ナギサとここどこどこです?その2
夢を見ている。そう感じながら見る夢を明晰夢と言うのだっけ?などと不必要なことを思う。僕は飛行機の席に座りながら空に飛び立つのを待っていた。
夢だからだろうが、周りに人はいない。貸切のようで気分が良い反面、しんみりともの寂しい。人の多いはずの場所に人が少ないと余計寂しく感じる。人恋しい。
「HAHAHAHA、ハロー。少年、調子はどうだーーい」
前言撤回します。もの寂しさを我慢するので急に隣に現れたこいつを消してください僕の潜在意識。無視するなよ渚くぅーーんなどと、キラリと光る歯を見せながら日に焼けた肌とミスマッチのスーツ姿で40ぐらいの男が構ってくる。とりあえずこいつを松崎と名付けることを決めた。
それにしても、もの寂しいなんて考えた途端、横にこんな異常が現れるなんて、僕はマゾなのかもしれない。認めはしないけど。
ひたすら声をかけてくる松崎が、ボディタッチまで図ってきたから仕方なしに、何ですかと返してみた、返答してしまった。瞬間、静けさが生まれ、そして嵐のようにおじさんーーが
「やああああっと応えてくれたね、渚くん!!おじさん寂しかったんだよ?上手く君の意識世界に入れてないのかと思ったよ!!でも私が失敗するわけなかったんだよ!!君に問題があったんだね!まったくちゃんと返事はすること?いいかい?これは人と関わる上で一番大事だよ?」
夢が醒めることをひたすら願いながらこのハイテンションおじさんの言葉に適当に相槌をうつ。新手の悪夢だ…僕はこんなおじさんを夢に出すぐらい寂しさを募らせてたのか。これからは絶対募らせないから消してください、お願いします。
「ところで松ざ…おじさんは誰ですか?」
銃で乱射するように無差別に様々なことを語りかけてくる松崎に問いをぶつけることで松崎ラッシュを止ます。夢の中のおじさんにこんなに疲れさせられる羽目になるなんて、驚きだ。
「んん?ようやく聞いてくれたね??それを待ってたよ渚少年!そうだろ?私の正体に興味があるだろ?そうだろ??」
うっとうしさの暴力だ。待っていたのなら早く話してもらいたい。「早く話せ焦げスーツ」心の声が遂に漏れてしまったが、笑顔で乗り切ろう。松崎はこちらを見て、豆鉄砲を喰らった鳩の物真似をしていた。
「う、おほん。そうだね、確かに私もここにいられる時間は短いから早く話すね。だからそんな目で見つめないでくれないかね?怖がりなんだおじさん」
睨むという言語外言語で催促すると、松崎は今から話すからスマーイルスマーイルなどと曰った後に、こほんとわざとらしく咳払いをしてこう続けた。
「ーー私は君の世界と異なる世界の神だよ。君が私の世界にやってくるようだから挨拶に来たんだ」
気付けば彼のお調子者の若者のような雰囲気は権威者の厳かなそれに変わっていた。言っていることには疑問しかないが、何故か信じてしまう。
「それともう一つ、君にプレゼントをあげよう。久方ぶりの異世界の存在に会えた記念だ。受け取ってくれ少年」
いつの間にか正面に立っていた松崎(神)は僕の胸に掌を当てる。少しして、松崎はスッと手を離す。僕の身体には何の変化もない。こいつは何をしたんだろうか。そんなことよりもだ。
「えっと、僕があなたの世界に行くってどういうことですか」
松崎の言葉で最も気になったーー放って置けない言葉についての意味を問う。
「ん?言葉のままさ。渚くんは君の元いた世界から私のいる世界へと呼び出されているんだよ」
呼び出されている?誰がそんな迷惑なことを?そんな疑問を問おうとしたとき、松崎があ、と声を漏らした。途端、松崎が発光した。え、なにこれ。




