我が滄浪中学吹奏楽部!
俺の名前は那智雄馬。(なちゆうま)
滄浪中学校1年2組に所属するどこにでもいる普通の男子中学生である。
俺は学校が嫌いだ。俺は身長の割にとても痩せているいわゆるガリガリな体型でそのせいでクラスのいじられる中心になっている。クラスの大半の奴が俺を見下したような態度ばかりとるので毎日のストレスが半端ない。なので常に影に徹し自分を出さないようにしている日々を過ごしている。
こんな肩身狭い窮屈な学校生活だが少し
だけ心休まる時間がある。
それは部活の時間である。
我が滄浪中学校吹奏楽部は35人ほどの部員がいる。
ほとんどのやつは小学校から続けてた奴で経験者だが何人か中学から始めた奴もいる。
部活部員はクラスメイトと違って皆話しやすい連中ばかりだ。
そして今日も放課後となり疲れた心を振り払うように早足で音楽室へと足を運ぶ。
「おつかれー」
?「あ、ゆーくんおつかれー」
?「今日は結構早かったな」
今挨拶してきた2人は同じパートの桜智花と上条清瀧である。
桜智花は身長150後半位のぱっつんと笑顔の似合う女の子。
上条清瀧は身長170前半と俺と同じぐらいだか体つきは文化部に似合わないガチムチ系男子である。
2人とも小学校からの仲で学校以外でもよく遊んでいる。
俺は2人をそのまま名前で呼ぶが智花に限ってはゆーくん(命名は清瀧)と呼んでくる。
ほんとこっぱづかしい‥
智花「その顔を見るに今日もお疲れだね」
「ああ‥もう毎日散々だよ」
2人には俺の愚痴や悩みをよくこぼしている。
そのおかげで俺はいじられすぎて溜まったストレスを
爆発せずにいられるからほんとありがたい。
智花「ゆーくんは気分がそのまま音に出るから心配だよ」
「ごめん‥なくすようには努力してるけど」
清瀧「爆発する前にちゃんとこぼしてくれよ。じゃないと雰囲気がこっちまでうつっちゃうから」
「ほんと面目ないです」
智花「私も聞いてほしい事があるの!今日なんかね‥」
こんな感じで雑談が始まるのがいつもの流れのようになってきている。
今日は早めに来れたからまだ部員もまばらで楽器の準備や雑談をしている。
俺も周りに合わせて自分の楽器を準備する。
俺の楽器はテナーサクソフォン。楽器自体が金属でできてるので金管楽器と間違われがちだが木管楽器に部類される。
S字のような曲線にボタンがいくつも付いている見た目がかなりかっこいい楽器だ。
見た目で楽器を選びがちな新入生は3人に1人の割合でサクソフォン通称サックスを選ぶほど人気なのだが人気なのは見た目だけではない。
なにせサクソフォンはどのパートよりもソロ(1人で演奏)する所が多い。目立ちたい、自分を表現したいという人にはうってつけの楽器だ。
俺は小学校まではテナーより一回り小さいアルトサックスを担当していたが中学からは人数の関係上テナーサックスを担当することになった。
アルト一筋だった俺は初めの方こそ苦戦していたが昼休み1人音楽室に篭り黙々と基礎練習ばかりしていたので1ヶ月ほどでようやく納得できる音が出せるようになった。
ちなみに智花はアルトサックスで清瀧はテナーよりさらに一回り大きいバリトンサックスを担当している。
いつものようにマウスピースにリードをつけてネックにはめ込む。一回り作業が終わった所で周りを見渡す。まばらだった部員もだいぶ集まってきてそろそろ始まるかって時に早足で奴は音楽室に入ってきた。
?「ギリギリセーフ。」
「いやアウトだから」
「遅刻だアホ!」
?「いいじゃん!まだ始まってないんだし〜」
「でたー??の言い訳」
「ホント言い訳だけは一人前なんだから」
?「うるせー!だってあいつらなかなか解放してくれなかったんだよ」
「??はそればっかり‥寺山にいいつけてちゃおー」
「次から絶対早めにくるからそれだけは勘弁して」
今周りからいじられてる彼の名は来田英也。トランペットを担当している。
俺より一回りほど小さいがとても濃い顔つきであり俺は奴のことを組長と呼ばせてもらっている。
顔つきはまじでや○ざっぽい。
時間こそ守らないいい加減な奴だが才能と努力だけは誰よりもあると思う。
英也は小学3年生から始めているが小学5年生の頃にはソロコンテストで九州大会へ出場して先輩を押しのけて結果2位という快挙を達成している。
英也は小学校の時部長を経験しており先生不在の時に指揮者を代わりに請け負っていた。
パート内で誰よりも音が伸びていて音楽室全体に響かせてくれる。
