第8羽 特別な存在
私は鳥だ。鳥ながらにこう思った。この二人争う必要がないんじゃないのかと。しかし現実は田中がピンチだ。私は風見に向かって飛びかかった。風見は驚いて銃を発射した。痛い。どうやら撃たれたようだ。田中が慌てて駆け寄ってくる。
「おい、死ぬな!あの子が悲しむだろ!」
風見が再度田中に向けて発砲しようとした時、別の方から銃声が聞こえた。
「どうして・・」
風見はその場に倒れた。
後ろからあの医者がやってきた。
「すまん、GPSは外したが君のポケットに入れたままだったな。」と田中の肩を叩く。
どうやら外したGPSをそのまま田中の上着ポケットに忍び込ませていたようだ。
田中が医者の銃を見ながら質問する。
「・・・先生は信用しても大丈夫ですか?」
医者が私の方を見ながら。
「あぁ・・・、しかしこのままでは危ない。早急に治療室へ連れていこう。」
そういうと私を抱えた医者は田中と一緒にこの現場を脱出した。
何のためにここにきたんだ・・・。私は気を失った。
――しばらくして
私は目が覚めた。またあの時と同じ鳥かごか。ゆいはいるか?いや、いないようだ。部屋の外で何やら話し声が聞こえてくる。どうやらゆいの母親が事故で亡くなったと報道があったようだ。本当に独りぼっちになってしまうな。
私がもっとしっかりしないと。
そうこうしているうちにゆいと田中が入ってきた。
「お、元気そうだな。」
田中からしゃべりかけてきた。
「あのワクチンの件だけど、先生が実は既に開発に着手していたらしい。あの先生何もんなんだろうな・・・。1年内には結果が出るってさ。だからお前はゆいちゃんのナイト役が続行できるぞ。」
「!!クルッポ」私は歓喜のあまり思わず鳴いてしまった。
私には嬉しい報告だったが、ゆいはそのことを知らない。
それどころか、悲しそうなゆい。彼女を見ているとこちらもつらい。これは田中に後から聞いた話だが彼女の母親は風見恭子、つまりあの時医者に撃たれた女性だったのだ。だから医者は顔を出しづらいのか田中が代わりに世話を焼いている。
私は改めてゆいを守る決意をした。