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朝起きてみると、陽はかげっていて、薄暗いものが立ち込めていた。
私は、外に散歩に出かけた。
これは日課だ。
日課というものは、毎日続けないと、やる気がすぐに萎えてしまうものなので、一日も欠かさずに行うことが大切だ。
私は団地を一周した後帰った。
玄関の郵便ポストを見ると手紙が一通入っていた。
「なんだ、これ」
紙はぐしゃぐしゃに丸められていて、切手もなかった。
私が紙のしわを伸ばすとぱりり、と乾いた音がした。
そこには「お待ちしています さくら」とある。
「は?」
私は意味がわからずその紙を見つめる。
その字は墨で殴り書きしたようになっていて、かすれた大小様々な踊り子がいるみたいだ。
どうせ子供のいたずらだろう、私はその下手くその紙を家のゴミ箱へ捨てた。
それからしばらく経つと、玄関がコツコツという。
誰かがノックしているのだ。
私は靴からかかとを出す格好になって玄関から顔を出す。
そこにはお婆さんが箱を持って立っている。
「あのう、何の用っすか」
お婆さんは何も言わない。
その箱からは細く白い煙が漏れ出している。
「あのう」
私が少し声を強めた時、お婆さんはふっと消えてしまった。
箱も一瞬でなくなった。
私は口を、すぼめた「う」の形のまま固まった。
何が起きたんだ?
私は怖くなって家に引っ込んだ。