小学生なのにその才能を買われプロの楽団と演奏したこともしばしば。
小学5.6年の頃はそんな異端児が部を引っ張ってくれた甲斐もあって2年連続九州大会に出場していた。
惜しくも全国大会には行けなかったがかなりの好成績を残すことができた。
英也の問題というか弱点をしいて言えばバカなのでよく部活中に遊んで周りから叱られてることぐらいだろうか。
問題児もようやく落ち着き最後の1人が現れた。
この部の顧問の寺山だ。この人はちょっと口うるさく小言ばっかで部員から嫌われてるが別に嫌な先生では
ない。部のことを凄く思っている真面目な先生だ。
寺原「こんにちはー」
み「こんにちは!」
寺原「全員いますね。では今日の予定を英也君お願い」
英也「はい。今から1時間全体の基礎練習。それが終わった後6時までパート練、その後全体合奏です。」
寺山「わかりました。今は2.3年が不在ですが気をぬかないように。2年後はこのメンバーが後輩を引っ張っていくことになるのでその自覚を持って練習すること。では基礎練を始めましょう。」
2.3年は今大事なテスト期間なので部活は禁止されている。今年の1年は15人なので今日はそのメンツで練習することになる。因みに2年が12人、3年がわずか8人しかいない。
先生が巨大メトロノームの蓋を開けていつものようにテンポ80に設定する。1秒テンポ60なのでそれより少し早いテンポになる。
その間に各パートがチューナーという音程合わせの機械を使い音程を合わせる。この作業はとても重要で同じ音でも調節の仕方により多少のズレがあるためそれを機械を見て調節していく。これを怠たり合奏なんかすると不協和音が発生してしまい聞くに堪えない音が生まれてしまう。
全員がチューニングを終えたあとまずはじめにするのがロングトーン。うちのやり方はテンポに合わせて8拍のばして4拍休む。音を8拍のばすだけの単純な練習だが音の入りはじめや終わりの切り方、のばしてる間音の揺れがないようにするなど気をつける事は多い。
その次にタンギング。舌を使って空気の流れを制し音に区切りをつける練習。初心者は音を区切るとき、不自然な切り方をするためそれを改善する重要な練習である。
これらの他にもハーモニーやコラールといった総合的な練習をみっちりする。
一通り基礎練が終わり次にパート練習通称パー練にうつる。その名の通りパートごとに分かれて練習するのだが場合によっては他のパートと合同で練習したり木管と金管に分かれて練習したり色んな形がある。
「今日も被服室でしよっか」
智花「了解ー」
いつものように被服室まで譜面台や楽器やらを持って移動する。
被服室は音楽室と同じ校舎の1階にあるため移動にはそこまで時間はかからない。
因みに音楽室は2階の一番端にある。
被服室に着いた俺たちはまず換気をするために窓を開けた。窓の外にはグラウンドを走り回ってるサッカー部が目に映る。サッカー部の奴とは文化部と運動部という違いなのかあまり親しくはない。
清瀧「こんなクソ暑い中良くあんなに動けるよね。」
智花「だねー。見てるこっちが厚苦しいよ」
今は7月初め。もう直ぐ始まる夏休みに皆浮ついた気持ちになっている中俺たち吹奏楽部は夏の県コンクールの為の練習地獄が始まることに対し別の意味で落ち着かないでいた。
智花「もうすぐ夏休みという青春イベントがはじまるよ!」
「どこが青春イベントなもんか!宿題や練習に追われる忙しい日々の始まりだよ。そんなことより川いきてー」
清瀧「夏休みのどっかで皆を誘っていこうか! 俺実はバーベキュー奉行なんだよね〜。だからいっぱい焼いてあげるよ?」
「お、いーねー!あと川と言ったらスイカ割り!あれ一度もやった事ないんだよ。」
智花「わたしもいくいく!すっごい楽しそう!
ってかスイカ割りって海でのイベントじゃない?」
「細かい事は気にしない気にしない!じゃあぼちぼち計画も立てていこっか」
「ってか智花の水着買いにいこうや!スク水とかで来られても困るし」
智花「いやいやスク水以外にもあるし!去年のまだ着れるもん!」
「ほんとか〜だって智花去年よりおっぱいでかくなってるじゃん」
智花「な‥どこ見てんのよばか!わいせつ罪で訴えるわよ!」
「じょ、冗談だよ‥」
智花「もう水着の件はおしまい!もう練習するよ!」
俺・清瀧「うぃーす」
そして練習を始めようと楽器を構えた時、後ろで扉側開いた音が聞こえ振り向くとそこにはいるはずがない人が怖い顔してこっちを睨んでいた。
3年の先輩の神田未知瑠先輩だ。