
持ち物。着衣しているスウェット。一緒に空間を超えたベッド。そしてベッドの下の収納に入っている着替え数点。そしてスマホ。もちろん電波は圏外で電池はいつか切れるため役立たず品。
場所。松崎曰く、ここは僕の住んでた世界とは違う世界で松崎(無能神)のいる世界。所謂、異世界。現在地は多分洞窟の窪み。ベッド越しの正面から風が通り、光も届いているため入り口からは比較的近い場所と思われる。
妖精さん。一人称がようせいさん。話し方が間抜け。多分普通におばかさん。妖精だが羽もなく、大きさも手に収まるものではなく、赤ん坊サイズ。寝ている間に何かしてくれるわけでもなくむしろ起こしてくる。イメージと現実は違うのだという社会の真理は、異世界でも通用することを改めて実感させられた。
ちなみにそんな妖精さんは正座している僕の膝の上に座っている。普通に可愛い。なんで僕が正座しているかって?僕は正座していると集中できる、純日本人だからである。
「なぎなぎ、もうむしむししないです?」
妖精さんが振り向いて、涙目で語りかけてくる。僕が精神を安定させるため意識をシャットダウンさせていた間、妖精さんは話しかけていたようで、僕が頭を再起動したときには、妖精さんは無視されてしょんぼりしていた。けど、無視してたのはベッドから落とされたので水に流してもらおう。
それにしてもなぎなぎとは可愛いあだ名を付けられた。現状確認の際に声に出てたのか。まだまだ頭が冷静さを取り戻し切れてないみたいだ。
「ごめんごめん、もう無視しないよ」
ご機嫌を取るために出来る限り優しく声をかける。ほんとです?と妖精の確認に対してもちろんという言葉とともにほっぺをプニプニしながらアピールする。それにしても妖精さんの肌プニプニ過ぎませんか?
「ならなら、あそぶのですです」
真ん丸の目をキラキラ輝かせ立ち上がりそう言った。でも楽しいからって人の膝の上で立つのは禁止です。流石に足が痺れているのですです。
「遊ぶ前に少し質問してもいい?妖精さん」
「なになにです?」
膝の上からぴょんと降りた(脇腹を指で指して落としたのだが)妖精さんがくるくる回る。回ってるだけでなんとも楽しそうな不思議存在。この子の遊び相手を努めるのは少しばかり僕には荷が重い気がするのだが…
それはさておき、
「ーー君が僕を呼び出したの?」
これは起きてからずっと気になっていたことだ。あの無能神である松崎は僕が呼び出されたと言っていた。つまりそれは誰か呼び出した者がいるわけでーー
「そうなのですです。あそんでたらなぎなぎあらわれましたした」
その犯人はその場に鉢合わせた妖精さんが圧倒的に怪しいと思ってたらあっさりその通りだった。しかも遊んでたらなのか、魔王が世界侵略でパニックだから救世主召喚!てわけでも聖なる杯を得るための相棒としてサモン!されたわけでもなく、遊んでたときの事故なのか。なんとも召喚されがいのない…
「なぎなぎ、だいじょうぶですです?」
「なぎなぎ、もう疲れたのですです」
です、です、です、と反響する声。途中からdeathにしか聞こえなかったのは精神が疲弊しきっているからだろう。もうだめ。疲れた。と思ってたそのとき、
「ようせいさんのむらむらでなぎなぎやすむですです?」
妖精さんの村で休ませてくれるのだと提案してきたのである。こんな洞窟にいても仕方ないから妖精さんの案内のもと、その提案に乗ることにしたのである。




