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私はそのまま立ち止まっていたが、どうしようもないので戸をバタンと閉めた。
すると急に外がぐるぐるいって破裂音がしたので出てみると、一面草原になっていた。
「ふぇ?」私は目を疑った。
あのう、ここマンションの二階なんですけど。
うーん、お婆さんのせいかな。
あのヤロー、いい感じのところに連れ込んだな。
こんな夢。
私は頬をパチンと鳴らした。
痛い。
「夢だって痛みくらい感じるよ、なぁ」
私はとりあえず外に出た。
爽やかな風が通る。
「…はは」
私は少し笑った。
ざわざわと、なんだか向こうの草むらがいっている。
む?
羊が飛び出してきた。
私が戸惑っていると突進してきたので足を突っ張って耐えると羊は後ろ向きにコロンと倒れた。
「こいつ、痛いじゃないか」
私が説教すると、それはそれはシュンとして正座してしまった。
私はいよいよ勢いづいて話した。
「あのな、人を見たらまず突進してみようかという思考をやめようよ、な?お前らが怖いと思うんなら、逃げればいいし、仮に俺が危ないやつだったら戦うのも手だけどよ、そういうのを丸無視して攻撃すんのは、俺は良くないと思うぜ。だからお前は、この経験を生かしてだな、人から嫌われないような立派な、模範になる動物に…」
ペラペラ話していると羊は「すみませんでした。私が大馬鹿ものでした。本当に悪いことをしました。あなたはいい人ですね。それでは」と言って全速力で逃げ出した。
「あ、てめ」私は走って追いかけて行き、たちまち捕まえると「はあはあ、なんだあ、おめえ、ふー、いまあ、はあ、はなしたあ、ばっかじゃんよお、はあ、ひゅー、
ばかにい、するんじゃ、ああ、ねえぞお」と胸ぐらをつかんで怒鳴りました。
羊はもうぶるぶると、まるで羊のように震えて言いました。
「待ってください。あなたは私が相手では弱すぎると思いませんか。もっと強い人を知っていますよ」
「なんだあ、おめえ息切れてねえのか」
「どうでもいいじゃありませんか、そんなこと」
「どうでもよくない」
「どうでもいい!」
「どうでもよくない!」
「どうでもいい!!私がちょっとあなたよりスタミナが多くて、私がわざとあなたに捕まってあげたなんてど、おーでもいいことです!!!」
「ああ、ほんっとどーでもいい!!」
「それであなたはどこから来たのですか?」急に質問が来てまごついてしまった。
「え?えっと、その、マンション」
「マンション?あの、天才たちが集うところ、マンションですか?!」
「なんの話や」
「マンションといえば、あれでしょ。世界中の精鋭達が集まってスーパーミーティングする場所、ですよね?わーすごい。貴方そこの出身なんですか。どうりで頭が良く切れると思った」
「なんか勘違いしてると、思う」
「あなたの力になれることならなんだってしますよ」
「あ、ああそお?だったらいろんなこと教えてもらいたいんだけど」
「喜んでお教えしますよ!」
「俺、これから何すればいいと思う?」
「うーんとですねえ、私と一緒にいれば、いいと思いますよ」
「あ、そう?じゃ、またいつかな」
私は役立たずを放ってずんずん奥へ進んでいった。